10年前の因縁
真央side
試験まで残り1週間を切り、クラス内での学力向上に向けた勉強会は上手く進んでいる。
今の僕にできるのは、みんなが成績を上げられるように、成瀬さんや住良木さんと一緒に講師役として、1人1人の苦手分野を洗い出し、それを克服する方法を探して実践することだけ。
元・Sクラスと言うこともあってか、Eクラスのみんなから期待を寄せられている。
1学期までは陰で散々見下していた僕を、クラスメイトは信頼してくれている。
2学期の中間試験、文化祭を経て、部外者だったけど受け入れられている。
もう、前のような失敗はしたくない。
自分1人で状況を変えられるなんて、そんな傲りもない。
今こそ、クラスのみんなで力を合わせなければいけない時なんだ。
誰1人として、脱落者を出さないためにも。
椿くんが繋いでくれたチャンスを、無駄にしたくない。
「そのためには、僕自身もレベルを上げておかなければならない…」
図書館で自主学習に取り組みながら、先のことにも思考を巡らせる。
今回の試験がクラスを振り落とすためのものなら、その難易度は今までよりも格段に上がると考えられる。
あらゆる面で規格外の椿くんは例外として、全体的に平均点は下がるだろう。
一般的に考えれば、下位のクラスほど危機感を煽られる状況。
「……だったら、Fクラスはどうなるんだ?」
今のFクラスは、柘榴くんの庇護下にある。
危機感や焦燥感は、人の正常な判断力を鈍らせる。
それは、自分の身をもって体験しているからわかることだ。
脳裏に柘榴くんの不敵な笑みが浮かぶ。
人を恐怖で支配しようとする彼が、この試験を利用しないはずがない。
それも、正攻法で攻めてくることはまずありえない。
Eクラスを標的に定めてくるなら、いつも以上に警戒する必要がある。
成瀬さんがAクラスの協力を仰ごうとしたが、それも失敗に終わった今、Eクラスは孤軍でB・Fクラスと戦わなければならない。
暴力行為に打って出られた場合、太刀打ちできるかどうかもわからない。
特にあの危険分子、内海景虎が行動に出れば、それは暴力では終わらない。
殺し合いに発展する。
神にも縋る思いで、そうならないように祈るばかりだ。
近い将来に対して不安を抱えながら、数学の計算式を解いていると、集中を遮られるような声が耳に入ってきた。
「ぐがぁ~、ぐるうぅ~~」
静けさを好む空間には、似つかわしくない鼾。
気になって後ろを振り返れば、突っ伏して寝ている女子に見覚えがあって溜まらず深い息が漏れた。
新森久美だ。
周囲の目を見れば、ここで大きな寝息を立てているのは歓迎されていない。
クラスメイトとして、起こさないわけにはいかないだろう。
席を立って新森さんを起こしに行き、肩を軽く叩いてみる。
すると、むにゃむにゃと口を動かしながらゆっくりと目蓋を上げた。
「ふにゃ?」
「新森さん、起きてください。眠たいなら、帰って休んだ方が良いですよ?」
声に反応して僕を見上げる彼女は、ビクッと身体を震わせて起きる。
「ま、真央っち、何でここに居るのかにゃ!?」
「しーっ。大声を出さないでください。ここは図書室ですよ?」
「それはぁ……そうだね、ごめん」
頭の後ろに手を回して苦笑いを浮かべる彼女の頬には、赤ペンのインクが付いていた。
机の上に広げられているノートのページには、間違えた計算式の上から赤い字で解答が書き殴られている。
僕の視線に気づき、新森さんは慌ててノートを閉じて上から隠す。
「ア、アハハハっ。恥ずかしい所を見られちゃった。瑠璃っちや麗音っちには内緒にしてね?」
「それは別に構いませんけど……。偉いですね、勉強会以外でも自主学習に取り組んでいるなんて」
正直、意外だった。
授業中はほとんど寝ている彼女が、放課後に図書館で勉強しているとは思いもしなかったから。
