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カオスメイト ~この混沌とした学園で復讐を~  作者: カナト
底辺からのプロローグ
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常識外れの人狼ゲーム

 放課後、人狼ゲーム3日目の投票タイムを迎えた。


 今回の投票者は新森久美で、誰に投票するのかを悩んでいる様子だ。


 この人狼ゲームが本当に普通の人狼ゲームで、麗音との約束?が無ければ、俺は満面の笑みで、新森の目の前でニコニコしながら座っている猫女が人狼だと言ってやるのだがそれはできない。


 寝ている間にスタンガンの電流を首元から流され、挙句の果てに身動きが取れない俺は刃物で首を切られるかもしれないしな。あぁ、猫女は恐い恐い。


 そして、人狼の正体を言えない理由はもう1つある。


 最悪なことだが、昔の知り合いの助言が無ければ、こんな簡単なことにも気づかなかったのだと思うと、自分で自分を殺してしまいたいほどの自殺願望を覚えてしまう。


 前もって言うが、これは最低最悪な女が考えた、凡人をいじめて嘲笑ちょうしょうするために仕掛しかけたゲームだ。


 そんな最悪なゲームのルールが、普通の、ただ人を疑心暗鬼にさせるためだけのゲームなわけがない。


 おそらく、このことに気づいているのは、Fクラスの中では俺だけであり、Sクラスでは真央だけだろう。AからEはどうか知らないが、気づいていないことを祈るしかない。


 新森は机にしてうなり、「全然わかんにゃいよ~~!!」と言っている。


 うん、そのまま結果発表の日まで気づかないでくれ。俺の命のために、頼むから。


 今、麗音が俺にニコニコ笑顔を向けながら、余計なことは言うなって、威圧いあつしてきているから。


 麗音から目をらすようにして成瀬を見れば、この場に居ながらスマホをずっと操作しているし、基樹は授業中と同じく考える人のポーズをして寝ているように見える。


「おい、成瀬と基樹は、何か気になることはないのか?3日は経過してるんだから、何か怪しいこととかないのかよ?」


「「ない」」


「うわーお、珍しい。相反あいはんする2人の息が合ったー」


 心の中では凄く驚いているのだが、何分なにぶん俺は感情を顔に出すことが下手なので、棒読みになってしまった。


 成瀬はスマホを見ながら言葉を続けた。


「言ったでしょ?今の私は無力なの。ハッキングで忙しいのだけれど。あなた、がんばりますって言ったわよね?」


「…ですよねー。ちなみに、何時いつになったらアクセスできそうだ?」


「少なくとも、2週間じゃ到底無理ね。私は天才ハッカーではないから」


「そうか…了解だ」


 いさぎよく引き下がると、成瀬は顔を動かさずに目だけ俺を見る。


 何か違和感でも与えてしまったのだろうか。


「何だか聞き分けがいいわね?声のトーンも残念そうには聞こえなかったわ。…もしかして、あなたはもう人狼が誰かを知ってるんじゃないわよね?」


「…は?」


「あなたなら、もう人狼の正体に気づいてるんじゃないかって言ってるのよ」


「はぁ…たった3日間でわかるわけないだろ?俺の能力をかぶりすぎだ」


「…そう、椿くんは低能だったのね」


「わかった、喧嘩を売ってるんだな?200万で買おうじゃないか」


 若干イラついたので言ってみれば、フッと笑ってスマホで口元を隠す。


「本当に払うのね?私、口で負けたことは1度も無いわよ?」


「…はぁ、やっぱりやめとく。時間の無駄だ」


「あら残念、楽なお小遣い稼ぎになると思ったのに」


「そんなことは良いから、さっさと業務ぎょうむに戻ってくれ」


「そうね、そうするわ。…あなたが話を振って来なければ、余計な心の傷も増えなくて済んだのに」


「傷を与えた本人が言うな」


 不機嫌な表情で言うが、その時には成瀬はもうスマホに視線を移しており、ハッキングに集中していた。


 今更だけどハッキングと言ったらPCのイメージだが、どうやってスマホでやってるんだろうか。


 じーっと成瀬のスマホを見ていると、俺のスマホから着信オンが鳴った。


 メールを見てみると、成瀬はテレパシー能力者かと疑った。


『ハッキングの仕方なら教えないわよ?絶対に』


『どうして俺の考えていたことがわかったんだ。おまえ、エスパーだったのか?』


『知らなかったの?私、椿くんの心の声だけはずっと聞こえてるのよ』


『凄い能力だな。それで人狼を見つけられそうだ、今度教えてくれ』


『無理よ、地球人にはできない技能ですもの』


『そうか、おまえは宇宙人だったのか。驚いた』


『そうね、木星から来たの。みんなには黙っておいてね』


『了解した。…ちなみに、このバカみたいな作り話はいつまで続くんだ?』


『もう終わりよ。私のスマホをじろじろ見るのをやめてと言いたかっただけなのだけれど、あなたで遊ぶのは面白かったわ』


