表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カオスメイト ~この混沌とした学園で復讐を~  作者: カナト
隣り合わせの文化祭
236/498

果たされる約束

 円華side



 状況だけ見れば、最悪だ。


 周りをヘルメットの敵に囲まれて四面楚歌しめんそか


 目の前に居るのは、異能具使い。


 戦えるのは、俺ともう1人。


 雨水と金本は、こういう状況じゃ巻き込みかねねぇからな。


「雨水、金本、俺たちが道を切り開く。地下を出て、岸野先生を呼んできてくれ」


 この状況でも誰も来ないってことは、おそらく足止めを喰らってる可能性があるな。


 それとも、俺がピンチの状況を面白がって見ているかのどっちかだ。


 しかし、こんなことを言って素直に従う奴らじゃない。


「何を言っている、貴様!?俺はまだ戦えるんだぞ!?」


「やられっぱなしで逃げろって言うの!?ふざけんじゃないわよ、あんた‼」


 反発することはわかっていた。


 だからこそ、俺は後ろを振り向いて冷徹れいてつな横目を向けた。


「足手まといだ。巻き込んで、俺が殺さないとも限らねぇんだぞ?」


 俺の左目を見て、2人の肩が一瞬震えるのが視認できた。


 そして、雨水が納得したのか大きく溜め息をつく。


「はあぁ~……すぐに助けを呼んでくる。それまでは持ちこたえろ、良いな?」


「まっ、助けが来る前に全て終わらせてるかもしれねぇけどな。その時は後処理を手伝ってくれ」


「ふん、減らず口を……。しかし、了解した」


 金本も渋々納得したのか、敵を睨みつけながらも我儘は言わない。


 俺は白華を抜刀し、一翔と目を合わせて頷く。


 そして、同じ方向に刃を向けた。


「椿流剣術、さざなみ‼」


「柿谷流双剣術、螺旋らせん‼」


 2つの衝撃波が飛び、ヘルメットの一部集団が悲鳴をあげながら倒れる。


 そこに道ができ、周りは唖然としている。


「行け‼雨水、金本‼」


 傷ついた2人は全速力で走って行き、すぐに背中が見えなくなった。


 追いかけようとする奴らが出る前に、俺たちが道を塞ぐ。


「良いのかよ。おまえも逃げて良かったんだぜ?こんな状況、慣れてねぇだろ?」


「それは僕のセリフだ。ボロボロだろ?いくら君でも、このままだったら倒れるかもしれないよ」


 一翔の軽い挑発をハンっと笑い飛ばす。


「アホ抜かせ。俺を倒せる奴なんて、今隣に居るアホ真面目しか想像つかねぇよ」


「奇遇だね。僕も自分を追いつめられる相手は、隣に居る偏屈者しか思いつかなかった」


 互いに引き下がるつもりはなく、この場をくつがえすことしか考えていない。


 そして、目線の先に居る鬼の形相をしている正義の味方を見据みすえる。


「つーわけだ、日下部先輩。あんたもゲストを多数参戦させた。こっちは1人増えても、2人減らしてやったんだ。文句は言わせねぇよ」


 軽い感じで声をかけたが、日下部の耳には届いていないのだろう。


 先程の俺の一言に突っかかる。


「誰も見ていないとは、どういうことだ…‼貴様、一体何をした、椿円華‼」


「今ごろ、仲間が真城の今までの悪行を公表して、俺たちの模擬戦どころの話じゃなくなってるってことだ。あんたたちの計画は、もう破綻はたんしている」


 この状況に意味なんてない。


 双方にとっては、何の得にもならない戦いだ。


 それを知ってもなお、日下部から敵意は消えない。


「俺の正義が……誰にも、示されないなんて…‼よくもやってくれた、貴様らぁあああ‼‼」


 異形の槍の中央にスマホを装着し、左右に振り回す日下部。


『アプリ、ダウンロード完了。異能具『ドロージャベリン』は、日下部康則様の武器となりました』


 異能具の力を解放すれば、周りのヘルメットどもが懐から照明弾を取り出してジャベリンの刃に被弾させる。


 そして、その光を刃が吸収した。


「これが……正義の光だ‼」


 ジャベリンを俺たちに向かって振り回せば、光の斬撃が飛んでくる。


「マジかよ!?」


