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カオスメイト ~この混沌とした学園で復讐を~  作者: カナト
記憶を辿る化かし合い
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デート開始

 デート……デート?デェエト……。


 アメリカに住んでいたとき、よく男にナンパされ、慣用句のように『綺麗なお嬢さん、俺とデートしない?』的なことを言われ、『あなたのようなチェリーボーイには興味はないわ』と言って拒否してきた。


 今はそういう態度をとってしまったことに後悔を覚えている。


 見た目だけでなく、心も女になって『やだ、マジ受けるんですけど~!!お兄さん見る目ある~』と言って受けるべきだった。


 しかし、デートとは誘った方がプランを立て、それに誘われた方が便乗して従うのではないだろうか。


 ならば、俺は何も考えずに和泉に従えば、それがデートになるのか?


「デート……考えるだけ沼にはまりそうな論題だな」


 俺がテーブルに頬杖つきながら何気なく呟けば、目の前に居る女子2人が奇妙な反応をした。


 1人は口についたナポリパンの散り散りになった麺がカーペットの上にこぼれながら目を見開き、もう1人は手にしていたはしを落としてしまい、開いた口が塞がっていない。


「……どうした?2人とも」


「「どうしたじゃない!!」」


 珍しく馬が合わない2人がハモった。しかも、顔がこえぇ……。


 ちなみに、俺は今恵美の部屋で朝食を取っており、当然麗音も居る。


「デートってどういうこと!?私、何も聞いてない!!」


「いや、どういうことって言われても…。昨日、急に和泉に今日デートしろと要求されたんだ。気分転換にもなるって言われたから、少し付き合ってやろうと思って…」


「き、気分転換にデートって‼……そんなの、私だって円華とデー……」


 恵美が耳まで顔を真っ赤にしているのを冷静に見ていたが、グラデーションのように声が小さくなってき、後半が全く聞こえなかった。


「本当に……いいご身分ねぇ。あたしは出入りが制限されて?あたしを何とかすることが目的で早く戻ってきたはずなのに?あたしを放っておいて、要ちゃんとデートですかぁ。ふ~ん……」


 何故か麗音からの台詞も怒り混じりの視線も痛い。


 どうして、2人はこんなにテンションが高いんだ。


 恵美はわからねぇけど、麗音の意見はとげを感じるけれども尤もだ。


 俺が戻ってきたのは、簡単に言えば住良木麗音を復讐のカードに使えるようにするためだ。


 しかし、麗音1枚のカードでは意味がない。使えるカードは増やすべきだ。


 Eクラスのカード候補は最上恵美、成瀬瑠璃、狩野基樹、新森久実。しかし、それだけでは足りない。


 奴らが何処に居るかわからない以上、手は広げる必要がある。その中でも、Sクラスの前にAクラスの和泉の能力を把握し、こちらのカードにできれば強力だ。


 Aクラスだけでなく、本来はライバルになる他クラスにも一目置かれて信頼されている。そんな存在の力を利用しないバカは居ないだろう。


 しかし……なぁ。


 俺は一瞬麗音をチラッと見れば、思わず溜め息がもれた。


 和泉並みではないにしろ、他クラスからも人気があった前の麗音を使えれば、他クラスにも手を広げなくても良かったんだよなぁ。


 まぁ、過去のたらればを言っても仕方がないし、切りがない。


 恵美が話をしてから終始膨れ面で不機嫌だったが、もう時間が無かったので部屋を出て、和泉との待ち合わせ場所である本屋に向かった。


 デート……今考えてみれば、デートってワードによって人はよく服選びで迷ってしまうらしいが、俺はいつも通りの服装で来ている。


 上は白と青のボーダーのシャツの上に黒のジャケット、下はジーンズ。


 これじゃダメなのだろうか。


『見た目は大事だと言われているが、見た目だけでなく内面から良くしないと、いつかはボロが出る。長続きしないカップルほど、上部だけしか見てなくて内面を見ないでいたばっかりに幻滅して破局する。見た目よりも内面を受け入れる覚悟がなきゃ、男女の付き合いは遊びだな』


 ほとんどの男女を敵に回すような言葉だが、姉さんはこう言っていた。その時は、見た目が大事なのは当たり前だろっと思っていたが、今は中身が重要であることは言うまでもない。


 今回の和泉とのデート?は、あいつがカードに成りうるか、それとも俺の手には余るのかを見極めるいい機会だ。


 欠伸をしながら本屋に着けば、時間は9時15分。


 女子を待たせることは気が引けるので早めに着たは良いが、別に探している本も待ち望んでいる文庫本もない。


 週刊誌でも読むか?でも、好きな漫画も文集もない。


 と言うか、立ち読みって気が引けるんだよなぁ。


 店員からは、万引きをしないかを怪しまれて数秒に1度は睨まれるし、その雑誌が1冊しか無かった時にそれを読んでいたら、次に読もうとしている人に『さっさと読み終われよ、ガキが』って目を向けられる。


