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カオスメイト ~この混沌とした学園で復讐を~  作者: カナト
真意を試す対抗戦
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隠密の影

 基樹side



 クラス対抗戦は、未だに終わる様子が無い。


 その間、参加選手以外は各クラスで待機し、対抗戦の様子を見守ることになる。


 それはDクラスとて例外ではなく、全員が席について、黒板の上にかけられたスクリーンを通じて、Sクラスとの戦いを観戦している。


「……と、学園側は思ってるんだろうな」


 心の中のモノローグを、現実で口を開いて言葉にすることで締める。


「何の話?急に意味のわからないことを、口走らないでもらえるかしら」


「ごめんごめん。まさか、俺と瑠璃ちゃんが教室から抜け出しているなんて、学園側は思ってねぇだろうなって思ってさ」


 目的地に向かいながらも、スマホを片手に少し前を歩く瑠璃に視線を向ける。


 本当なら、今から向かう先には俺1人で向かうはずだった。


 俺は瑠璃に協力を仰ぎ、教室の監視カメラを乗っ取り、俺がそこに居るように偽装するだけの予定だった。


 だけど、この学園には地上の校舎と地下の広大な街を含めて、数えきれないほどの監視カメラが設置されている。


 目的地までのルートの中で、監視カメラをくぐって進んでいては時間がかかる。


 だけど、流石に目的地までに続く監視カメラを、数十機、それも数十分も誤魔化していたら、奴らに気づかれる危険性が高い。


 最終的に俺と瑠璃の2人の存在を偽装し、一緒に来ることで時間差でハッキングを仕掛け、対抗戦の進行状況を確認しながら進むことに決定した。


 彼女を危険に巻き込みたくは、無かったんだけど。


 瑠璃は耳に着けたワイヤレスイヤホンから、対抗戦の状況を音声で確認する。


「今、対抗戦は3回戦が終わったところみたいね。次は新森さんの番。彼女なら、必ず勝ってくれるわ」


「その場合、最後は5回戦……円華と鈴城紫苑の戦い、か」


 元・最強の暗殺者と、Sクラスの女帝。


 少し、あの2人の戦いに興味があるな。


 あの女からは、円華に似た何かを感じる。


 円華と鈴城紫苑が戦うのなら、どちらが勝利を掴むのか。


 不思議と、あいつが負けるのは想像がつかないけどな。


 ダチの雄姿ゆうしを見ることができないことに、少し残念さを覚えつつも目的に頭をシフトさせる。


 あいつらの戦いがそうであるように、こっちも負けることができないしな。


 向かった先は、ペットショップ。


 周りの店が開いている中で、1つだけ入口をめている。


「準備中……。あからさまに不自然な店ね」


「対抗戦の期間に入ってから、ずっと閉めてた。もしかしたら、本当に()()()なのかもしれないぜ。対抗戦での敗者側の感染者を殺すっていう……クソみたいな計画のな」


 「準備中」の看板ごと、蹴り割ってドアを開ける。


「不法侵入……だけど、殺人罪よりは軽い罪だろ」


「私が来た時には、既に開店状態だったってことにしておくわ」


 瑠璃はそう言って先に進み、薄暗い店内を進んだ。


「石上との調査で、感染者は全員、動物に噛まれたような痕があったことがわかった。そして、その動物について調べていく内に、野良猫とか犬が大半だったけど、麗音ちゃんはこの店のハムスターに噛まれたらしい。それなら、その店に詳しい話を聞く必要があるってもんだよな……」


 店内にはペットショップと言いながら、檻の中には動物の姿が確認できない。


 ガラスケースの中にも、檻の中にもだ。


 それが余計に、怪しさを強くさせる。


 カウンターの裏側にあるスタッフルームの入り、その奥に進めば大きな扉を確認する。


 そして、そこを押し開けば、広い空間の倉庫に出る。


「ここは……」


「店は閉めていたはずなんだよね。僕チンの庭に、ネズミが入り込まないでよ」


 奥から、1人の男が姿を現す。


 小太りの男で、店の制服に身を包んでいる。


 その目は、紅く染まっている。


「……石上の予想はビンゴだったってわけか。あんたが、この店の店長さん?」


「その通り。少し前に、先代とは交代してもらったけどね」


 交代って言いながら、その言葉からは軽薄さを感じる。


 正規の手続きかどうか、怪しいところだな。


「ちょっと、大分マジのクレームを入れに来たんだけど、この店を炎上させる覚悟をしてもらおうか」


 相手が紅の瞳をあらわにしてるなら、話合いで解決するわけが無い。


 鋼鉄の糸を通したグローブを現し、臨戦態勢に入る。


「基樹くん、ここからはあなたに任せていいのよね?」


「やれるだけは、やってみるさ」


 俺が戦う意思を示せば、店長は冷たい目付きで指を鳴らした。


 すると、こっちを囲むように牙を剥いた犬や猫、他の小動物、鳥類が暗闇から数十匹単位で姿を現す。


 店に動物の姿が無かったのは、こっちに集中させていたからか。


「こいつら全ては、僕チンのペット。その牙やくちばしには、今苦しんでいる奴らと同じ毒が仕込んであるんだ。しかも、今回は遅延性じゃなく即効性だ‼その女を守りながら、戦うことができるかなぁ!?」


