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カオスメイト ~この混沌とした学園で復讐を~  作者: カナト
真実と嘘の選挙戦
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王の助言

 円華side



『椿さん。成瀬さんたちが行動を起こしたおかげで、多少のアクシデントはありましたが、探索活動に支障は無さそうです』


「了解。予定通りみたいだな」


 2年生のエリアで騒ぎが起き始めたのを、耳に着けているイヤホンから流れるレスタの音声で確認する。


「そのアクシデントってのは、もしかして仙水凌雅が関係してねぇか?」


『見えてないのに、よくわかりましたね。驚きです』


 やっぱり、介入してきたか。


 俺たちが行動を起こせば、向こうがそれに対処しようとしてくることはわかっていた。


 噂話が本当なら、2年生は奴の縄張りだしな。


「仙水凌雅さんが、成瀬さんたちの探索活動を妨害しようと異議を唱えて来ましたが、それを基樹さんが中和してくれたんです。彼の話術で言い包められた感じですね」


「基樹が…?それは意外だな」


 基樹が表立ってあの男に意見するのは想像がつかなかったけど、それが結果としていい方向に行ったなら好都合だ。


「レスタ、2年生エリアの監視カメラのハッキングはどうなってる?」


 電子系関連の工作をするなら、レスタの出番だ。


 彼女には、2年生の動きを見張るために監視カメラのハッキングを平行してやってもらっていた。


『2、3台はこちらに映像が流れるように設定できました。今のところ、成瀬さんたちの行動に対して怪しい反応をしている人物は見当たりません。引き続き、他のカメラへの接続に介入を続けますね』


「頼むぜ。悪いな、危険な橋を渡らせてしまって」


 学校のサーバーにアクセスすると言うことは、それだけこちらの動きが向こうに掴まれる可能性が高まるってことだ。


 特に相手がポーカーズなら、自分の身を隠すために、電子系統にも何かしらの介入をしている可能性は捨てきれない。


 だけど、レスタはこちらの心配を他所よそに、軽く胸を叩いて言った。


『大丈夫ですよ、椿さん!この学園で私以上に、サーバーの抜け道を知っている女は居ません。どんなファイアーウォールだって、この電波美少女に掛かれば紙ぺらも同然です‼』


 ドヤ顔で言ってるところに頼もしさを感じていると、不意に出口の方から足音が聞こえては、スマホをポケットに入れて外に視線を向ける。


「レスタ、しばらく静かにしてろ。多分、挨拶を済ませるだけじゃ終わらねぇ」


 足音は段々と近くなり、階段を上ってくるのがわかる。


 そして、誰が近づいてくるのかは大体気配で察せるようになってきた。


 独特なオーラって奴を、隠す気もない感じがらしいっちゃらしいな。


 階段を上りきったところで、向こうは俺の存在に気づいて軽く手を挙げて近づいてきた。


「まさか、こんなところで会うとはな。馬鹿と煙は高い所を好むというが、おまえもその部類か?」


「……その理論で言うと、ここに来ているおまえもバカにならねぇか?」


「そう言うなら、バカと天才は紙一重かみひとえだと言い返そう。おまえには、私はどちらに見える?」


 遠回しな言動に対して、俺は相手をするだけで溜め息をついては肩を落とす。


「何でこんなところに1人で来てるんだ、鈴城紫苑?」


「外の風に当たりに来た……と言えば、信用してくれるか?」


 フフっと笑って首を少し傾げる紫苑に、「んなわけねぇだろ」と半眼を向けて返す。


「もしかして、俺の行動は監視されてたってか?」


「そこまではしていないさ。ただ屋上に居るおまえを見掛け、少し話がしたいと思って来たまでだ」


 そう言って、彼女は俺の隣に来ては手すりに背中を預ける。


「また学園内が荒れそうな空気になっているな。どこの誰が仕掛けたかはわからないが、()()()()()()が行われているらしい。おまえは参加しないのか?」


「興味ねぇ。それに、探してるのは悪趣味ないじめの証拠だろ?どこが宝だよ」


 俺の返答に対して、女帝は怪訝な顔を浮かべては不敵に笑む。


「いじめの証拠……であるというカモフラージュをしてはいるが、あの掲示板の主の目的は別にあると、私は見ている。紫の蝶のメモリ、それが本当に意味するものを知る者は、今頃2つの反応を示していることだろうな」


