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カオスメイト ~この混沌とした学園で復讐を~  作者: カナト
隣り合わせの文化祭
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混乱の引き金

 ???side



 クイーンさんが入室しました。


クイーン「キングとジャックがかれてしまった今、このチャットルームも少し悲しくなってきたわね~」


 ジョーカーさんが入室しました。

 エースさんが入室しました。


ジョーカー「思ってもないことを言うものだな、クイーン公。我が友が召された今、貴公は充分に羽根を伸ばせると思っているのではないかね?」


エース「キングの意志は俺が引き継いでいる。必ずカオスは俺が殺す」


クイーン「あらあら、エースは殺伐としているわね。敬愛しているキングの死を目の前で見たって話だし、無理もないかしら♪」


ジョーカー「今の彼を刺激するのは得策ではないよ。時にクイーン公、合同文化祭が行われる今、貴公が動くには絶好の機会ではないのかね?」


クイーン「あら?何の話かしら?道化師さん♪」


エース「女狐が動くには最適の場だと言っているんだろうさ。阿佐美には貴公のお気に入りの人形が居るからな」


ジョーカー「エース公の言う通り。貴公がカオスの品定めをしようとしているのであれば、この文化祭は良い舞台となると思ってのことだ。私の見解では、既に水面下で動いていると思っていたが、どうであろうか?」


クイーン「さぁ?どうでしょうね。でも、お祭りみたいな舞台は好きよ。最近は私の出番を坊やに譲ってたから、2学期が終わる前に遊ぶのも悪くないわね。気分転換の意味で♪」


エース「貴様の人形劇でカオスがどこまで踊れるか、見物させてもらう」


ジョーカー「私も楽しみにさせてもらおう」


クイーン「うふふ、2人とも傍観者で居てくれるのね。だったら、私の好きにやらせてもらうわ。私なりのや・り・か・た・で♪」


 私はチャットを閉じてパソコンをシャットダウンし、スマホを確認しては黒い笑みを浮かべる。


 柘榴恭史郎は動かないように釘を刺しておいたし、他のポーカーズも今回は傍観者で居る様子。


 ジョーカーが言う通り、既に人形は動きを見せている。


 私が環境を整えたことによって、着々と自身の快楽に忠実に行動しているみたい。


 机の上に置いてある小瓶こびんを手に取り、中に入っている赤黒い液体を振りながら見る。


「あの方から与えられた絶望を振りまく厄災のしずく。サンプルとしては持ってこいの実験体だったわ、人形の意味でも……」


 交友を深めるなんてくだらないわ。


 相容れない存在が分かり合えるなんて、そんなのは上辺うわべだけ。


 小さなきっかけを与えれば、亀裂はすぐに広がっては崩壊していく。


「合同文化祭……私が面白くしてあげるわ。楽しみなさい……カオス?」


 私は壁に貼ってある椿円華の写真にダーツを突き刺し、笑みを浮かべる。


 見ていると本当に、腹が立つくらいに面影がある。


 私を屈服させて利用したあの男に。



 ーーーーー

 円華side



 会場での準備は滞りなく進んでいき、どこのクラスも準備は残りはあと少しと言ったところだ。


 やっと、他の生徒とは違い7時近くまで拘束される実行委員から解放されると思っていた、ある日。


 俺たち実行委員がバスでドーム会場に着いて中に入れば、才王側、阿佐美側問わず様子がおかしかった。


 阿佐美側のエリアの1つの部屋に人だかりができており、制服を見る限り2つの学園の生徒が入り乱れている。


 俺も何が起きているのか確認するために進もうとすると、岸野先生に肩を掴まれて後ろに引っ張られた。


「待て、椿。こういう時は教師の仕事だ。実行委員は騒ぎを止める手段を考えろ」


「りょ、了解」


 担任に促されるままに野次馬の後ろで落ち着くように声かけしても意味はない。


 どうすんだよ、この状況……。


 数が多すぎて、体育会系の教師でもまとめきれないぞ、絶対。


 そんな中、進藤先輩がイベントホールのマイクを持ってきては電源を入れて前方の野次馬に呼びかける。


「全員、静粛せいしゅくに」


 マイクの大きな音で野次馬はすぐに静かになり、先輩の方に視線が集中する。


「今、先生方が対応していらっしゃる。その邪魔をしないよう、各生徒はクラスごとに所定の場所で準備作業を続けてください。問題を把握し次第、みなさんに情報を提供するためご理解を願います」


 冷静にそう言う進藤先輩の号令に従って、まず最初に動いたのは才王側の生徒だった。


 彼の実力に裏付けされている信頼から、生徒は何の疑いも反発もなく行動に移ったのだろう。


 そして、その隣でマイクを借りて日下部も唖然としている阿佐美側の生徒に呼びかけた。


「阿佐美学園の生徒に通達します。才王学園と同様にクラスごとに戻ってください。事態を把握し次第、実行委員と先生方が何とかするから、みんなは安心してそれぞれの出し物に集中してくれ」


