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カオスメイト ~この混沌とした学園で復讐を~  作者: カナト
始まりの場所
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罪島へ

 20年前、ある人工島で殺し合いのデスゲームが行われていた。


 正確には、その島では何度もデスゲームが行われており、2年に1度の周期だったらしい。


 生存できるのは、参加人数の半分。


 ゲームに参加した者たちは罪を抱えながらも平穏な生活をしていた者がほとんどであった。


 そして、参加者は運営側から支給される武器と、島の至るところに隠されている『秘密武器』と言われる強力な武器で人数が元居た人数の半分に減るまで戦わされる。


 それが、『デリットアイランド』と言う名のデスゲームだった。


 しかし、20年前の第10回デリットアイランド以降、デスゲームは行われていない。


 その時期の参加者だった、類いまれなる『能力』を持った少年、最上高太と他の参加者や生存者の協力によって、運営側であった『緋色の幻影』が崩壊したからである。


 その後、その人工島はある大企業の融資や支援で自立して生活できる島となり、第10回を生き延びた生存者たちは人工島に残ったと言う。


 そして、その島の名前は罪島になったらしい。



 -----



 8月の初日。


 俺と最上は、海に近い港の前に最低限の荷物を背中に背負って立っていた。


 昨日、最上に罪島に来ないかと提案された。


 そこに行けば、俺の疑問が解消されるらしい。


 なら、行かない訳にはいかないだろ。


 それに島に行けば、最上高太さんに会えるかもしれない。


 姉さんのこともそうだが、俺自身の異常な能力のこともわかるかもしれないんだ。


 親父や成瀬たちには、最上の実家に行くとだけ言っておいた。


 すると、成瀬がそれぞれで解散して学園に戻ろうと言い出し、基樹と久実もそれに同意して今日の朝の新幹線で東京に戻っていった。


 てっきり、また一緒に来るとか言い出すのかと思って、止める方法を考えていたんだけどな。


 まぁ、あとは親父とお袋を説得するだけだったから楽だったけど。そう言えば、師匠の姿が見えなかったな。


 水平線をじっと見ていると、最上がそわそわと落ち着きがないことに気づく。


「どうした?具合でも悪いのか?」


「……ううん、何でもない」


 最上の足元ではノワールが寝ており、その背中を彼女は撫でて気を紛らわしているように見える。


 無言の時間が続く。


 前はそうでもなかったが、今は凄く気まずい。


 チラチラっと最上の方を見ていると、ここであることに気づく。


 あれ?これって、俺たち……今思ったけど2人っきりだよな。


 2人で旅行みたいなものなのか?


 まずい、少し緊張してきた。……って、どうして最上と2人ってだけで緊張してんだよ、俺!?


 自分に呆れて溜め息をつくと、黒猫とたわむれている最上に咳払いして話しかける。


 とりあえず、あのことを謝らなきゃいけない……よな。


「なぁ、最上。その……この前は悪かった」


「……えっ、何のこと?」


「いや、だから……さ、夏祭りの時、俺がおまえに……」


「あー、急に抱きついてきたこと?それだったら、別に気にしてないから引きずらなくても良いよ。アメリカだったら、友達の女子と普通にハグくらいするもんね?わかってるから」


 はっきりしない言い方をしていると、最上は平然とした表情でサラッとノワールを撫でながら言いやがった。


 だけど、一瞬見せた複雑そうな表情を俺は見逃さなかった。


 嘘つけよ、気にしてるって顔に書いてあるだろぉが。


 強がってるのはわかるんだっての。


 頭の後ろをかいて背中を見せて海を見れば、水平線から小さなボートが近づいてくるのが見える。


「もしかして……あれか?」


「うん、そうみたいだね。多分、乗ってるのは……」


 ボートが段々と沖の方に来て、体格の良い男の人が運転しながら片手をこっちに向かって振っているのが見える。


「おーい!恵美ー!!」


 大きな声が聞こえてきて、最上の名前を呼んでいる。


 そして、それを聞いて最上が深い溜め息をついて、不満そうに少し頬を膨らませる。


「やっぱり、東吾おじさんだった……」


「東吾……おじさん?」


「加島東吾っていう元ボクサーで、お父さんとお母さんを支えてくれていた人の1人。でも、凄く暑苦しくて面倒な人」


「そ、そうなのか……大変そうだな」


 どういう人かを聞いて、苦笑いするしかなかった。


 ボートが沖に着けば、中からさっき見た男の人、加島さんが出て来て俺と最上の方に走ってきた。


 最上の両肩を掴んでじっと見れば、安堵の笑みをする加島さん。


「久しぶりだけど、無事で良かった。……おまえ、昨日急に島に帰りたいって言ったからびっくりしたじゃねぇか。おまえの母さんも驚いてたんだぜ?」


「ご、ごめんなさい……」


「まぁ、俺は別に良いんだけどよ。心配になるだろ?あいつが心配症なのは、おまえと最上が一番知ってるはずだぜ?」


「うん……お母さんにも、謝っとく」


「そうした方が良いな。……それで、そこにいるのが、もしかして……」


 加島さんが俺のことを見れば、目を細めてじっと俺の顔……と言うか、目を見てくる。


 この人、目付きが怖い。


 最上に視線で助けを求めれば、呆れ顔で頷いてくれた。


「彼は椿円華。……涼華さんの義弟だよ」


「ああ、あの子の……。そうか、そうだったのか、こいつが……。会えて良かったぜ……立派に成長したんだな」


 この加島さんの反応、デジャビュを感じる。


 昔、師匠にも似たようなことを言われた気がする。


 まるで、俺のことを知っているような言い方だった。

 

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