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第13話 撤収と受入れ準備

しばらくの間、思案して、ホルガー達を呼んだ。

事前にマティアス(赤竜バハムート)とは打合せ済みである。


呼ばれてきたホルガー達は、未だ状況が掴めずに、盗賊達に囲まれてオロオロとしている。

テントの外で、ホルガー達と見張り以外の盗賊達を全員集めた。


「おっほん」

と、わざとらしく咳払いしてから話し始める。


「スマン。コイツらは俺の昔の仲間達なんだ」

「今は何をどう間違ったのか、野盗なんてやっているが、昔はある国の傭兵をやっていたもの達だ」

出まかせである。が、時として突拍子も無い真実よりも、彼らの常識で現実に起こり得そうな嘘を提示してあげたほうが、物事が収束することもあるということだ。


驚いてはいるが、納得したようだ。

盗賊達はニヤニヤしている。皆、察しているようだ。

話を続ける。


「で、今をもってコイツらには野盗は辞めさせるので、盗賊退治は完了したことにする」

「証拠として、ハンス達の銀板シルバータグと、いくつかの奪った宝を持って帰る。さらに今後、この辺りで盗賊騒ぎも収まれば、誰も疑うものはいないだろう」


「もうすぐ夜になるので、ホルガー達はここで一晩を過ごし、証拠品を持って、ギルドに戻る。そして報酬を受け取り、この仕事はおしまいだ」

「結構な額の報酬があるから、しばらくはゆっくりできるだろう。その代わり、このことは内緒に頼む」


4人はコクコクとうなづく。


「盗賊の数は30人位だったとしておこう。自分達が目立ちたくなければ、この間みたいに、ミライが頑張ってくれたと言っておけば、疑われることもないだろう」

「ギルドに戻るときに合流する。夕方にギルドの中で会おう。飯でも食って待っていてくれ」


こちらは良い。ホルガー達の胸の内にしまっておいてくれれば問題ない。


(さて、問題のコイツらの方だが‥)


盗賊達を見る。


「オマエらは、マティアスと一緒に俺の部下になってもらう」

「このまま冒険者を撃退し続けても、いずれ王国騎士団が動くだろう。そのときはジリ貧だ。そのうち暴れる場所も用意してやるから、従って欲しい」

「異論のある奴はいるか?嫌なら少しばかりの路銀を渡すから、抜けてもらって構わない」

そう言って、周りを見渡す。


誰も手を挙げるものはいない。周りを見渡して、他の者の同行を気にする者もいない。


「我らはマティアス様にお仕えする身ではございますが、未だミライ様にもお仕えしております身に変わりありません」

「マティアス様がミライ様の配下に加わったということは、我ら兵隊として、ミライ様のいかなる命令にも従う所存です」

「不詳、このグスタフ以下97名の命、お納めください」

盗賊団を代表して、飛龍ワイバーンのグスタフが臣下の礼を取った。


「お、おぅ。よろしく頼む‥」


思いもよらぬ反応に、動揺が隠せない。


(あれ、こいつら盗賊だよなぁ。ただの野盗なんだよなぁ)

(もしかして、本当に傭兵とか、もしかしたら騎士だった奴とか混じってるのか?)


その様子を、ホルガー達が呆気に取られた様子で眺めている。彼らの中で俺の存在はどうなっているのだろうか。少し覗いてみたい気もする。


「さて、グスタフ。まず、手持ちの宝の一部を証拠としてホルガー達に渡し、残りは皆で分けよ」「次に、この人数を5人程度のグループに分け、様々なルートで、王都の西にあるデーン村に向かうのだ。村の近くの森の中で1週間後に合流しよう。目立たぬように。良いな?」

俺の指示に、全員が撤収準備に入った。


準備はすぐに済み、夜の闇に紛れて、元盗賊達は移動を開始した。

朝日が上がる頃には、全員いなくなっていた。


ホルガー達には、打合せどおり、夕方にギルドで合流することを伝えて、俺もデーン村に移動を開始した。

認識阻害の魔法をかけた後、高速飛行で飛んでいき、30分もしないうちに、デーン村に到着した。


俺は村長の元を訪ねた。

「よぉ、アロイス村長」

右手を挙げる。


「はっ、ミライ様。どうなされましたか?王都に戻られたのでは?」

「戻ったよ。で、ちょっとトラブルに巻き込まれて。助けて欲しいんだけど‥」


「なんでしょうか?お役に立てることであれば良いのですが‥」

何を頼まれるのかと、ビクビクしている様子だ。


「イヤね、チョット100人近く、俺の部下達を一緒に住ませて欲しいんだが‥」

大したことないことのように、スマイルで誤魔化す。


「100人ですと?」

「いやいや、わかってるよ。住む家も無いだろうし、食べる物もない。それはわかっている」

「で、食料は自分達で調達させるし、家も自分達で用意させる。当面は野営で生活させる」

「その場所を提供して欲しい」


「‥」


「住む場所が確保できれば、村の警備や、森に入っての狩猟の手伝い。あとは農業の人手としても使ってやってくれ」

「みな傭兵上がりで腕は立つ。村の発展に役に立つはずだ」


「ミライ様がおっしゃるのであれば、準備させますが‥。この土地はヒルシュフェルト伯爵の領地。私の一存ではどうにも」


「大丈夫だ。村に流れてきたものが住み着いたと言っておけば良い。税収が増えれば文句ないはずだ」

「何かあれば、リーダーのグスタフという者に相談してくれ。俺にも連絡が入るようにしておくし、悪いようにはしないから」


「わかりました。住む場所のことは何とかしましょう」と了承してくれた。


「ところで、クルトとイェルクはいるか?」

と尋ねると、奥の畑にいるとのこと。

言われた場所に行ってみると、二人の姿があった。


「これはミライ様。どうされたのですか?」

「ああ、ちょっとトラブルがあってな。村長にお願いがあって来たんだよ。ところで、どうだ?天気、温度の記録と、三圃式農法の実験準備は進んでいるか?」


「はい、順調でごさいます。まだあれから数日しかたっておりませんので、さほど変化は無いように見えますが、畑の一部をこのように三分割し、一つにクローバーの種子を蒔きました。また、もう一つは夏穀用のえん麦を育てる畑を耕しているところでごさいます」

「ほう、いい感じに進んでいるようだな。引き続き頑張ってくれ」

二人とも褒められて嬉しそうだ。


「ところで、先ほど村長にお願いした件だが、俺の部下の傭兵上がりの男達が、97人この村にお世話になる。警備や狩猟、開拓も手伝わせるので、上手く使ってやってくれ」

「リーダーのグスタフという奴がいるので、そいつと相談しながら、仲良くやって欲しい」

「はぁ‥はい、わかりました」

かなり強引にお願いを押し付け、よろしく頼むと、村を後にした。


さて、王都に戻り、ギルドの依頼の方を完了させよう。

俺は再び高速飛行で、王都に向けて飛び立ったのであった。

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