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カオスメイト ~この混沌とした学園で復讐を~  作者: カナト
底辺からのプロローグ
23/509

暗闇の表面

 テスト期間に入り、放課後はすぐに寮に帰るクラスメイトたち、そんな中、成瀬が珍しく俺に話しかけてきた。


 それも睨むように、席に座っている俺を見下している。


「椿くん、ちょっと時間を作りなさい」


「な、何故に命令口調?」


「私は今、凄く機嫌が悪いの。察してちょうだい」


「見るからに不機嫌なのはわかるが、それでクラスメイトに上から目線で命令するのは感心しないな。何かあったのか?」


 教材やノートをリュックサックに入れながら聞くと、成瀬は手を机にバンっと置いて目を細めて俺を見てくる。


「私の詮索せんさくはしないで。機嫌が悪いのは、ストレスによる寝不足ってだけよ」


「そうか。それで、時間を作って何をさせるつもりだよ?」


「期末テスト期間中だから、勉強会を開こうと思うの。主に赤点候補の赤点回避を狙うわ」


「そこにどうして俺?俺が教えられるのは保健体育だけだぜ?」


「保健なんて、思春期の子なら誰でも満点取れるわよ。あなた、私たちが受けた中間テストが全教科満点だったんでしょ?なら、当然期末テストも主要5教科も満点を狙えるわよね」


「当然の意味はわからないが、狙えと言われたら狙えるかもな」


「じゃあ、狙いなさい。そして、その頭を活かして、クラスの赤点を0人にするわよ?良いわね!!」


 何故か必死な成瀬のことを頬をかきながら見て、俺は溜め息をつく。


「おいおい、詮索する気はないが、ちょっと熱が入り過ぎじゃないか?」


「当たり前よ。この期末テストは、クラスの順位によってクラスのランクがアップもダウンもするの。…私は、このクラスのみんなと上に上がりたいのよ。だから、手を貸しなさい」


「…大した理想だな。だが、残念ながら今日は昨日から先約せんやくが厄介な女から入っているんだ。悪いが、麗音とか他に頼ってくれ」


「住良木さんはもう予約済みよ。私と住良木さんとあなたで、赤点候補の川並くんや狩野くん、入江くん、新森さんに付きっきりで指導するから、先約があるなら、遅くても6時までには戻ってきなさい!!」


「悪いけど~、何時に終わるかは私にもわからないわ~」


 俺は、その声を聞いた瞬間に頭に電気ショックを流されたような衝撃を受け、震えながら教室の入り口を見ると、生徒会長の桜田奏奈が「ハァ~イ、円華」と手を振ってきた。


 すぐに席を立って奏奈に近づき、怒りを露わにして睨みつける。


「おい!エレベーターで待ってろっていう伝言は聞いたけど、教室に来るなんて聞いてねぇぞ!!」


「え~、だって、放課後になって10分経つのにエレベーターに来ないから~、お姉ちゃん迎えにきたんじゃな~い」


 教室に残っているクラスメイトが、俺と奏奈を見てザワザワとし始める。


 すると、奏奈はみんなに向かって完璧な営業スマイルを見せる。


「どうも、Fクラスのみなさん。椿円華の姉で、生徒会長の奏奈で~す。弟がいつもお世話になってま~す」


「お、おい、B…奏奈!!」


「も~、お姉ちゃんを呼び捨てにしないの。ほらほら、さっさと行くわよ~」


「あっ、こら、引っ張るな!!」


 片手に両腕を回され、奏奈に引っ張られる。


 その時に、奏奈の胸が俺の二の腕に当たり、それを見て男子が基樹を含めてねたみの目を向けてくる。


「「椿、とりあえず死ねばいいのに!!」」


 教室から出る時、一瞬麗音と成瀬に助けを求める視線を送るが、何か不機嫌な表情になって目を逸らされた。


 男子も女子も、とりあえず俺を見て不機嫌になっているのはわかる。


 な、何で怒ってるんだ、あいつら!?