『俺を玩具おもちゃにするな』


『玩具にはしてないわ。ただ、使える奴隷とは思ってるけど』


『余計に性質たちが悪いな』


『そうね、私は性格せいかくが悪い女だもの』


『それは改善した方が良いと思うぞ?』


『ええ、善処ぜんしょしておくわ。ダイスキヨ、ツバキクン』


『つくなら、もっとマシな嘘をつけ』


『少しは喜べばいいのに。可愛くないわね』


『名前は女っぽいが、俺に可愛さを求めるな。もう終わるぞ』


 溜め息をつきながら電源を切ると、成瀬は小さく悪い笑みをしてクスクスと笑った。


 俺が成瀬とメールで話しているうちに、悩みに悩んで麗音と相談していた新森は、クラスメイトの全く的外れな名前を書いて投票箱に入れたようだ。


 このまま、人狼の正体が誰にも気づかれないことを願って止まない。


 何故ならこの人狼ゲームでは、優勝するためにはクラスの人狼を当ててはならないのだから。



 真央side



 放課後、生徒会室に入れば、そこには窓の外を見ている女性が1人だけだった。


 この学園の生徒会長、桜田奏奈さくらだ そうなだ。


 ベージュでストレートの長い髪を腰まで伸ばしており、容姿端麗ようしたんれいで、学業もそうだが武術や剣術の心得もあり、まさに文武両道で完成された女だ。


 僕は会長に呼ばれ、ここに来ている。


 役員召集ではなく、個人として呼ばれたのは初めてだ。


「会長、椿円華にあなたの言葉を見せました」


「そう…ありがとう、真央」


 いつもと同じで素気なく言う会長は、こちらを向こうとはしない。


 しかし、この前の少し笑んだ表情は嘘だったのかというように、無表情と言う仮面を着けているのはわかる。


「それで僕を呼んだ理由を、お聞かせいただいてもよろしいでしょうか?」


「私は別に言ってもいいのよ?だけど、それでは面白くないじゃない。あなたの発想力をフルに働かせて、当ててみなさい?」


「…働かせるまでもないでしょう。椿円華のことで、同学年の僕から見てどうかってことですよね?」


「さぁ?あなたがそう思うんだったら、それを前提で話をしましょうか?」


 会長は、解答を絶対に言わない人だ。


 彼女にどうして答えを言わないのかと聞いたら『決まっている答えなんてまらないわ。私はね、答えは決まっているものじゃないと思うの。いろいろな力を駆使くしして、作るものなのよ?』と言っていた。


「そうですね、それで話をしましょう。…おそらくですが、あれを見た瞬間に、椿円華はこの人狼ゲームの本質を見抜いたような気がします」


「気づかなかったらおかしいわよ。だって、これはあの子がどれだけ成長したのかを試すためのイベントなんだから。凡人たちの中では、気づけるのは…そう、2割くらいじゃないかしら」


「それは馬鹿にしすぎですよ。僕も気づけたんですから」


「…それもそうね」


 会長が笑いだしたので僕も形だけ笑いながら、この女の予想を裏切る結末が来る未来をイメージする。


 この女は椿円華がこの人狼ゲームに優勝する未来を想像していることだろう。


 しかし、僕はクラス対抗人狼ゲームのルール説明の中でSクラス以外の全クラスがミスリードするように誘導した。


 嘘などは使っていない。ただ、先入観を誘発ゆうはつしただけだ。


 この常識外れのクラス対抗人狼ゲームでは、人狼を当てれば絶対に優勝することなどできないのだ。


 人狼を当てれば1万、ランキングシステム。そして、あたかも人狼が勝てば、人狼だけが得をしているのだと言うような言い方をした。


 しかし、冷静に僕の言った言葉を思い出してほしい。


『最終的に、クラス全体で獲得した能力点が多いクラスが優勝』なのだ。


 つまり、人狼が勝った場合の10万ポイントも、クラスのポイントに換算される。


 そのことに気づいた者は、どれだけ居るのだろうか。


 しかし、クラスとしては能力点が1万ポイント減るリスクはあるが、それはSクラスの生徒全員が持っている能力点を合わせれば1万に届くのでカバーできる。


 椿円華が本質に気づいたとしても、Fクラスの能力点を合計してもSクラスには届かないことは明白だ。


 絶対に勝てるんだよ、このゲームは!!


 僕が笑いをこらえていると、会長はこちらを見てクスっと笑う。


「真央…あなた、もしかして円華のことを甘く見ていないかしら?」


「…どういうことですか?」


「残念だけど、あなたの力は円華には届かないわ」


「何故です?僕はこのゲームの本質を完全に理解しています。負ける道理がわかりません」


「道理なんて関係ないわ。逆に道理なんて考えていたら、ずっとあの子に勝つことは不可能。そうねぇ…どう言ったら、あなたに伝わるのかしら」


 自身の顎に人差し指を当てて、考えるような素振りを見せれば、口の端を上げてこう言った。


「簡単に抽象的に言うのなら、円華は私の弟だからよ」


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