 左右に分かれて飛び込み、斬撃は後ろの瓦礫がれきに被弾して吹き飛ばす。


 何つぅー威力だ。


 立ち上がる前にヘルメットたちが、俺と一翔を分けて囲む。


「どうする?伝説の暗殺者。こういう状況は、君の方が慣れてるんだろ?」


「俺にアドバイスを求めるなんて、頭でも打ったんじゃねぇの?」


「……違いないな。別に君の言葉を聞かなくても、やらなきゃいけないことはわかっている」


「だったら聞くんじゃねぇよ」


「君がおくしていないかを確認したかっただけだ」


「そんなわけあるかよ……」


 互いの顔は見えないが、それでも俺は刃を上にかかげて横目を向ける。


 そして、深呼吸してから言った。


「こいつらを片づけたら……一発、ぶん殴らせろ」


「えっ…!?」


 一翔の動揺するような声が聞こえたが、それを無視して俺は目の前のヘルメットに切り込んだ。


「椿流剣術、瞬突しゅんとつ‼」


 中段構えから間合いを一気に詰め、腹部に一点集中の突きをくらわせる。


 1人が突き飛ばされたのを皮切りに、数人が警棒やナイフを持って襲いかかってくるが、その場で跳躍ちょうやくして横に回転して白華を振るう。


「回天‼」


 氷の刃でとらえたヘルメットの胴体をまとめてぎ払い、1人の頭部を踏んでさらに跳躍する。


 そして、両手で柄を握れば剣先を地面に向けて1人のヘルメットに振り下ろせば、重力を乗せた刃の衝撃の余波で周りの敵の体勢も崩れる。


 揺らいだ隙を見逃さないのが、暗殺者の鉄則だ。


 床に足が着くと同時に、白華を鞘に納めてデュアルモードに切り替える。


 抜刀すると同時に、2本の短刀で囲んでいたヘルメットたちを切り伏せた。


「やっぱり……最高速度からは、落ちてるな」


 全盛期からのおとろえに嘆きそうになると、ヘルメットが飛んできて右手の短刀で切り払う。


「あっぶねぇな、おい」


「注意不足だった君が悪い。流れ弾だったら、言い訳すらできずに死んでいただろうね」


「仲間の弾に当たるようなヘマするかよ、アホが」


 ヘルメットの包囲から脱出できていない一翔を見て、フンっと鼻を鳴らす。


「助けてやろうか?アホ真面目」


「ふざけるな、偏屈者‼」


 あおるように言えば、一翔はイラついた顔になって双剣を構え直す。


 そして、静かに呟いて一歩踏み込んだ。


「柿谷流双剣術……」


 一翔の姿が目の前から消え、ヘルメット1人が倒れては双剣を切り上げた体勢のあいつが立っていた。


霧鏡きりかがみ


 双剣を下ろせば周囲のヘルメットも同時に倒れてしまう。


 異能具で身体能力が補強されてるって言っても、俺が辛うじて目で追えた程度だ。


 しかも、あいつが周囲に居た敵の前に分身したように同時に現れ、鏡のように同じ動きで切り上げたようにも見えた。


 それは高速と呼ぶべきなのかどうかすらも危ういほどの素早さだった。


 周囲の敵を切り伏せ、ゆっくりと体勢を戻す一翔。


「君を超えるために、ひたすら己の剣を鍛え上げてきた。この程度の窮地きゅうちを乗り越えられないと思っていたなら、心外だ」


「……まっ、この前初めて俺に引き分けることができたんだから、当然なんじゃねぇの?」


 俺たちは視線の先に居る日下部と、まだ残っているヘルメットの集団を見る。


 今倒したのが実動部隊なら、まだ残っているのは日下部を支援するためのサポート役だろう。


 それでも、数が多いと厄介だということに変わりはない。


 少なくとも、今の俺1人で覆せるかどうかはわからなくなってきた。


 異能具と謎の能力が未知数である以上、どこまで太刀打ちできるかもわかんねぇ。


 この中で取れる手段は限られてくる。


「なぁ、一翔。おまえ、俺と協力する気ある?」


「誰が君みたいな偏屈者と。僕1人でも大丈夫だって言ったはずだ。君と手を取り合うなんて、お断りだね」


「そうだよな、そう言うと思った。だけどさ、おまえの言う君って、過去の俺のことだろ?」


「……過去?ふんっ、今の自分が変わったって言うなら、証拠を見せてみなよ」


 挑発してくる一翔。


 あいつは俺を試してる。