「今度のテストで退学がかかってるから、うちも数学とか物理をめちゃんこ頑張らなきゃいけなくなったからさ。瑠璃っちたちの時間をこれ以上割くのも悪いし、1人でもやんないとね」
「頑張るのは数学と物理だけ……ですか?」
机の上に置いてあるのは、確かに数学と物理の教科書と参考書だけだ。
「うち、どうしても計算問題って苦手なんだよね。覚えるだけだったら、1日前に詰め込んでも大丈夫なんだけどさー」
「そうなんですね」
覚えるだけの暗記科目は問題なくても、数式などの基礎的な部分を応用する科目は苦手意識があるってことか。
幸い、理系科目は僕の得意分野だ。
「もし良かったらですけど、間違えた問題を僕と復習しませんか?」
「え、良いの!?でも、真央っちも勉強してたんじゃ……」
広げたままにしていた前の席を見て、新森さんはバツが悪そうな顔を浮かべる。
「大丈夫ですよ。丁度、僕がやっていた科目も数学だったので」
心配させないように笑みを浮かべて言えば、隣の席に置いていた鞄を退ける。
「じゃ、じゃあ、お願いしても、良いかにゃ?」
「ええ、喜んで」
自分の荷物を移動させ、空けてくれた席に座ろうとすれば、チラッと見た本棚の方で不審な影を見つけた。
あれは……。
「すいません、新森さん。勉強を再開する前に、確認したいことがあるんですけど、良いですか?」
「ふぇ?別に良いけど……。どうしたの?何か顔が怖いぞ?」
「理由は来ればわかると思います。1人になると、あなたも目を付けられるかもしれない。ついて来てもらえますか?」
「ら、ラジャーです、軍曹!」
ビシッと敬礼してきては、拍子抜けしそうになったけど、そこはグッと気を張って耐える。
2人で人影を見つけた本棚の方に歩みを進めれば、小さな声ながら話声が聞こえてきた。
「や、やめてください…‼人を呼びますよ!?」
「そんなに嫌がらなくても良いじゃん?仲良くしようよ。それとも、君みたいな優しそうな子でも、俺をFクラスだからって見下すのか?」
「そ、そう言うつもりじゃ…‼」
壁を背に追い詰められ、顔の横に手を置かれて逃げ場がない女子と、詰め寄ろうとする男子。
両方とも、僕の知り合いだ。
1人は同じEクラスの伊礼瀬奈さん。
もう1人は……。
「やめてくれませんか、坂橋くん。今の君に、女の子にちょっかいをかけている余裕はないでしょう」
「……石上」
僕の声に反応し、坂橋くんは不愉快そうな顔を向けてくる。
「こんな所で会うなんて、奇遇ですね。あなた、今までEクラスの女子には何の興味も無かったはずでしょ。こんな時期に仲良くしようとするなんて、どういう風の吹き回しですか?」
「Eクラスに落ちても、優等生キャラは変わらないよな、おまえ。そういう所、ムカつくぜ」
坂橋彰とは、彼がFクラスに落ちてから連絡は取っていなかった。
仮面舞踏会の後に生徒会を辞め、柘榴くんの傘下に入ったのは知っている。
その後から、前に見せていた陽気さが消え、見境ない性格になったように思える。
いや、今までが繕っていただけで、これが彼の本性なのかもしれない。
伊礼さんを見れば、脚が震えていて恐怖を覚えているのがわかる。
「女の子を無暗に怖がらせるなんて、前の君からは考えられないような愚行ですね」
「そんなの関係ないんだよ。おまえたちEクラスは、今回の試験で全員消えることになる。だったら、消える奴らに何をやったって問題はないだろ?」
「随分と余裕ですね……。柘榴くんにおんぶにだっこで、Fクラスがこの脱落戦を乗り切ることができるとでも?」
「そんなつもりはないさ。俺たちだってやることはやる。これでも、真面目に勉強してるんだぜ?底辺のFクラスとしてはな」
自分を底辺と言って蔑む姿には、呆れを通り越して哀れに思えてくる。
僕たちの会話の中、黙ることに耐えかねて新森さんが怒りの表情で坂橋くんに歩み寄る。
