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カオスメイト ~この混沌とした学園で復讐を~  作者: カナト
弱者との内乱
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一致する苛立ち

 特別試験の発表から1日が終了するが、不穏な空気が緩和されることは無かった。


 クラス全体に疑心暗鬼の雰囲気が広がる中、ほとんどの生徒が暗い表情で教室を出て行った。


 それも当然か、試験の内容が内容だ。


 俺も変に疑われるのも面倒だったため、1人で帰宅して今はベッドに寝転がって天井を見上げている。


 正直、息苦しいったらねぇ。


 1学期の人狼ゲームの時とはわけが違う。


 人の命か、クラスのポイントか。


 例え、内通者を見つけ出すことができたとしても、それを切り捨てる選択ができるかどうか。


 クラスの中で、このことを最も重く受け止めているのは成瀬だと思う。


 あいつが、誰かを犠牲にしてまで上に昇る道を選べるとはどうしても思えない。


 例え、そいつがどれほど外道な奴でもな。


 それが人間として正常な思考なのかどうかはわからねぇけど、倫理観を無視して考えるなら、切り捨てる方が正解だと俺は思う。


 切り捨てることができずに、身を滅ぼした仲間を知っているからこそ、余計にそう思うのかもしれねぇ。


「マイクス……。また、あんなことを繰り返すのは御免だ」


 数年前の過ちを思い出せば、自分も黒い感情に染まりそうになったのを自覚して頭を切り替える。


 どっちにしろ、1週間後まではこの状態が続くのを覚悟した方が良いかもしれねぇな。


 クラスのことは抜きにしても、内通者が俺と敵対するなら、それが誰であろうと容赦ようしゃする気は毛頭ない。


 あいつらがどういう選択をしようとも、俺の邪魔をする奴はぶっ潰す。


 自分のクラスのことも気掛かりだけど、他のクラスのことも頭を過ぎる。


 この特別試験、クラス内で終わることじゃない気がする。


 と言うか、それぞれのクラスの特性がそのままこの試験に現れるんじゃないかと思える。


 例えば、Aクラスの中から退学者が生まれるとは、とてもじゃねぇけど思えない。


 Sクラスはどうだ?体育祭での真央へのやり方を見る限り、容赦なく切り捨てるかもしれない。


 B、C、Eについては、動向が全然読めねぇ。


 Bは幸崎が孤立している今、誰が弾頭しているのかも把握できねぇし、梅原も目立った動きを見せていない。


 Cの木島江利……魔女に関しては、この状況を陰で楽しんでいるのが目に見える。


 Eクラスは、柘榴が居ないことで統率が取れていないのは、この前の様子からよくわかった。


「不穏な空気になっているのは……俺たちのクラスだけ、じゃねぇよな」


 人を切り捨てようと、ポイントを捨てようと、どっちにしても大なり小なり後味の悪さは残る。


 大事なのは、その選択に悔いが残るかどうかだ。


 あとから、別の方を選んでおけば良かったと後悔していたら、その念が後を引きずることになる。


 過去に戻ることは、どんなに頑張っても不可能だ。


 そして、自分の選択の先の結果が現れるのだって、1日2日の話じゃない。


 要するに、自分の選んだ答えに強い覚悟を持てるかどうかだ。


『覚悟か。良い言葉じゃねぇか』


 心の呟きに対して、ヴァナルガンドが反応する。


 白華の方に横目を向ければ、狼のシルエットが浮き出る。


『だが、全ての人間がおまえみたいに死線をくぐってきた奴ばかりじゃねぇ。心の弱い人間は存在する。そして、それが多勢だ。わかってんのか?』


「当たり前だろ。でも、弱いばかりじゃない。弱い自分を受け入れて、変わりたいと思えば、成長するのも人間だ」


『その一例がおまえ自身だってか……。人間の基準に、自分を置いて考えてんじゃねぇよ、バカが』


 ヴァナルガンドはハンっと笑って牙を見せてくる。


『視野がせめぇ。弱い自分を受け入れる?そっからどうするかも、その人間次第だ。おまえみたいに、受け入れた上で抗う野郎ばかりじゃねぇ。世の中、向上心がある奴ばかりじゃねぇんだよ』