 左手の人差し指と中指を立てて見せ、聞いても無いのに予想をく。


「1つは影ながら、このUSBを血眼ちまなこになって探す。そして、もう1つの反応としては、逆にUSBの探索を妨害しようとする。それを手にしている者からの、報復を恐れて」


「妨害……か」


 先程のレスタの情報から、仙水凌雅の存在が頭を過ぎる。


「そう言えば、おまえ、最近は仙水凌雅と会ったのか?あの男、最近は行動が静かなように思えるけど」


「さぁ?形として盟約めいやくを結んでいるが、仙水と私が足並みをそろえることは、条件として提示していないのでな。私はあくまで、私の使命のために行動している」


 また、使命ってやつか…。


 彼女の言葉に引っ掛かっていると、その口から「しかし」と逆接の言葉を口にしては目付きが変わる。


「最近は選挙活動をおろそかにするのに比例し、取り巻きも連れずに、1人で行動することが多くなっているな。だが、票集めに関しては、確実に票が集まろうとしている。昨日の支持率調査、おまえは見たか?」


「いや、少し忙しかったから見てねぇわ。ちょっと、待ってくれ」


 スマホを取り出してメール画面を開けば、昨日の支持率を見て眉間にしわが寄った。


 マジかよ……。


 進藤大和 45%


 仙水凌雅 55%


 仙水の支持率が、進藤先輩のそれを追い抜いている。


「奇妙だろ?行動に反比例し、あの男を支持する者が増加傾向にある。そして、2年生の間で進藤大和から仙水の下にくだる者も日に日に増えているという報告も、私の付けた監視から受けている。おまえは、この状況をどう見る?」


 俺を試すように、事実から導き出される結論を出すように促してくる女帝。


 仙水の行動が、あからさまに変化している。


 そして、奴が望む結果に近づきつつある。


 あの男の背後に、奴を糸で操ろうとしている存在が見え隠れしているように見える。


「表立って使えない手段で、支持率を操作している。……っていうのは、短絡的たんらくてきかもな」


「そう言いながら、おまえの表情から焦りや動揺は感じえないな。何か策を用意している。違うか?」


 紫苑は俺に顔を近づけ、視線を合わせては思考を見通そうとしているように感じる。


 こっちはそれに反応を示さず、目を合わせたままこう返した。


「どうだろうな」


 立場上は敵対している関係上、こいつに手の内を明かすことも、見透かされることもあってはならない。


 邪魔されるわけにはいかねぇんだよ、これからの復讐劇の舞台は誰にも。


 しばらく目を逸らさずに見つめ合った後、彼女はフッと笑っては俺から離れる。


「円華、おまえは良い目をしている。その目を見ていると、誰もがおまえに心を許してしまいそうだ」


「何だよ、それ?茶化ちゃかしてんのか?」


「そうではない、褒めているんだ。思わず、嫉妬しっとしてしまいそうなほど、おまえには興味を引かれてばかりだ」


 嫉妬という言葉に「はぁ?」と返すが、昼休みの終了の予鈴が鳴っては話しを続ける空気ではなくなる。


「楽しい時間と言うのは、いつもあっという間だ。私はそろそろ、花園館に戻らせてもらうとしよう。ちなみに言っておくが、私も暇つぶし程度に宝探しに興じさせてもらうつもりだ」