「瀬奈っちを返してよ、怖がってるじゃんか‼」
「怖がられる理由がわからないんだよなぁ~。俺、ずっと仲良くしたいって言ってただけだし?」
彼が伊礼さんに視線を向ければ、彼女はビクッと震える。
そんな姿を見て、新森さんの雰囲気が変わった。
パーンっと伊礼さんの横にずっと置いていた手を払い、下から彼を見上げる。
「・・・え?」
「返せ…って言ったよね。あんたの下らない言い訳は聞いてないんだよ。意味……わかる?」
今まで聞いたことが無い、落ち着いていて、低い声だった。
僕の位置からは、彼女がどういう表情をしているのかはわからない。
しかし、坂橋くんは新森さんと目が合い、瞳孔が開いて顔が引きつっているのがわかる。
「何だよ、おまえ…!?」
彼の問いには答えず、目を合わせたまま詰め寄っていく。
それに合わせ、坂橋くんは後ろに下がって行く。
「消えろ…。うちの友達に、2度と近づくな」
落ち着いていながらも、その声に含ませている感情は覇気を放っている。
それに対して、彼は軽口を叩く余裕も無くし、最後に僕を睨みつけて離れて行った。
離れていく坂橋くんを空虚に見つめている新森さんに、伊礼さんが声をかけた。
「……新森…さん…?」
彼女の呼びかけに対し、「ふにゃ!?」と身体をオーバーに弾ませて反応して振り返る。
「いやぁ~、恐かった恐かったぁ~。足がガクガクブルブルだにゃ~」
さっきまでの落ち着いた態度はどこに行ったのか、いつもの調子に戻っている。
しかし、今の手を払うまでの動きの速さ、そして常人では放つことのないような覇気。
一瞬、椿くんに似た何かを感じた。
「そう言えば、瀬奈っち。こんな所で会うなんて奇遇ですにゃ~。何してたん?」
「あ、わ、私は……その……こ、これ…です」
ずっと手に持っていた参考書を見せれば、それは物理の参考書だった。
「私、理科が苦手で……勉強会以外でも、ちゃんと自分でもやらないとって思って……」
「おー!それはグッドタイミングでっせ、奥さん‼今、うちと真央っちで一緒に勉強しようって話になってたんだ。瀬奈っちもどうかにゃ?」
「え、えー!?わ、私もですか!?」
あたふたしている彼女を気にも留めず、僕に顔を向けて無邪気な笑みを向けてくる。
「良いよね、真央っち!」
「あ、はい……僕は別に構いませんよ。1人増えようと、やることは変わりませんから」
その後、押し切られる形で伊礼さんも僕らの勉強会に参加し、理系科目の苦手克服に取り組んだ。
勉強に集中しながらも、時々新森さんに視線がいきがちになってしまう。
一体、さっきまでの彼女は何だったんだ…?
「…?あ、真央っち‼今、うちの胸見てたでしょ!?」
「んなっ!?み、見てません‼」
大声を出すなと注意した本人が、周りから白い目を向けられてしまった。
新森さんに関しては、深く考えるのは止めよう。
振り回されることになりそうだ。
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円華side
試験期間中だが、俺がすることは特にない。
誤解が無いように言っておくけど、最低限勉強はしてる。
クラスの学力向上に関しては、成瀬たちが計画を立てているから何とかなるだろうし、心配はしていない。
気になっているのは、言うまでもなくBクラスの柘榴たちの動向だ。
あれから、金本からの連絡は来ていない。
これが何を意味しているのか。
柘榴がFクラスの方を主軸に動かし、クラスメイトには何も伝えていないと考えるべきなのか。
それとも……。
最悪の場合は想定しておくに越したことは無い。
期末試験まで1週間を切っている。
BクラスとFクラスに関しては、不穏な噂が絶えない。
柘榴の異常さが本領を発揮し、自身のクラスを超えて他クラスにも恐怖を伝染させている。