 毒を使った物量戦法ってか。


 イラつかせてくれるよ、全く。


狩人の手品(ハンターズトリック) 障壁(バリア)‼」


 糸を展開させ、前方に半円のバリケードを作る。


「瑠璃ちゃん、すぐに外へ出ろ。こいつらは、防いでみせる」


「待って、あなたも一緒に…‼」


「それができたら、俺もそうしてるんだよ…」


 逃げられない理由は2つ。


 1つは、ここでこいつをらえなければ、円華たちの信頼を裏切ることになる。


 あいつらは、俺が目的を遂行すると信じて、表で戦ってくれているんだ。


 そして、今の麗音ちゃんや雨水も、このクズ野郎のせいで苦しんでいる。


 知り合いが、こんな奴の思惑通りに死ぬのは気に入らない。


 ここで失敗するわけには、いかない。


 そして、もう1つの理由は俺らしくないかもしれないけどさ……。


「カッコ悪いところ、見せられっかよ…‼」


 獣たちは糸のバリケードで進行を阻まれているが、流石に続けざまに何十匹と攻めてきては衝撃で圧される。


 瑠璃も俺の意図を組み、出口に向かおうとした矢先、シャッターが下ろされる。


「おぉ~っと、お尻の小さなプリティー娘ちゃん!君みたいな可愛い子、逃がすわけないじゃ~ん‼」


 相手の手元にはスイッチが握られており、それで閉じ込めたようだ。


 下品な目を向けられ、瑠璃も鋭い目付きで睨みつける。


「あなたにそんなことを言われたって、気色悪いだけよ…‼」


「その反抗的な目も良いねぇ~‼もっと、僕チンにその目を向けてよぉ‼女の子から、豚を見るような目を向けられるのがだぁ~い好きなんだぁ~‼」


 豚を見るような目って言うか、腹の出てる見た目からして、その親戚みたいなもんだろうが…‼


 と言ってやりたいけど、それも火に油を注ぐだけか。


 そして、豚野郎の視線が俺に移る。


「もしかして、君が噂の糸使い?ジョーカー様から、話は聞いているよ?あの伝説の狂人とは、似ても似つかない未熟者だってねぇ‼」


 挑発のつもりか、父親……狩原浩紀のことを口に出してくる。


「黙れよ……」


 似ても似つかない?


 だったら、証明してやる。


 俺があの人の血を受け継いでるってことを…‼


 懐から短剣を取り出し、鞘を抜刀しながらコードを唱える。


「暴れろ、スサノオ‼」


 朱色の甲冑を実体化させて身を包み、9つの蛇が鎧に刻まれている。


 魔鎧装の姿を前に、店長は目を見開いては口角を上げる。


「ブヒヒヒッ、それを持っているなら、話が早い…‼楽しめそうだねぇ‼」


 獣の中から、ワニや犬が障壁を喰い破っては俺に接近する。


 左腕から一匹の蛇が実体化し、太刀に巻き付いたのと同時に床に刃を突き立てる。


地蛇ちじゃ太刀たち ふるえ


 刃を通じて衝撃波が広がり、襲いかかる獣を震動によって乱れさせる。


 そして、その隙に前方に出ては切り伏せた。


「あんま、無駄な殺生はしたくないんだ……。おまえの能力が動物を操るだけなら、さっさと降参した方が身のためだと思うけど?」


 こっちは鎧を装着しており、嚙みつかれようと毒は通じない。


 物量戦法で攻めてくるとしても、スサノオの技を止める手段は見えない。


 しかし、相手は俺の忠告に対し、ブヒっと豚のように鼻を鳴らす。


「確かに、そのままなら勝てないだろうなぁ~。だったら、ミックスさせればいいだけさぁ‼」


 切り伏せられた動物たちの肉片が集まり、その質量に合わせて巨大化していく。


 その形は人のものになっていき、俺たちを見下ろしてくる。


「こりゃ、またぁ……」


 現実的にはあり得ない変化に、唖然としてしまう。


 そして、瑠璃も目の前の異形の生物に対し、足を震わせている。


「俺チンの能力は、ペットを操るだけだ‼そう、だから、その細胞を操作して、別の動物と混ぜることができる‼僕チンの可愛いキメラちゃんで、邪魔者の君をぶっ潰してあげるよぉ~‼」