 要するに、良い思いはしない。


 本を探しているふりをしながら料理本コーナーを回っていると、肩をトントンッと叩かれた。


 振り変えれば和泉が居て、「おはよう、お待たせ」と軽く手を挙げて笑顔で言ってきた。


 世の男ども……少なくともこの学園の男子ならば、その笑顔を見ただけで心を許してしまうのだろうが、俺は何の心の動きも感じずに無表情を貫いて時計を見る。


「今の時間は9時55分。所定の時間よりも早いから待っているに入らないんじゃね?」


「そっか、椿くんは優しいね。でも、ごめんね?夏休みの大事な時間を私なんかに割いてもらっちゃって」


「問題ねぇよ。約束したのは確かだからな。それに、俺も和泉とは1度2人だけで時間を過ごしてみたいとは思っていたから丁度良いさ」


「そ、そうなんだ?それは良かったよ、うん」


 そう言って和泉は俺のどこが可笑しかったのか、少し頬を染めながら俺の手を握って前に引く。


「じゃあ、10時になったことだし、デートを始めようか。最初は映画からだよ?」


「了解だ」


 こうして、俺と和泉の地下街デートは始まった。



 -----

 恵美side



 円華がデートに行ってしまった。


 私は大嫌いな白髪女と部屋に居残りをさせられているわけです。


 凄く怒っています、とても気に入りません。


 確かに約束を守るのは大事なこと。円華は人間として正しい。それは否定しない。


 でも、デートって……デートってぇ~~。


 枕に顔を埋めながらうなっていると、住良木が唐突に溜め息をついた。


「あんたって、意外とわかりやすいのね。円華くんに要ちゃんとのデートに行ってほしくなかったなら、そう言えば良かったのに」


「……それはあんただって同じでしょ」


「あたしは別に……何とも思ってないから。円華くんが何をしようと、自由な……わけだし」


「顔に不満って書いてある」


「か、書いてないわよ、変なこと言わないで!」


 これ以上言うとまた喧嘩になるとお互いに予想はできているので、自然と沈黙が流れてしまう。


 お互いに、どういう気持ちを抱いているのかはわかってる。わかってしまっている。だから、空気が重い。


 時計の針がカチっカチっと回る音だけが聞こえてくる。


 しばらく静かだったけど、不意に住良木がパンっと手を叩いた。


「こうなったら、デートを監視するしかない」


「……え?」


「だから、監視だよ、監視。円華くんと要ちゃんが必要以上に接近しないようにするの」


 円華が、和泉要と接近しないようにする……。


 まず最初に、和泉の方はどうかわからないけど、円華に関しては彼女に気が向くことはないよね。


 だって、まだ涼華さんのことが好きなんだし。


「ゲホッ、ゲホッゲホッ!!」


「ちょっと、いきなりどうしたのよ!?」


「だ、大……丈夫……」


 ダ、ダメ……。思っただけでも悲しくなり、自分が哀れに感じて咳き込んでしまった。


 住良木は落ち込んでいる私を見ると、面倒そうな表情をしていたけど、円華から預かっている緑色の大きなバッグを取り出してファスナーを開けた。


「それ……中に何が入ってるの?」


「知らないわよ、今初めて開くんだし。でも、もしもの時に、最終手段として使えって円華くんは言ってたけど……」


 円華は昨日、自分の部屋に戻る前に住良木にそのバッグを渡していた。その時、何かばつの悪そうな顔をしていたのを覚えてる。


 住良木がバッグの中に手を突っ込んで何かを引っ張りだす。それは女性用の黒髪のカツラだった。そして、その後もメガネやカラーコンタクト、そして白い腕輪の代わりだろうか、白い腕時計が入っていた。


 これ、もしもの時って住良木が外にでなきゃいけない時ってこと?円華はそれを想定していた……どうして?


 住良木は黒髪長髪のカツラを被り、黒いふちの伊達メガネをかけた。


「これで、尾行できない?」


「……70点。でも、他の人にはバレないと思う」


「じゃあ……行っちゃいましょうか?」


「そうしましょう」


 私は頷き、外に出て円華を追う準備をした。


 現在、9時45分。


 住良木と一緒に居る所を怪しまれないように、私もある程度は変装することにした。


 セミロングの茶髪のカツラを被り、瞳の色は緑にした。


 待ち合わせの場所は、確か本屋だと円華は出る時に言っていた。


 行ってみれば和泉要の後ろ姿を見つけ、入っていくのが見えた。


「どうするの?あたしたちも中に入る?」


「待ち合わせの場所ってことは長居はしないはず、出てくるのを待った方が無駄な接触を避けられる」


 予想通り5分以内に2人は出てきた。そこまでは予想通り、そう……円華に不満が生まれる予想外があった。


 2人とも、手を繋いで本屋を出てきたんです。


 円華は平然としているけど、和泉要の方はまぁ嬉しそうに。


 何も知らない他人が見たら、あの2人はカップル以外のなんでもない。


 そんな2人をちょっとムカムカしながら見ていると、本屋の隣にあるレストランの屋根から、一瞬何かが反射して光ったのが見えた。


 気になって首にさげていたヘッドフォンを耳に当てて集中すれば、私以上に、隣に居る住良木以上に怒りを感じている。それこそ、血の涙でも流しているのではないかと思うほどの憎しみを感じとった。


『椿円華ぁ……!!要お嬢様に何か変なことをしようとすれば、俺がその額に風穴を開けてやる……!!』


 あぁ、円華から聞いていた噂の……アホ執事……だっけ? 

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