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第1話 異世界転生?

救急車のサイレンの音。

赤い回転灯に映し出された車内が見える。

簡易ベッドに横たわっているのは、俺なのか‥?


手足の感覚がない。

頭もボーッとして、意識が朦朧としていく。


(あー、なんかヤバイ感じ。俺、このまま死ぬのか?

俺が死んだら、嫁と子供は苦労するよな。住宅ローンは完済扱いになるし、保険金も降りるだろうけど、何とかやっていけるだろうか。。。

ゴメンなぁ。でも、もうダメっぽい。)


他人事のように考えながら、意識が薄れていくのを感じる。。。

そして、そのまま深い深い眠りついていった。。。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


どれほどの時間が経ったのだろうか。。。

強烈な光と轟音が鳴り響き、雷が直撃したかののような衝撃に意識が引き戻された。

目は眩み、耳も聞こえず、体を動かすこともできなかったが、しばらくすると、ボンヤリと視覚が戻ってきたが、見えてきた光景に、理解が追いつかない。。。


暗闇の中で赤外線スコープでみるような灰色の視界。

小学校の体育館ほどの広さの空間が広がっていた。

その壁は岩肌がむき出しになっており、長い年月をかけてできた自然の洞窟ように見えた。


壁の付近には、鈍く光るコインのようなものが散らばっている。他にも宝飾された箱や、剣や鎧、そして無数の骨が見えた。


そして、足元には、黒焦げになり、見るも無残な状態になっている人間の死体(で間違い無いだろう)が6体転がっていた。


(どこだ、ここは? 今、どういう状況だ?)


若干の混乱を覚えながらも、他に手がかりとなる情報を得るべく、首を起こしたとき、更なる違和感を感じた。


視界が高すぎるのだ。

首を起こした途端、地面付近にあった視界が、二階建てのベランダから見下ろしているような高さまで移動した。


それと同時に、身体中に激痛が走る。。。


ゆっくりと痛みを感じた方を向くと、ワニのそれのような、硬そうな鱗に覆われた大きな腕が見え、さらに剣が突き刺さっているのがわかった。


その先には、巨大な鉤爪のついた手。

後ろを振り返ると長さ4-5mはあるかという大きな尾が生えている。


身体中、あちらこちらに深い切り傷があり、血が流れている。動くたび激痛が襲った。


深呼吸しながら、ゆっくりと首を下ろし、地面に横たわる。


突き刺さった剣を抜こうと手を動かしたところ、先ほど見えた巨大な鉤爪のついた手が動いた。


激痛に耐えながら、剣を抜き、放り投げる。


時間が経つに従って、五感の感覚が戻ってきたが、それに連れて痛みも増していく。


どれほどの時間が経過したのであろう。感覚的には1-2時間ほど、じっと動けずに大人しくしていると、しだいに痛みが和らいできて、少し考える余裕がでてきた。


(しかし、ヤバイ状況には変わらないな。。。)


あまりの現実離れした状況に、焦りはなく、むしろ落ち着いている。


どうやら自分は人間ではないものに生まれ変わってしまったらしい。

恐らく、生まれ変わったのは竜だろう。東洋で龍神として崇められている龍ではなく、西洋で魔物扱いとなっているドラゴンの方の竜。


(いわゆる異世界転生ものの物語の登場人物になったわけか? しかし、いきなり死にかけているってどういうこと?)


納得がいかない。


(この世界の神様よ〜。チョット色々と不備が目立つんじゃないかい?)


(人間に生まれて、チート的な能力をゲットできるとか、伝説の武器とかもらって、勇者になるような展開はないというわけだね?)


(似たような話は読んだことあるけど、さすがにいきなり死にそうな状況って、どういうことやねん!)


やり場のない怒りを毒づきながら、考える。

前世の自分のことを。


(ところで、俺はどうして死んだんだっけ?)


救急車のサイレンと赤色灯の光は覚えている。

ただ、なんで救急車に乗っていたのか、思い出せない。

事故? 急性心筋梗塞とか?


(んー、思い出せない。)


そういえば自分の名前は?

嫁の名前も覚えてない。子供は?小学校2年生の男の子だったよね?