 どう見ても最悪な状況で、切り抜けるには方法は1つしかないとしても、ここで頑固に自分の意志を貫き通そうとするのが、余計にイラつかせる。


 2本の短刀を鞘に戻し、ソードモードに戻して右手を空けて拳を握る。


 こんな時に、何を思い出してるんだろうな。


 俺はあの時、何度もこいつに殴られた。


 あいつは、約束を守ってくれた。


 だけど、俺は守れなかった。


 脳裏に浮かぶのは、幼少期の記憶。


 涙を流す一翔。


 精一杯の笑顔を見せてくれた蒔苗。


 涙越しに映る3人で結んだ小指と、最後の約束。


 あの時の2つの約束を―――果たす。


「一翔……歯を食いしばれ‼」


 俺は容赦なく、力を込めて、一翔の左頬に拳をめり込ませた。


 あいつは俺の拳に耐えて踏ん張り、頬を押さえる。


 かわそうと思えば避けることはできたはずだ。


 それでも、一翔は受けることを選んだんだ。


「あの時、おまえ何発も殴ってきただろ。その分、今の一撃で倍にして返したつもりだ。……これで、十分か?」


 前髪で顔が隠れており、どんな表情をしているのかはわからない。


 だけど、次の瞬間にはフフっと笑い、一翔は髪をかき上げた。


 視界に映った顔は、とてもすが々しいものだった。


「ずっと、君のことが許せなかった。君は2つの約束を破っていたから。でも、その内の1つを僕も破っていた。だから、僕自身のことも許せなかったんだ。だけど、今……2()()には、許された気がしたよ」


「……俺もだ」


 10年間も待たせてごめんな。


 もう、大丈夫だ。


 儀式は終わり、日下部を見据える。


「茶番劇に付き合わせて悪かったな、日下部先輩」


「そのお礼として、全力でお相手させていただきます。僕たち…2人で‼」


 俺たちは背中合わせに立ち、互いの得物の刃を敵に向ける。


 それを挑発と受け取ったのか、日下部の眉間にしわが寄ってジャベリンをでたらめに振るう。


「おまえたちは悪だ……。才王学園の椿円華……その悪にくみする柿谷一翔‼おまえたちは、俺が粛清する‼俺のぉ……正義の名の下にぃいいいい‼‼」


 斬撃を飛ばしながら迫ってくる日下部。


 俺たちも同時に駆け出し、一翔が前に出て双剣で斬撃を切り払う。


 距離を詰めては跳躍し、俺が鞘を使って足場を作ればさらに上に跳んでいく。


 上に行く一翔に注意が向いている隙に、俺は下段構えから白華を振り上げる。


「椿流剣術、つばめ返し‼」


 隙を突いたとはいえ、反応速度が高い。


 すぐにジャベリンで防御される。


 しかし、これは想定済みだ。


 日下部との力勝負では、俺に分が悪いことはわかってる。


 だから…‼


「柿谷流双剣術……はやぶさ落とし‼」


 一翔が背後に落下すると同時に、双剣を振り下ろして両肩を強打する。


「ぐがぁぐっ‼……まだだぁ‼」


 ジャベリンで振り払い、俺たちを離れさせては頭上に掲げる。


 ヘルメットがさらに閃光弾を投げてはジャベリンの刃に光を吸収させた。


 そして、そのまま頭上に上げたまま回転させ、光の斬撃を乱れ撃ちしてくる。


「悪はぁ……光の力で浄化してやるぅううう‼」


「あなたのくすんだ光なんて、御免だ‼」


 双剣で斬撃を防御しながら近づき、一翔は言葉を続ける。


「日下部先輩、あなたの歪んだ独善なんて、誰も必要としていません‼」


「何を言う!?おまえとて、他者に正義を振りかざしている‼何が違う!?俺は全ての者に、正義を認めさせる‼おまえは、何のために正義を語る!?」


「僕は自分が正義だなんて思ったことは、1度もない‼」


 懐に近づいて右手の模擬刀を振るうが、ジャベリンで払われる。


 その時、モードを切り替えたのか、日下部の武器の両端から光のむちが伸びていた。


「誰からも認められ、あがめられる存在‼それが絶対的な正義だ‼誰もに否定されながら、おまえは何を望んで戦うんだ!?」


「正義なんて関係ない‼僕は、僕が正しいと思ったことに従う‼みんなを助けたるために‼それで誰かに否定されても、嫌われても、僕は間違いを正し続ける‼僕の信念を貫くために‼」