 そう言って、紫苑は軽く手を振って出口の方に足を進めながら「そして」と続ける。


「もしかしたら、私もおまえの盤上で踊らせてもらうことになるかもしれん。その時はよろしく頼むぞ、主催者ゲームマスター?」


「えっ…それって、おい!」


 俺が呼び止めようとするが、それで止まることなく行ってしまった。


「主催者って……思いっきり見透かされてんじゃねぇか」


 あの女帝は、どこまでお見通しなんだ。


 彼女が立ち去った後、俺も教室に戻りながら頭を整理させる。


 仙水凌雅の行動の裏に、クイーンの存在が見え隠れしているように感じる。


 だとしたら、好都合だ。


 選挙戦当日に、全ての決着をつけてやる。


 人形劇を楽しんでいるつもりの女王に、思い知らせてやるよ。


 これはおまえを追いつめるための、俺の復讐劇なんだってな。



 ーーーーー

 ???side



 学園内で行われている、USBの探索。


 それは1年生から波が広がっていき、2年生の中でも探そうとする者が出始めている。


 不味い、不味い不味い不味い不味い‼


 風間直子のいじめのデータ?


 違う、あの掲示板を出した人物は知っているはず。


 私の持っている蝶のUSBの意味するものが、何なのかが…‼


 独りになる安心感を得るために、誰も居ない視聴覚室で考えを巡らせる。


「全く、何でこんな時に使えないのよ、あの男は…‼」


 仙水凌雅が探索を止めるように動いたにも関わらず、波は止まることを知らない。


 選挙戦まで残り3日とは言え、私の存在に辿りつくのも時間の問題。


 全校生徒が、私を狙っていると言っても過言ではない。


 そして、USBの所持者が私だと気づかれた場合、全ての計画が崩壊することになる。


 それだけは、何としても避けなくてはならない…‼


 カオスの坊やのこともそうだけど、そんな失態が組織に知られれば、女王としての私の立場が危うくなる。


 何としても、USBの存在を隠し通す必要がある。


 だけど、どこに隠す場所があるの?


 人形たちの手綱を握る以上、USBを手放すことはできない。


 かと言って、安全な場所があるかと言われれば……。


「お困りのようだな、クイーン」


 不意に背後から声が聞こえ、振り返れば後ろに立っている存在に絶句する。


 純白の鎧に蒼いマントを羽織った騎士ので立ち。


「あなたは……キング…!?」


 仮面を着けた状態とは別に、魔鎧装を装着していると覇気はきがまるで違う。


 そして、身体が固まっている間に、彼は右手に持っている物を見せてくる。


「おまえの悩みの種は、これだろ?」


 その手に持っているのは、私が制服の内ポケットに入れていたはずのUSB。


 学園のほぼ全ての生徒が、探している物。


 私の意識がおよばない領域で、抜き取ったと言うの!?


「気を抜き過ぎだな。学園の状況を見るに、既にこれはおまえの手に余る代物しろものとなったわけだ」


「そんなことはない‼それに3日後の選挙で私の人形が生徒会長の席に就けば、私の地位は不動のものになるわ‼組織だって、それを望んでいるはずよ」


「確かにおまえの言う通り、裏だけでなく表の権力も掌握できれば、我々の計画を妨害しようとする者を排除することは困難ではなくなる。あのカオスを追いつめることも可能だろう。しかし……」


 キングはバイザー越しに私を見下ろし、威圧感を与える。


「おまえに、それを支配するだけの覚悟は感じない」


「な、何ですって…‼」


 怒りを示す前に、キングはまた一瞬で移動しては私の肩に手を置く。


「このUSBは、選挙戦当日まで俺が預かっておく。おまえを守るためでもあり、これが俺にとっても最善だ。安全が確認でき次第、おまえに返そう」


「何を勝手なことを――――っ‼」


 反論しようとする隙も与えず、キングはその姿を消した。


 私の弱みを、奪い取ったまま。


「……カオス……キング……全てが、気に入らないのよぉ‼」


 机を勢いよく叩きながら、身体から赤黒いオーラが漏れ出ては教室内を充満させる。


 こうなったら、何が何でも生徒会の権力を手に入れる必要がある。


 この際、四の五の言っている余裕はない。


 私の力は、USBだけじゃない。


 罪にいろどられた力で、全てをかき乱すのみ…‼

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