「……そう、だな」


 ヴァナルガンドの言葉を、否定することはできない。


 俺は確かに、自分の弱さと向き合ってきた。


 姉さんや師匠との修行、家業やラケートスでの実践、そしてこの才王学園での戦い。


 嫌になる程に自分の弱さを思い知らされ、そのたびにそれに抗うために力を身に付けてきた。


 その過程の先にあるのが、今の俺と言う存在だ。


 ヴァナルガンドは素っ気ない目を向けながらも、『それでも』と言葉を続ける。


『おまえの甘っちょろい考えは気に入らねぇが、その強さへの飢えから来る根性は認めてやる。それが無かったら、とっくにおまえは俺様に喰われてる。だがぁ……おまえの群れに居る奴らの中に、気に入らねぇのが混じってやがる』


「はぁ?逆におまえが気に入る奴なんて、居るのかよ?」


『大抵の野郎は気に入らねぇし、おまえのことも気に入らねぇのは確かだ。それでも、俺様を最もイラつかせる奴は―――』


 その言葉の先を聞いた時、やっぱり、こいつは俺の半身なんだと思った。


 それを察したのか、ヴァナルガンドはハンっと笑っては白華に戻って行った。


 言いたいことを言ったら、すぐに消えやがって……本当に自己中な狼だぜ。


 まぁ、あいつが気に入らないって言ってる俺に対して、認めている部分があったのは意外だったけどな。


 そして、ヴァナルガンドが言っていたような奴が、クラスの中に居ると思っただけで苛立ちを覚えたんだ。


 俺の中に長年居ただけあって、根本的な感性は似ているのかもな。気に入らねぇけど。


 視線の先にある愛刀を見つめる中で、悪い予感が頭に浮かぶ。


 この氷の刃を、またクラスメイトに振るう時が来るかもしれない。


 1学期の時は、復讐のことを念頭に置いていたからクラスの奴らを斬ることに何の躊躇ためらい無かった。


 自分のために、この刀を振るったんだ。


 だけど、今度この刀を抜くときは、意味合いが違うかもしれない。


「邪魔する奴は、容赦なく叩き斬る……。それが、俺の守りたい者を助けることに繋がるなら」


 守りたい者を守るために、邪魔者はぶっ潰す。


 それが俺の今までの生き方から導き出した答えであり、揺るがない覚悟だ。


 自分の意志を再確認したところで、唐突にスマホの着信音が鳴った。


 真剣な表情で呟いていただけに、部屋の中に1人で居るとはいえ、気持ちに水を差された気分だ。


「ったく、どこの誰だよ……雰囲気ぶち壊しにしやがって」


 苦言を言いながら画面をみれば、珍しい男の名前だったので電話に出てみた。


「もしもし?どうしたんだよ、雨水。おまえが俺に連絡よこすなんて、初めてのことじゃね?」


『……そうだな。俺も貴様に電話をするとは、自分でも驚きだ。どうかしていると思う。…はあぁ~』


「自分から電話してきておいて、溜め息をつくとか信じらんねぇぞ、おい。イラついたから切っても良いか?」


 ムカついたので切ってやろうとすれば、雨水は『待て‼…すまない』と素直に謝ってきた。


 しかも、その声から彼が少し弱っているように感じた。


「大丈夫なのかよ、おまえ?ずっと体調崩してるって和泉から聞いていたけど、まだ良くなってねぇのか?」


「き、貴様に心配されるほどじゃない……が、帰宅してから、外に出る気力が無くてな。悪いが、これから俺の部屋に来てくれないか?」


「身体壊してる病人の居る部屋に行くのかよ……。1人で安静にしていた方が良いんじゃねぇの?つか、話すなら、このまま電話じゃダメなのか?」


『話したいのは、今日発表された特別試験のことだ。できれば、誰にも見られたくもなければ、音声データとしても残したくない。……頼む』