「そんなもの、おまえこそ独り善がりな正義じゃないか‼俺と何ら変わらん‼」


 ジャベリンと模擬刀はぶつかり合い、互いに言葉を交わす一翔と日下部。


 1人は正義を語り、1人は信念を語る。


「全然違うだろうが‼」


 その中に、俺も参戦する。


 白華を背後から振るうが、それを光の鞭で防がれる。


「正義を語る者だけが、誰かに手を差し伸べられるわけじゃない‼一翔は、あんたとは違う‼自分が嫌われようと、目の前の誰かを助けたいと思っている‼そのためだったら、どんな困難にも立ち向かう覚悟を持っている‼」


「誰にも認められない行動など、何の意味もない‼そんなもの、偽善だ‼」


「誰かに認められることしか考えてねぇあんたには、一生わかんねぇよ‼」


 渾身こんしんの一撃で光の鞭を払い、一翔と目を合わせて同時に頷いて跳躍ちょうやくする。


「一翔、合わせろ!!」


「ああ!!」


 俺たちは何度も戦ってきた。


 剣を握らせれば、動きはもうわかっている。


 だからこそ、互いの使う技もわかる。


 2つの剣を合わせられる。


「椿流剣術……」


「柿谷流双剣術……」


 俺は宙で縦に回転しながら、一翔は横に回転しながら落下し、互いの剣を振り下ろす。


 椿流剣術の『天落』と柿谷流双剣術の『落星』を掛け合わせた剣技。


「「合技ごうぎ 双流星そうりゅうせい‼」」


 日下部はジャベリンを上段で構えて受け止め、そのバカ力で振り払おうとする。


 しかし、2つの技を受けて異能具がメキメキと悲鳴をあげる。


「バカな!?正義の槍が、悪の……偽物の正義に負けるはずがぁあああああ‼‼」


 俺たちの技に怯んでしまい力が抜けたのか、威力に圧されて吹き飛ばされる日下部。


鬱陶うっとうしい偽善が、迷惑な独善に勝てないなんて誰が決めた?」


 奴を見据えながら、俺たちは並んで立つ。


「俺は……正直、鬱陶うっとうしいと思うけどさ。良いと思うぜ?こいつの偽善。あんたの自己満足の正義よりも、100倍マシだ」


「円華……」


 目を見開いて驚いてる一翔のことは気にせず、1歩前に出て日下部に言葉を続ける。


生憎あいにく、俺も偽善者でさ。あんたの切羽詰せっぱつまったような正義よりも、幼馴染の慈善活動の方がしっくりくるんだわ。……ぶっちゃけ、わずらわしいけど」


「一言余計だ‼」


 頭を思いっきり殴られた。


 赤眼を発動しているのに地味に痛く感じたのが不思議だ。


 今の攻防で体力を消費したのか、それとも俺たちとの会話で怒りが増したのか、日下部は後ろのヘルメットたちに向かって叫ぶ。


「正義は……示さなければ、認められなければ、ならない‼全ての閃光弾を使いきれ‼次の一撃で終わらせてやるぅううう‼」


「「はっ!」」


 その声に応え、ヘルメットたちは大量の閃光弾を投げて刃に吸収させる。


 許容量を超えているのか、ジャベリン自体が光っている。


 正真正銘、最後の一撃ってことか。


 それを冷静に見て、一翔が言う。


「円華……日下部先輩のこの一撃は、僕が止めるよ。そして、先輩を正義の呪縛から解放する」


「……できんのか?」


「そのための奥の手はある。だけど、純粋な力比べで勝負したいんだ。だから、君の力を…貸して欲しい」


 一翔の目から強い覚悟を感じる。


 ここで「勝てるのか?」と聞くのは、野暮やぼだろ。


「わかった、取りはおまえにやる。おまえのデタラメな動きに合わせてやるから、何も考えずに剣を振るえよ、アホ真面目」


「ふんっ。君が僕に合わせるんじゃない。僕が君の捻くれた思考に合わせてあげるんだ。感謝しろ、偏屈者」


 互いに悪態をつきながらも、口元は笑っていた。


 一翔と日下部を一騎打ちにさせる。


 ヘルメットどもの妨害がないとも限らない。


 だったら、理想の状態は1つしかない。


「行くぞ‼」


 俺が先行して走りだし、日下部の注意を引きつける。


 ヘルメットも懐からマシンガンなどの遠距離武器を取って構えて撃ってくる。


 白華をロッドモードに変え、回転させて弾を外す。


「椿流棒術、弾外‼」