 そのままの体勢でエレベーターまで連れて行かれ、中に入れば強引に手を離す。


「暑苦しいんだよ、今は夏だぞ?」


「そんなに怒らなくても良いじゃな~い。今回の謁見えっけんの場を作ったのは私でしょ~?」


「…はぁ、それについては感謝してるっての。だけど、おまえはもう、俺の姉じゃないだろ。名字みょうじが違うのに姉弟って言われても、あいつらは混乱するだけだ。後で指摘してきされる俺の身にもなれ」


「悪かったわよ~、だけど、円華がお世話になってる子たちなら、挨拶あいさつしておかなきゃじゃない?お姉ちゃんなんだからね」


「全っ然わかってねぇよ、こいつ…」


 もうあきらめて溜め息をつけば、奏奈は俺の黒髪を見る。


「髪、いつまで黒に染める気なの?アメリカでは染めてなかったって、おじさまからは聞いたけど?あなたの綺麗な茶髪、私は好きなんだけどな~」


「アメリカはアメリカ、日本は日本だ。黒髪の方が真面目に見えるだろ」


「…そう言って、怖いだけなんでしょ?本当の自分が何なのかを気づかれるのが」


「力を使わなければ大丈夫だ。それに、使うとしても眼帯をしてからにする…バレることはないさ」


「…気を付けることね」


「言われるまでもねぇよ」


 話が終わると、エレベーターは止まり、地上の校舎に着いたようだ。


 ドアが開けば2人でり、奏奈に学園長室まで案内される。


 そして、扉をノックして奏奈が「私です、桜田でございます」と言えば、中から男の低い声で「入りたまえ」と返ってくる。その言葉に従って扉を開け、奏奈の後ろから俺が入る。


 中には、豪華な黒いソファーが2つ、低いテーブルを挟んで対面で並んでおり、着物を着た白髪の初老の男が腕を組んで座っていた。


 奏奈は前まで行って一礼すると、初老の男は彼女を見て「…2人だけにさせよ」と言い、それに従って部屋を出て行った。俺のことを1度も見ずに。


 それが、この男がどれほどの力を持っているのかを直感させた。


 男は俺のことを見て「そこに座りなさい」とソファーに促し、そのまま座る。


 対面すると嫌でもわかるな。この男の、この学園の長としての覇気はきが。


「お主が、椿円華か。私がこの学園の長をしている、成瀬伊蔵なるせ いぞうと申す者だ」


「どうも……。成瀬…って、ことは、もしかして…」


「うむ、我が孫、瑠璃が世話になっているな」


「な、成瀬のお祖父じいさん…ですか」


 確かに、目付きの鋭さが成瀬と似てるなぁ。


「…して、君は私に何用なにようかな?」


「その…あーっと……ですねぇ…」


 ヤバい。こんな時に、覇気に圧倒されて言葉が上手く出てこねぇ…。ここに来たのに…!!


「くどくど話されるのは好かん!!男なら、単刀直入に申してみよ」


「は、はい!!」


 返事をすると同時に背筋を伸ばし、少し胸を張る。


 よし、これで少しは話せる。


 俺は深呼吸して話を切り出した。


「学園長は、この学園の教師だった俺の姉、椿涼華つばき すずかと言う人物に心当たりはありますよね?」


「うむ。2年前にここで教師をしてくれていた女性だな。それが、私との対話とどう関わるのかな?」


「俺は姉の死の真相を知りたいんです。知っていることがあるなら、教えてくれませんか?」


 真剣な目で訴えるようにして聞けば、学園長は目を閉じて「う~む」と唸り出す。


 その表情からは、何も読み取れない。


「すまないが、その話に入る前に、君のこれまでの行動を振り返らせてほしい。君は、ずっと姉の死の真相を知っているだろう者を、自分をおとりにしてあぶり出そうとしていた…違うかね?」


「流石は学園長ですね、その通りです」


「監視カメラの映像で、失礼ながら君の動向を時々確認させてもらった。君が最初に動いたのは、転入2日目の決闘の時。あの時に、我が孫を利用して自身のデータをハッキングさせ、それを全校生徒に転送した本当の目的は、椿先生の弟が復讐に来たと言うことを知らせるためだった。しかし、肝心の志望動機の部分が稲美によって隠され、それも効果が無くなった。本当は、あの志望動機を全員に見られる必要があったのではないか?」


「…はい。椿って名字だけじゃ、犯人は釣れないと思ったので」


「そうだな。そして、次に利用したのはクラス対抗人狼ゲーム最終日での、大胆な他クラスへの挑発。あれは、体育館の監視カメラや教師に自分を見せることで、教師の中や生徒会に自分を危険分子だと思わせることができる。そうすれば、犯人への警告になると判断した。自分は、目的のためなら誰でも敵に回せるぞ…っとな」