 動物を操作するって、その細胞まで変化させるってことかよ。


 意外に……って言うか、予想以上に厄介な能力だな。


 目の前のキメラだけでなく、周りには多くの動物が居る。


 こいつら全部の細胞を変化させられるとしたら、一匹ずつ倒したところでまた巨大化させるだけだ。


「考える余裕なんて、与えないよぉ‼」


 キメラはその両腕の剛腕を振るい、俺を掴んで持ち上げ、締め上げようとする。


「潰れちゃえぇえ‼」


「ふざ……けんな‼」


 2匹の蛇を実体化させ、1匹はキメラの顔面に向かって火を吐かせ、もう1匹は太刀に巻き付かせ、水流によって両腕を切断させる。


 地面に落ちている間に、別の蛇を太刀に巻き付かせて次の攻撃に移る。


風蛇(ふうじゃ)の太刀 螺旋らせん‼」


 蛇の口から竜巻が発生し、それに巻き込まれたキメラの身体が宙に浮きながら削られる。


 そして、風が収まると同時に蛇を交換して跳び上がる。


雷蛇らいじゃの太刀 ひらめき‼」


 目にも留まらぬ速さで、キメラを一刀両断して薙ぎ払った。


「ぼ、僕チンのキメラがぁ~‼」


「動物を混ぜたところで、スサノオの力に勝てるわけじゃない。俺を倒したいなら、ジョーカー本人でも呼んで来いよ」


 あの仮面の男は、俺たちの運命を狂わせた存在だ。


 ここで倒せるなら、願ったりだ。


 キメラの残骸を前に、足から崩れる豚野郎。


 しかし、その口角は上がっていた。


「なぁ~~んちゃってえぇ~~‼」


 奴が指を鳴らせば、瑠璃の後ろの物陰から一匹のハムスターが飛びだした。


「うっ‼」


 首筋に噛みつき、キメラの方に走っては取り込まれる。


「目に見えている物だけが、脅威じゃない‼キメラに気を取られているから、こうなるんだよ‼ブァ~~~~カっ‼」


 すぐに倒れる前に瑠璃に駆け寄り、身体を支える。


「瑠璃‼しっかりしてくれ、瑠璃‼」


 首からすぐに、麗音ちゃんと同様のあざが広がっている。


 彼女の時は、すぐにここまでの症状は出ていなかったはずなのに…‼


 即効性の毒っていうのは、本当だったのか。


「…ごめん、なさい。結局……足手まといに、なってしまったわ……」


 かすれた声で謝ってくる彼女。


 守れなかった。


 敵を倒すことだけに、集中していた。


 こんな時、円華だったらどうしていた?


 ちゃんと、守るべき者に目を向けながら、戦えていたはずだ。


 俺はさっきまで、彼女のことが頭から消えていた。


 今まで1人で戦ってきたから、仲間を……大切なものを守る戦い方を、知らなかった…‼


 今までに感じたことのない動揺から、スサノオの変身が解けた。


「もって、あと5分かなぁ~?そのお尻ちゃんが僕チンのほっぺにキスしてくれるって言うなら、解毒剤をあげても良いけどぉ~?」


 フラスコに入った液体を見せ、挑発を繰り返す豚野郎……。


「基樹…くん…‼」


 瑠璃はあいつの言葉に耳を貸さず、俺の襟元えりもとを掴む。


「私のことは、良いから……。早く、解毒剤を…‼円華くんとの、約束を……忘れない…で……‼」


 円華との約束……。


 そうだ、俺たちは学園側の思惑を覆すために戦ってるんだ。


 誰も死なせないために、俺たちは…‼


『そのために、目の前にいる敵を殺す』


 頭の中に声が流れる。


 それはスサノオのものではなかった。


 そして、俺はその言葉に対して、声を出して返事をした。


「……そうだな」


 彼女からしてみれば、約束を忘れないことに対する返事に聞こえたかもしれない。


 だけど、実際は違う。


 俺はこの状況を作り出した奴を許さない。


 麗音ちゃんたちを苦しめた奴を許さない。


 瑠璃を今、俺の目の前で傷つけた奴を……許さない‼


 両手に着けたグローブの糸が、周囲のパイプやシャッターなどの鉄製のものに貼りついては糸に変換して吸収する。


 そして、俺の元に集まっては黒衣に形が形成される。


『「グゥゥゥ……クォオオオオオオオオオオオ‼‼‼」』


 黒いアンダースーツの上に漆黒の忍装束を身に着ける。


 そして、腰からは4本の尾が伸び、鋭い目付きをした狐の面が顔を覆った。


 その変化によって、周囲に赤黒い瘴気しょうきが広がった。


「な、何なんだよ、急に変な狐に変わりやがって…‼だ、だとしても、僕チンのキメラは、まだまだ元気なんだよねぇ‼」


 両断されたキメラの上下に、周りの動物が吸収されては2体に複製されて立ち上がる。


「1体でも時間がかかっていたのに、2体も増えたら絶望しちゃうんじゃないのぉ~!?」


 キメラの1体が、先程と同様に両手を伸ばしてくる。


 しかし――――。


 ブォ――――ン。


 その両腕は、血をまき散らすことなく消滅した。


『「………」』


 その時、黒衣の妖狐は瑠璃を抱えたまま、片手で両手を払っただけだった。


 しかし、それだけでキメラを無力化したのだ。


 妖狐はキメラの先に居る仇を睨みつけ、首を傾げながら呟いた。


『「……コロス」』

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