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第15話 新体制

元盗賊集団、通称ミライ組がデーン村に入り、村人達に挨拶する。

体格が良く、強面こわもての男達が100名近く集まっているわけだから、村人達にとっては脅威以外の何者でもないであろう。


でも、仲良くしていってもらいたいものである。

はじめが肝心だ。


お近づきのしるしと、協力のお礼として、手持ちの食料や水、酒などを提供した。

これには村人も喜び、一転歓迎ムードに変わったのであった。


その後、仮設住居区画で、村人を招いた宴会を行い、飲んで食べてと、楽しい時間を過ごした。


上司などに強制されるものでなければ、飲みニケーションも役に立つのである。

見た目が怖いミライ組も、話せば良い奴ばかりなのである。

ヘビメタやっているバンドマンが見た目は怖いが、話してみるの良い人だったというのと同じことである。

村人とも打ち解けたようで、はじめの印象として、協力関係を築くことができたのだった。


宴会の最中に、村長のアロイス、息子のクルト、村の若者代表格のイェルクと、俺、マティアス(赤竜バハムート)、グスタフ(飛竜ワイバーン)の6人で今後のことについて話をしていた。


「アロイス村長、一応仮設の住居を準備したが、このままでは冬は越せない。この冬までに、衣食住をなんとかするつもりだ」

「鍛冶担当、警護担当、建設担当、農業担当の4部門に分け活動させる。グスタフ、人選は決まったか?」

と、それぞれが農機具や大工道具を作る担当と、狩猟による食料確保および周辺の警護担当、住居等の建設担当、農地を開墾し、食料や衣類などを生産する担当だと説明した。


「はい、ミライ様。まず鍛冶担当ですが、元鍛冶職人のドワーフがおります。名前をキエロと言います。この者を部隊長とし、10名程度の構成で考えております」

「次に建設担当ですが、こちらも元大工職人の者がおります。名前をバジルと申します。この者を部隊長とし、30名程度の構成で考えております」

「警備担当は、私が務めさせていただきたいと考えております。精鋭部隊を揃え、30名程度の構成で考えております」

「最後に農業担当ですが、ミライ様からご指示ありましたとおり、クルト様とイェルク様にお願いしようと考えております。クルト様には生産性向上に関する研究、開発を、イェルク様には実作業を担当していただきたく考えております。一応、クルト様を部隊長、イェルク様を副部隊長ということでいかがでしょうか?こちらには残りの30名での構成を考えております」

「他にも村の女性陣には、糸や布の生産、食事の準備などをお願いしたく、こちらは村長の奥様のフローラ様を中心にお願いしたいと考えております。こちらは経験のある女性陣の方が適任かと思い、農業担当部隊とは分けました」

とグスタフが説明する。

さすがマティアス(赤竜バハムート)の下で苦労しながら支えてきただけある。できる男だった。


「もちろん、ただで協力してくれなんて、ムシのいいことを言うつもりはない」

俺が補足する。


「基本的に食事の材料は、現物支給で俺たちが用意する。また村の警備も無償で提供する。以前のように小鬼族ゴブリンなどの魔物に怯えることもない」

「今まであった畑は、デーン村のもの。新しく開墾した畑は俺たちのものということになるが、この村人の食料は、新しく開墾した畑から提供される。つまり、収穫量が増えれば、それだけ食生活が豊かになるという寸法だ」

「村長は、今までどおりアロイス村長にお願いする。俺とマティアスは、自由に動けるポジションにいて、適当に口を出させてもらうから、よろしくな」


アロイス村長と、クルト、イェルクは、了承してくれた。というか、むしろノリノリであった。

今までの毎日を過ごしていくので精一杯な、閉塞的な生活から抜け出せるであろう期待感。これが彼らをワクワクさせていた。


その後、アロイス村長は奥さんのフローラに、了承を取り付け、戻ってきた。


「よし、みんな聞いてくれ!」


俺は、立ち上がって、皆にこれからのことについて、話をした。


「まずは、デーン村の皆さん、俺たちを受け入れてくれてありがとう。皆を代表してお礼を言わせていただきたい」

「この記念すべき日が、皆に取って良い選択だったと思ってもらえるようにしたいと思う」


「まずは、衣食住を整える。その為の4つの部隊を作ることにした」


「1つ目は鍛冶担当部隊。農機具や大工道具の作成、武器の手入れなどをおこなう。部隊長にドワーフで元鍛冶職人のキエロを任命する」

キエロが、「俺?」という表情で立つ。そして、重要な仕事を任された責任を噛みしめるように凛々しい表情に変わった。


「2つ目は建設担当部隊。材料を集め、加工し、住居などの建設をおこなう。冬までにきちんとした住居を用意して欲しい。部隊長に元大工職人のバジルを任命する」

バジルが立つ。同じように驚いていたが、やる気に満ち溢れた表情に変わる。


「3つ目は警備担当部隊。周囲の魔物や盗賊などから村を警備し、かつ狩猟を行って当面の食料事情支えてもらう。部隊長にグスタフを任命する」

こちらは、事前に知っているので、というか決めた本人なので、余裕である。立って軽く挨拶する。


「4つ目は農業担当部隊。農地を開墾し、農作物の生産を行う。生きていく為に必要な食を支える、もっとも重要な仕事だ。また合わせて生産性を向上させるための研究開発を行ってもらう。この部隊長にクルト、副部隊長にイェルクを任命する」

クルト、イェルクが立つ。

村人から「おーっ」という驚きの声と、拍手が起こる。


「最後に、部隊ではないが、糸や布の生産、食事の準備などを、村長の奥様のフローラさんを中心に村の女性陣にお願いする」

フローラ始め、女性陣が立つ。ミライ組から盛大な拍手が起こる。


「それぞれの部隊の構成は、希望を聞いた上で、過去の経験などを元に、こちらで決定する。あとで、グスタフが希望を取るので、指示に従ってくれ」

「村長は今までどおりアロイスだ。困ったことがあれば相談してほしい」

「これからよろしく頼む。俺からは以上だ」


すると、マティアス(赤竜バハムート)が立つ。

この中で一番大きな男で、声も大きく、一際目立つ。

「俺たちは今まで好き勝手に暴れて、色々な国を流れてきたが、歓迎されることはおろか、じっくり腰を落ち着ける場所なんて用意されることはなかった。この場所を用意してくれた兄弟ミライに改めて感謝するとともに、このデーン村の皆にもお礼を言いたい。このマティアス、全力を尽くそう」

と発した。


(赤竜もたまには良いことを言う‥)

イグニが苦笑している。本性もいままでの悪業も知っているだけに、感心半分、呆れ半分なのだろう。


イグニの感想はともあれ、この演説は空気を加速させた。

「ウォーッ」歓声が上がる。

村人達も、歓喜に酔いしれた。


この日を機に、デーン村は急激な発展を遂げ、ルクセレ王国、キルシュ公国、カールスタッド王国の南山脈プロバンシー三国の中心都市となっていくのだが、今はまだ誰も想像すらできるはずもないのであった。

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