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カオスメイト ~この混沌とした学園で復讐を~  作者: カナト
束の間の休息
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プールへの誘い

 どうして人間は暑い夏に外出したがるのだろうか。


 海だの祭りだののほかにも、夏には多くの行事が開かれ、それに訪れる大衆の群れ。


 熱中症になるリスクを考慮したら、俺だったらエアコンの効いた部屋の中に引きこもるな。


 昔は姉さんに無理やり外に出されて10日間のサバイバルを強要されたり、師匠との修行で森の中での野外訓練を受けさせられたけど、閉鎖空間の地下街ではその危険性もない。


 夏休みは中盤までいろいろなことが起きて休む暇がなかったから、後半はゆっくりさせてほしい。


 手始めに、俺は今エアコンを付けっぱなしでベッドの上で睡眠中。


 よし、今日のぐーたら目標はこのまま1日中寝ることだな。


 絶対にベッドから起き上がらないし、誰が何度インターホンを鳴らそうと外には絶対に出ない。


 そう、絶対に……。


 ピンポーンっ!


 はいはい、誰かが来ることはわかっていた。


 しかし、鋼の決意を固めた俺が起きるわけがない。


 ピンポーンっ、ピンポンっ、ピンポーンっ!


 この程度で起きると思ったら大間違いだ。


 いくらインターホンを鳴らそうと、俺がここから出ることはない。


 何度も鳴らして諦めたのか、近所迷惑な音が収まる。


 そして、ドアを叩く音が聞こえた。


「円華っち、起きろー!!居るのはわかってるんだぞー!!おまえは既に我々に包囲されている!!さっさと諦めて出てこーい!!」


 久実かぁ……うるっせぇし、無視だ無視。


「いつものメンバー全員集めてプール行くよー!!水着女子が視れるよー!!田舎のおふくろさんが泣いてるぞー!!」


 もはやどういう誘い方をしてるんだ、あのアホは。


 俺を誘いに来てるのか、立てこもりの犯人を説得しようとしているのか、わかったもんじゃない。


 しかし、あいつの今の言葉の中には嘘が混ざっているはずだ。


 いつものメンバーと言ったが、あの最上恵美と成瀬瑠璃が大勢でプールに行くことを了承するはずがない。


 基樹なら(素の性格は知らないが)水着美女を見るという目的で行くに決まっているが。


 よって、久実と基樹のうるさいメンバーの処理を俺1人でできるわけもないので、俺は就寝することに全力を尽くした。


 断固としてベッドから出るものか。


 シーツを頭から被って寝る態勢に入っていると、うるさい久実の声は止まらず、予想外の女の声が聞こえてきた。


「久実ちゃん、椿くんはどう?」


「おー、麗音っち、おっはー!!」


 俺は名前を聞いてすぐに起き上がり、急いで電話をかける。


 すると、ドアの向こうから着信音が聞こえてきた。


『もしもし?』


「もしもし?っじゃねぇよ!!おまえなぁ、もっと行動は慎重に―――」


 注意を促そうとすれば、電話から違う声が聞こえてくる。


『円華っち、起きてたのかー!?うちを無視するなんてひどいじゃないか!!』


 おーっと……今日の目的はもう果たせそうにないな。


 5分後。


 観念して私服に着替え、負のオーラを全開にして部屋を出れば、平然とした表情の麗音と頬を膨らませて腰に両手を当てている久実が立っていた。


「遅いぞ、円華っち!!うちを無視するとは良い度胸だな、この野郎!!」


「あー、はいはい、悪かったって。寝起きなんだから、あんまり大声あげんなよ……」


 頭を押さえながら溜め息をつく。


 正直、今日は外に出れるコンディションじゃない。


 夏休みに入ってからのいろいろな出来事に身体がついに悲鳴をあげ、今更になって筋肉痛が出てきたり頭が働かない始末だ。


「それで?プールって言ってたけど、どこにあるんだよ。場所知らねぇんだけど?」


「ウォーター王国って娯楽施設があるんだよ。そこにみんな集合ってことになってるのだ!」


「それ、恵美も成瀬も来るのか?」


「おー、2人とも2つ返事で了解してくれたぞ!」


 絶対に断っても意味がないって思ったからだろうな。


 1回、こいつにはどれだけしつこくしても人は思い通りにならないことを教える必要があると見た。


 麗音を見ると、俺と久実を見てニコニコと笑っている。


 何が面白くて笑顔なんて作れるんだか。


 久実の案内で3人でウォーター王国に向かえば、生徒が多すぎたことに驚いた。


 夏休みも残りわずかだからか、帰省から戻ってきて遊ぶところを探していたらここになったと言ったところか。


 まぁ、地下街とは言え、遊園地もあるみたいだけどな。


 全く、緋色の幻影様は何がしたいのかがさっぱりわからねぇな。


 入口前に行くと、既に恵美や成瀬、基樹が待っており、予想外にも和泉や雨水も居た。


「珍しい……って言うか、話す話題が無さそうな5人が集まってるな」


 首の後ろに手を回しながら近づけば、恵美が先に気づいて手を軽く上げて「おっす」と挨拶してきたので「あぁ」と返す。


 恵美は麗音を見ると、軽く視線を合わせた後に顔を逸らし、彼女もフンっと鼻を鳴らす。


 この2人の仲の悪さは変わっていません。


 成瀬はスマホを見ながら基樹にチラチラと不審そうな目を向けており、基樹はそれに気づかないふりをして俺に手を振ってきた。


「うーっす、元気?」


「絶不調。可能なら今すぐに帰りたいくらいだ」


「それはできなさそうだから、ご愁傷様しゅうしょうさまっすね」


「どうも」


 和泉と雨水を見れば、俺のことを待っていたようで、近づいたら話しかけられた。


「おはよう、椿くん。こんな所で会うなんて偶然だね」


「ああ。和泉がプールなんて想像つかなかったぜ。ハワイの海でココナッツジュース飲んでるイメージの方が強い」


「私だって、プールで遊びたい時だってあるんだよ?椿くんって意外と意地悪だね」


 むっとした表情になる和泉。これは隣に居る執事がうるさそうなのでフォローを入れておく。


「意地悪できるほどの仲になったって思ってくれよ。なんせ俺たち、デートした仲なんだし」


 デートと言う言葉を出すと、和泉の頬が少し赤くなり、雨水にチラッと睨まれる。


「そ、そうだよね。心の距離が近くなったと思えば、悪くないよね、アハハッ」


 笑って誤魔化してくれた所で、とりあえず俺たちはウォーター王国の中に入る。


 その時に後ろから恵美に腰をつねられた。


「おい、何か気に障ることしたか?」


「……自分で考えれば。別に怒ってないし」


「はいはい」


 未だに、こいつのことはことはよくわからん。

はい、章のタイトル通りの中休みみたいな章です。


ですが、いろいろと物語の中核に迫ったり、人間関係の整理などをしていきたいと思ってます。


新キャラも何人か出てきます。

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