「すいません、学園長は神眼しんがんでも持ってるんですか?見透かされ過ぎて恐いんですけど」


「すまん、若いときから観察眼は優れているのでな。それに、若人わこうどの考えが読めぬほど、私の力はおとろえてはおらんよ」


 自身のあごを触って口元が笑む学園長。


 笑ってるつもりなのだろうけど、少し怖い。


「して、人狼ゲームの本質については、どこで確信が持てたのだ?私も、あれは君が言うまでは気づかなかったものだ。発想力が優れているのだな、君は」


「とんでもありませんよ。生徒会長の気まぐれな助言のおかげですし、俺は1つのことを確認しただけです」


「1つのこと?」


「はい、役職が占い師だった女子に、占いの方法を聞いただけです。投票方法のところから、疑問はあったんですよ。投票者とうひょうしゃの名前を書いて、人狼だと思う者の名前を書く。おかしくないですか?普通、人狼だと思う者だけの名前を書けばいいだけなのに、わざわざ投票者の名前も書かなきゃいけないなんて」


「ふむ、そこに目を付けたか。注意深い」


「だから、俺は生徒会長の助言を聞いた後から仮説を立てたんです。投票者の名前を書くのは、ほかのクラスの生徒に投票した場合にどこのクラスの生徒かがわかるようにするためじゃないかって。そしたら、占い師だって他のクラスの人狼が誰なのかも占える方法になっているはずだ。だから、うちのクラスの占い師に聞いたんです。『占いの方法は、自分の名前と調べる者の名前を両方書かなきゃいけないんじゃないか』って。それが当たってたから、見抜けたんです」


「そうか、君は並外れた思考力の使い方をしているようだ。普通の生徒はそこまで考えんだろうに。優れた人材だな」


「そんなことはないですよ。特殊な環境で育ったから、疑い深くなってるだけです」


 30秒ほどの沈黙が流れると、学園長は組んでいた腕を離し、両手をパンッと鳴らす。そして、目付きが変わった。


「それでは本題に入るとしようか、椿くん」


「…はい」


 俺も、深呼吸して目を細めて聞く態勢に入る。


 すると、学園長は俺に向かって頭を下げた。


「すまんが、今の君には核心的なことの一部しか話せないのだ」


「…え?」


「涼華くんは優秀な教師だった。生徒にも親しく接し、愛される存在だった。しかし、この学園の闇について知ってしまった。…だから、殺されてしまったのだよ、緋色の幻影に」


「緋色の……幻影?」


 緋色の幻影。聞いたことのない名前だ。


「緋色の幻影とは、この世界の富豪ふごうたちが自身の狂った娯楽を楽しむためだけに作った組織だ。かつて、彼らは自分達の資産で人工島を作りだし、死んでも良いと思われている人物を選抜せんばつし、デスゲームをさせていた。20年前に、その組織はデスゲームの生存者たちによって潰されたはずだったのだが…それは世界に存在する組織の半分だけだったのだ」


「な、何ですか…それ?それと涼華姉さんが…何か関係があるんですか!?」


「…すまん、本当にすまない。私からは、これ以上のことは何も言えん……言えないのだ」


 腰を丸めてうずくまる学園長を見て、これ以上聞いても、本当に何も答えてくれないのだろうと確信した。


 いや、答えられないと言った方が正しいかもしれない。


 俺は手を組んでひたいに押し当てる。


「学園長……1つ、聞かせてください。その涼華姉さんの生徒だった人たちは……今、どうなったんですか?」


 1つの考えが頭を過ぎり、問いかける。


 それに対して、学園長は重々しい口調で答えた。


「消されたよ……組織の手によってな。少なくとも、私は全員始末されたと聞いている」


 だったら、手がかりは何もないのかよ。


 涼華姉さんが2年前に何をしたのか、何がしたかったのか、その痕跡こんせきを辿ることもできねぇのかよ!?


「学園長…。この学園も、その姉さんを殺した緋色の幻影と関係があるってことですよね?その狂った人間どもの娯楽に、俺たちは付き合わされてるってことですか!?」


「そうだ。誰にも知られてはいないことだが…君には…大切な人を奪われた君には、知る権利がある。君は、この学園から退学した者がどうなったか…わかるかね」


「どういう意味ですか?…まさか!」


 最悪な予想をしてしまった。そんなこと、普通は起きることなどありえない。


 しかし、これが狂った金持ちどもの道楽の一部なのだとしたら…!!


「そう…その者たちは緋色の幻影の手の者によって、全員殺されたのだよ」


 この才王学園は、確かに所々でおかしな部分は合った。


 精神を壊すほどの苦痛を与えることが暗黙のルールの決闘。階級制度による差別。そのほかにもいろいろと。


 今思えば、能力点と同時に贈られる現金はどこからの支給だったんだ?緋色の幻影からの資産だろ。


 にわかには信じられないが、それがこの学園の真実。


 ここは退学=死を意味する、生と死が交錯する学園だったんだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 「投票者の名前を〜」のくだりで鳥肌が立ちました。洞察力と発想力がずば抜けてますね。面白いです。 [一言] 「緋色の幻影」は流石にw
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