 銃弾を防いではヘルメットどもに跳ね返り、肩や脚に被弾して身もだえる。


「椿ぃぃい円華ぁああああああ‼‼」


 光のジャベリンは伸長されていき、攻撃範囲が広くなり、見た目から強力な一撃が来ることは予想がつく。


 地上でぶつかれば、余波が伝わって地下が倒壊するかもしれない。


 そうなる前に、先手を打つ。


 白華をソードモードに戻し、抜刀して両手で中段構えを取る。


 そして、刀身で横から薙ぎ払うように大振りで白華を振るった。


 空気に強い衝撃が走り、突風が発生する。


 風は日下部の身体を包んで宙に浮かせた。


「何っ…!?」


「椿流剣術……舞風まいかぜ


 空中なら、思いっきり暴れられるだろ。


「行け、一翔‼」


 一翔は俺の右肩を踏み台にして跳躍し、日下部に接近する。


 その時、対の双剣を重ねて両刃の長剣へと形状を変える。


 両手と両足のリストバンド、そして首から下げているスマホが青く光り出す。


「日下部先輩、僕はあなたのことを尊敬していました。あなたのように、真っすぐに誰かを導ける存在でありたいと思い、日々精進を続けてきたつもりです。ですが…‼」


 その光が弱まっていくのと比例して、刃は同色に輝く。


「僕はあなたという正義を超え、自分の信念を貫き通すことを決めた‼だから、この一撃に全てを込める‼」


 両手で柄を握り、下段構えから振り上げる。



「振り払え、村正むらまさー‼‼‼」



 青い光の刃は、白いジャベリンと激突する。


「光の裁きを受けろ……柿谷一翔ぉおおおお‼‼‼」


「あなたの正義を超える‼‼日下部康則ぃいい‼‼」


 2つの光の一撃は互角。


 両者の実力は拮抗きっこうしていた。


 しかし、武器の耐久力は火を見るよりも明らかだった。


 ドロージャベリンはひびが入った所から崩壊していき、バキンッ!と中央から折れた。


 そして、そのまま自らの光のエネルギーに耐え切れずに自壊していく。


 羽々斬の刃は日下部の胴体を捉え、斜めに薙ぎ払う。


「ぎぃゃやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼‼‼」


 目を見開き、断末魔の顔で切り上げられた奴の身体は地下の天井に衝突して振動を起こし、そのままゆっくりと落下していった。


 2人の攻防の間にヘルメット軍団を片づけていた俺は、倒れている奴らをせっせと雑に投げて積み上げてはクッション替わりにして受け止めさせた。


 いやー、無駄に人数だけ居て良かったわ、マジで。


 それにしても……。


 床に着地した一翔と、天井にできたくぼみを見ながら苦笑いを浮かべてしまう。


「お、おい……一翔、おまえ……これぇ……」


 流石に奥の手と言うだけはあって、強力な一撃だった。


 しかし、これはぁ……やり過ぎだろ!?


 心の中でツッコミを入れていると、一翔はふらふらになっていた。


 倒れる前に身体を支えれば、模擬刀を手放して俺に身体を預けた。


「この技を使うと……体力のほとんどを持っていかれるんだ。だから、立っているのも……辛い」


「……ったく、無茶しやがって」


 溜め息をついては一翔を背中に背負い、日下部を見る。


 ヘルメット共のクッションのおかげで死んではいないようで、息はしている。


 しかし、一翔のさっきの一撃で気を失ったみたいだ。


 これじゃあもう、勝負も何もあったもんじゃねぇな。


 とりあえず、ほとんど誰も見ていない文化祭注目のイベントの結果を独白で伝えようか。


 才王学園VS阿佐美学園の模擬戦。


 いろいろとイレギュラーはあったものの、一応は―――。


 勝者、才王学園。

感想、評価、ブックマーク登録、いつもありがとうございます。


円華と一翔の過去も決着を迎えました、やったー‼

あぁ~、こういう展開を書くためにどんだけ時間かかってんだよ、作者(自分)。


これで事件は一見落着。

ですが、このままうやむやに終わるわけにはいかない……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