触らぬ神に祟りなしと言うことで、標的にされているEクラスに手を差し伸べる者は居ないだろう。
今はどのクラスも、自分たちの身を守るので精いっぱいのはずだ。
DクラスもCクラスも、最上位のSクラスもどこかのクラスに仕掛けるという情報は流れていない。
退学がかかっているのに他クラスに攻撃を仕掛けようとするのは、俺に対して並々ならぬ執念を抱いている柘榴以外には考えもつかねぇだろう。
幸い、そのおかげで奴にだけ目を光らせるだけで良いんだけどな。
今日も誰かが、俺のことを監視していたし、まずはそいつの注意を自分に集中させているだけで良いか。
クラスの奴らは今日も、成瀬主催の勉強会を夜遅くまで受けることになっている。
その間に、俺はBCから久しぶりに呼び出され、気が進まないながらも外に出ていた。
アパートを出ればすぐにBCが立っており、手招きしては歩き出して場所を変える。
いつもの人をからかうような態度ではなく、険しい顔を浮かべている。
「何があったんだよ、BC。誰かに見られたくないって配慮を求めたのは俺だけど、それにしたってそんなに不機嫌にならなくたって…」
「そんなんじゃないわよ。ただ、このことは……あなたにとっては重要なことで、万が一にも他人の耳に入ってほしくないだけ」
「はぁ?どういうことだよ?」
並木道のベンチに座り、周りを見ては誰も居ないことを確認するBC。
「流石に、午後8時を過ぎれば誰もここは通らないわよね」
「そんなに警戒するようなことって……まさか、学園側について何か新しい情報でも入ったのか?」
緋色の幻影に動きがあったなら、真っ先に把握しなければならない事案だ。
しかし、俺の予想を裏切り、BCは首を横に振っては持っていた牛革の鞄から1つの大きな封筒を取り出して渡してきた。
「あなたが前に聞いてきた、柘榴恭史郎についての情報よ。この中に、どうしてあなたが彼から目の敵にされているのか、その理由があるわ」
「柘榴の情報って……。やっぱり、俺とあいつは過去に会っているってことか?涼華姉さんも」
「見ればわかるわ。その情報に嘘偽りはない。椿家から取り寄せた、確かな情報よ」
「椿!?……そんな、まさか」
封筒を開けて資料を取り出せば、その中に書いてある内容に目を通して絶句した。
「嘘……だろ…!?」
「残念ながら、真実よ。桜田家はこの件を揉み消すため、全ての資料を燃やしたみたい。だけど、実際に手を下した椿家には、あなたのこともあって忘れてはならない一件として保管してあったみたい。あなたと柘榴恭史郎は、過去……それも10年前から因縁があった。あなたの、初めての復讐の時からね」
そこに書かれていたのは、俺にとっては忘れられない出来事だった。
10年前の桃園家襲撃事件の首謀者、栗原進。
姉さんがその男を殺した光景を、今も鮮明に覚えている。
そして、栗原進には2人の息子が居た。
その内の1人は行方不明になっていたが、もう1人は俺たちが当主を殺したことに拠って孤児になり、児童養護施設に預けられた後は里親の下で育てられていた。
里親の苗字は『柘榴』。
柘榴家は日本中に情報網を張り巡らせている、裏社会の情報屋。
裏の世界でもその存在を知っている者は少ないが、知っている者は確かな情報を得ることができる、情報分野のエキスパート。
その家に預けられた息子の名前は、『栗原恭史郎』
育ての親の苗字を使っているのなら、その名前は柘榴恭史郎になる。
「柘榴が……あの男の……息子…?……っ!?」
栗原家の屋敷で起きた出来事の中で、忘れられない光景はもう1つある。
当時、『希望の血』の力を暴走させて制御が効かなくなり、涼華姉さんが身を呈して止めてくれた時のことだ。
あの時、姉さんは、俺から1人の子どもを守って見逃していた。
「はぁ……はぁ……俺は……あの時…‼」
あまりの衝撃に息が荒くなって蹲ると、後ろからBCが背中を摩る。