 俺に頼ってくる所からして、相当精神的に追い詰められてるのかもしれねぇな。


 前から気になっていたし、様子を見る意味でも行った方が良いか。


「ったく、しょうがねぇな。見舞い品持って行ってやるから、良い子で待ってろ。無理して動くんじゃねぇぞ?」


「余計なお世話だ。来るならさっさと来い。以上だ」


 苛立たし気に言っていたことから、減らず口を叩く気力は残っているみたいだな。


 一先ず安心し、外出の準備をする。


 とりあえず、Aクラスのマンションに行く前に、バナナでも買って行ってやるか。



 ー----

 ???side



 毎日毎日、頭に流れ込んでくる声がある。


『己の欲望のままに動け』


 俺の欲望は、もはや言うまでもない。


 目障めざわりな奴を……椿円華を、クラスから追い出したい。


 あのクラスは俺の居場所だ。


 こんな俺が居ても、何とも思わない奴らばかりの空間。


 みんなが同じ想いを抱えながらも、大概のことを我慢して目を瞑れば、それなりに楽しく生活できていた。


 息苦しさを感じない、居心地のいいクラスだった。


 それなのに、それをあいつがぶち壊した。


 許せない。


 今度こそ、あいつを俺の居場所から追い出してやる。


 そのために、今回の特別試験を利用してやる。


 大丈夫だ、必ず成功する。


 あの人からもらった、切り札は俺の手にある。


 このことを知れば、誰も彼もが椿円華を排除しようとするに決まっている。


 成瀬瑠璃が何を言おうと、クラスのみんなが黙っていない。


 逆に危険な化け物を追い出した上に、ポイントまで手に入るんだ。


 誰も文句を言うはずがないんだ。


 あの化け物が破滅する日も近い。


 興奮する俺の心に同調するように、ポケットの中でドクンっドクンっと振動する物体がある。


 取り出したのは、少し大きめの黒い卵。


 振動しながら、赤黒く輝いては点滅する。


『オマエノ……欲望……モット……染メロ』


「欲望……もっと……。そうだ、こんなものじゃない…‼まだ、足りない……もっと、もっとだぁ‼」


 これを預けてくれた、あの人は言っていた。


『その卵は、君の欲望をあるがままに映し出す鏡だよ。君が自分の欲望に、正直になればなるほど……それは君に力を与えてくれる』


 気に入らない……。


 全てを、あの頃に、戻したい…‼


 みんな、俺を置いて変わってしまった。


 変えたのは誰だ?


 誰のせいだ?


 あいつだ、あいつのせいだ。


 椿円華。


 何が草食動物だ。


 何が肉食動物だ。


 そんなのはどうでもいい。


 俺はあのクラスが良かったんだ。


 それなのに、俺の居場所が変わってしまった。


 変わったから、元に戻すだけだ。


 悪いのはあいつだ……あの怪物だ‼


 俺がみんなの目を覚ましてやるんだ。


 スマホを取り出し、改めて俺の考えが正しかったことを示す証拠を画面に映す。


 椿円華が、狼の化け物へと姿を変える瞬間の映像。


 成瀬瑠璃に送っても、それが意味を成すことは無かった。


 クラスの中で一番の影響力のある彼女に見せれば、一気に追い詰めることができると思ったのが甘かった。


 既に成瀬も、あの化け物に洗脳された後だったんだ。


 だから、今度はもっと影響力のあるやり方で奴の本性をみんなの前にさらしてやる。


 この試験が終わった後、生き残っているのは俺だ。


 全ては、あの頃のクラスに戻すために。

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