顔は‥思い出せない。


(マジか。)


気分が重くなる。

悲しいけど涙が出ない。そんな感じ。


「お前は誰だ」


不意に、頭の中で声が響いた。

低く、重圧な声。


「‥‥」


反応できずにいると、再び頭の中に声が響いた。


「もう一度問う。お前は誰だ」


どうやら耳から聞こえてくる音では無いようだった。頭の中に直接響いてくる声。


「自分は‥」


答えようとして、言葉に詰まった。

自分の名前も思い出せないのだから。


それと、声に出した言葉が、言葉になってなく、口から出たのは「グァア」という咆哮であることに気づき、自分でビビる。


相手は、そんなことには気づいてないようで、


「我の身体を侵食し、制御を奪うとは、一体何者じゃ。許さぬぞ。ウヌゥ」


と怒りのこもった言葉で返してくる。

ものすごい重圧を感じ、ビビりまくる。


(怖い、怖い。マジ、どういうこと?

俺、何にもしてないんですけどー。)


「チョッ、チョット待って。俺もこの状況がまだ把握できてないんだけど。。。なんか怒ってるみたいだけど、少し落ち着いて話させて?」


若干テンパりながら、声には出さずに、独り言をする要領で答える。


「何を言ってるか、信じられないかもしれないけれど、事故か何で一度死んだのだと思います。あまり詳しいことは思い出せません」


通じているのかわからなかったが、反応が無いので、そのまま話を続けた。


「前世は人間でした。おそらくこの世界ではない、別の世界から転生したのだと思います。一度死んで目が覚めると、この身体に乗り移っていました」


「あなたの話を聞く限り、この身体はあなたのものだったということでしょうね?逆にこの全身の怪我はどうしたのですか?目の前の人間達にやられたものでは?」


そう言うと、頭の中の声は怒り狂ったように、咆哮を上げた。


「下等なニンゲン風情がぁ!!!」

「レッサードラゴンであるこの我が、ニンゲンなどに身体を奪われたのかぁ!!!」


頭の中が、怒りで吹き荒れる。

目の前で機嫌の悪い客に怒鳴りつけられるような、そんな重圧を浴びながら、どうすることもできずに嵐がおさまるのを待った。


相当なストレスである。

こちらは何もしていない‥正確には、何もしてないわけではないのだが‥。わざとではないし、悪意も持っていなかったのに、メチャクチャに怒られていることになる。


ただ、わざとではなくても、自分の身体を乗っ取られたという相手の気持ちは理解できた。

なので、少し同情の余地はあった。


どれくらいだろうか。八つ当たりに耐えながら、そろそろ我慢の限界‥と思ったところで、不意に台風が通り過ぎた青空のように、重圧が消えて無くなった。


「ん? おーい? あれ?」


返事がない。


カチンときた。あれだけ勝手に怒り狂っておいて、勝手にいなくなったようだ。

温厚な性格の俺でも、さすがにいい加減にしろよ(怒)と思う。。。


腹の虫はおさらないが、今度出てきたら、さすがに文句を言ってやろう。


とりあえず頭の声は無視して、状況を整理する作業を続けることにした。


(さて、自分は死んで、このドラゴンの身体を乗っ取る形で転生したということで、間違いないな?)


レッサードラゴンと言っただろうか。ドラゴンの中でもまだ若くて下位の種属だったように記憶している。


恐らく目の前て転がっている人間にやられそうになったのだろう。


(もしかしたら、こいつも一度死んだか、死にかけたところに、俺が乗り移ってきたのではないか?)


意識を取り戻した瞬間の強烈な光は、俺が転生してきたことによって発生し、この人間達を黒こげにしたのではないか?


(ま、真相はわからないが、状況的に当たらずとも遠からずというところだろう。ドラゴンといえど、最強種で敵なしということではないらしい)


それ以前に怪我をなんとかしないと、そのうち出欠多量で死んでしまうかもなと考えて、傷口を調べてみると、自然に血は止まり、傷口が塞がり始めていた。


(どうやら自然に自己回復する能力が備わっているらしい。ブラボー。素晴らしい。)


まだ動くと痛いが、これでどん詰まりになる状況は回避できたといえよう。


(少し寝るか)


安心したからか、襲ってきた睡魔に勝てず、俺はそのまま眠りの中に落ちていった。












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