「しっかりなさい、円華。今は……過去のことを気にしても、仕方が無いわ。でも、これがあなたの求めていた、柘榴恭史郎の真実なのよ」
柘榴のこれまでの行動を思い返し、奴の不敵な笑みが脳裏に浮かぶ。
俺のせい……なのか、今までの……あいつの、行動、全部…‼
柘榴恭史郎と言う人間を歪ませたのは、俺と涼華姉さんだったってことかよ。
そのせいで、巡り廻って恵美たちを傷つけてしまった。
もしそうなら、俺がするべきことはただ1つだ。
自分のした行いのけじめは、自分で付けなきゃいけない。
柘榴が俺に対して復讐心を抱いた理由はわかった。
それでも……あいつに潰されるわけにはいかねぇんだよ。
大きく深呼吸をして気持ちの整理をつけ、背筋を伸ばす。
「BC……頼む。1人にしてくれ」
「あなた、そんなことを言って、また…‼」
「そうじゃない……。俺にもう迷いはねぇよ。いや……おまえのおかげで、迷いが晴れた」
目に力を入れてBCを見れば、納得してくれたようだ。
肩に軽く手を置いては「じゃあ、またね」と言って離れていく。
それを見送り、もう声が届かないくらいの距離になってから呟く。
「……出てこいよ。放課後からずっと、張り込みの刑事のように見張ってたんだろ?外に出て来なかったら、今夜中に部屋を襲撃するように言われたか?」
監視に気づいてることを指摘しながらも、相手は姿を見せようとしない。
それなら、名指しで言ってやる。
この獣のような鋭い殺気は、1度戦った相手なら忘れない。
「内海景虎」
名前を呼べば、木の陰から内海が姿を現してはニヒっと笑う。
「何だよ、バレてたか」
「当たり前だ。おまえの気配はわかりやすいんだよ」
ベンチから立ち上がり、奴と対面する。
「柘榴の命令で、俺を監視していたのか?前から思ってたけど、おまえが誰かの犬に成り下がるなんて、堕ちたもんだな」
右手の親指を下におろして言えば、内海は青筋を立てて睨みつけてくる。
「うるせぇ…‼全ては、おまえを今度こそ殺すためだぁ‼」
「……もしかしなくても、前に俺に負けたことを根に持ってるのかよ?」
1学期の時のことをぶり返せば、内海は肩を震わせる。
「俺は負けてねぇ。俺は強い‼おまえよりも、弱いはずがねぇんだ‼」
「柘榴の犬に成り下がったおまえに負けるほど、俺も柔じゃねぇけどな。どうせ、これも柘榴の指示なんだろ?」
あくまでも柘榴の手駒として奴を見ていれば、内海は右手を横に薙ぎ払って「ちげえぇ‼」と声を荒げる。
「これは俺の意思だぁ。恭史郎の言う通りにしていたら、俺がおまえを殺せなくなる。その前に、俺が‼今‼おまえを殺して、おまえより強いことを証明するぅ‼」
奴は着ていた制服の上着を脱ぎ、上半身は黒のタンクトップ1枚になって臨戦態勢に入る。
「戦えぇ、椿ぃ‼俺の方が力は上だってことを、思い知らせてやるぜぇ‼」
内海の目は本気だ。
この人通りのない並木道なら、誰にも妨害はされない。
俺が呼び出さなくても、BCが離れたタイミングで仕掛けるつもりだっただろうな。
奴は武器を持っておらず、俺も白華を持っていない。
素手喧嘩での戦闘になる。
上等だ…‼
「良いぜ。俺も今、鬱憤を晴らしたい相手が欲しかった所だ。おまえなら、何の探り合いも無しにぶん殴れる‼」
左手の平に右手の拳を当て、パーンっと甲高い音を響かせる。
俺がやる気になったことが嬉しいのか、内海は瞳孔を開かせて喧嘩の構えを取る。
「俺の強さを、証明するぅ…。椿ぃいい‼‼」
「まずは、おまえを叩く…。内海ぃ‼‼」
俺たちは同時に駆け出し、互いの手を前に突きだした。
や~っと、柘榴くんの経歴を出すことができたぁ。一安心。
次回、椿円華VS内海景虎、バトル・スタンバイ‼
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