 彼の言葉を聞いて、阿佐美学園側も言われた通りに行動に移った。


 それぞれの学園で認められている存在だからこそ、鎮静できたと考えるべきか。


 そう言う事なら、内の場合は生徒会が出てきた方がもっと影響力があると思ったけど……BCたちは居ないのか。


 生徒会は生徒会でやるべきことがあって、だから実行委員なんて役割が創設されたはずだ。


 だったら、何が起きているのかはわからないけど、俺たちの仕事になるんだろうな。


 野次馬が集まっていたのはAクラスの部屋で、中に入ればあまりの惨状に目を疑った。


 まるで強盗と争ったような現場だ。


 準備されていたのは、アクセサリー店だったのだろう。


 指輪やネックレスなど、多くのアクセサリーが床に壊れて散らかっており、用意された装飾品なども破られていて使い物にならない。


「これは……一体、誰が…!?」


 一翔が信じられないという顔で立ち尽くしている中、俺は横を通り過ぎる形で部屋に入って被害状況を確認する。


「その誰かを探すのが、俺たちの仕事だろ。棒立ちしてる暇があったら動け、アホ真面目」


「わ、わかってる」


 俺に言われ、ムキになりながらも壊れた備品などを見て修復可能かを確認し始めた。


 少しは動揺するから立ち直ることはできるようになったみたいだな。


 進藤先輩と日下部はAクラスの生徒を慰めながら、さりげなく事情聴取を始めた。


 女子生徒の1人が、涙を拭いながら言う。


「私たちが来たら、もう模擬店がこんなになってて……。せっかくっ……せっかく、ここまで頑張ったのにぃ…‼」


 文化祭まで残り4日だった。


 大がかりな準備をすればするほど、このような被害を受ければ修復が難しくなる。


「辛かったね。君たちの頑張りを無駄した犯人は、俺たちが必ず見つけ出す」


「「日下部先輩ぃ‼」」


 女子がこぞって日下部にすがるように抱き着き、彼はそれをなだめる。


 人気者はテンプレっぽいセリフを吐いても慕われるんだから恐ろしい。


「彼女たちの証言が本当ならば、犯人は外部犯の可能性が高いな」


「少なくとも、Aクラスの人間じゃないことは確かでしょうね」


 進藤先輩の呟きに賛同し、壊された備品を見る。


 割れた木材や粉々に砕かれたプラスティック製のアクセサリー、壁に立てかけられた看板。


 窓はなく、外から出入りできるわけがない。


 全体的で大がかりな破壊工作なだけに、違和感を覚える。


 作業終了時間は学園の違いはなく全てのクラスで午後6時には終了させなければならない。


 その後は実行委員以外はバスに乗り、それぞれの学園に戻ることは決まっている。


 会場内には安全のために監視カメラが至る所に設置されていた。


 天井を見れば、無論この部屋にも設置されている。


「進藤先輩、警備室に行きませんか?監視カメラに何か映ってるかもしれません」


「そうだな。では、ここは日下部たちに任せ、俺たちは周辺から捜査に入ろう」


「了解」


 現場の状況確認は阿佐美側に任せて、俺たち才王側は別の場所の捜査に入る。


 犯人が見つかるなら、早急に見つけて手を打っておいた方が良い気がする。


 長年の勘って言うんだろうな。


 これは誰かが亀裂を入れただけに過ぎないような気がする。


 2つの学園の中で、阿佐美側だけが被害を受けたという事実が引っ掛かる。


 Bクラスの金本とDクラスの海藤は進藤先輩と共に警備室に向かい、他は各クラスへの情報報告に向かった。


 俺もEクラスに戻って簡易的にクラスメイトに状況を説明した後、成瀬がに落ちない顔を浮かべた。


「そのあなたの言う外部犯。その正体がわかったとしても、この後に起こる更なる混乱は防ぐことはできないかもしれないわね」


「更なる混乱?何だよ、それ」


 川並が頭の後ろで手を組んで聞けば、クラスメイト全員の視線が彼女に集まる。


「この事件を引き起こした犯人を見つけることは確かに重要よ。更なる被害を食い止める意味では絶対に押さえなければならない。だけど、その犯人が本当の意味での外部犯である可能性は限りなく低いわ」


 会場は完全に才王学園と阿佐美学園が貸し切っている。


 それは2つの学園の関係者しか居ないことを意味している。


 他の人間と言えば警備員ぐらいだが、無関係な一般人がAクラスの出し物を壊す理由があるだろうか。


 誰かに買収されたという可能性は0とは言えないが考えにくいな。


 それでも、買収された場合であっても成瀬の言う混乱はいずれにしても起きてしまうかもしれない。


 いや、確実に起きる。


「この事件で重要になるのは、()()()()()()()()()()が犯人かという点に集約される」


 成瀬の口にした言葉の意味を、みんなはすぐには理解できなかった。


 それをわかっていたからか、成瀬は入江に視線を向ける。


「入江くん、あなたはこの事件の犯人は才王側と阿佐美側、どちらに居ると思う?」


「え、えぇ!?何で俺に聞くの!?」


「いいから答えて。直感で構わないわ」


「えぇ……」


 入江はわからないながらも唸りながら考えた後で渋々答える。


「阿佐美の方……じゃないの?だって、俺たちが阿佐美の出し物を壊す理由ないし」


「そうよね。才王側の多くの人がそうだと思うはず。そして、それは阿佐美側も同じように考えるはず。才王側がAクラスの模擬店を壊した……と」


 才王側は阿佐美側に、阿佐美側は才王側に犯人に居ると思う。


 今のところは犯人だけが、その真実を知っている。


 誰が犯人なのかは確かに重要だ。


 しかし、交友を深めることを目的に開かれた合同文化祭ではそれ以上にどちらの学園に犯人が属しているのかに重きが置かれるだろう。


 そうなった場合、文化祭は交友を深めるどころの話では無くなる。


 進藤先輩が危惧していたことが、現実に起きようとしているってことか。


 この事件によって両者の関係に亀裂が入り、疑惑は波乱を生んでいく。


 その疑惑が広がった状態で犯人が見つかった場合、2つの学園で差別が生まれるのは必然だ。


 最悪な展開になってきたぜ。

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