魂の救済 後編
「これが、わたくし達の過去の全て」
黒川は話終えると少女の眠るベットの脇に腰を降ろした、
「ちょっと待ってくれ、とりあえず立花!
いつまで縛ってるつもりだ、」
「今解きますよ、」
悪びれる様子もなく立花が軽く手を振ると縄はひとりでに解けていく
不知火はその場で立ち上がり黒川に話しかけた
「さっきは悪かったな事情も知らずに怒鳴っちまって、」
「こちらこそ、貴方の感情を逆なでするような事を、わたくしのせいですわ」
「悪いついでに聞くが、立花達と違う異世界なのに何でも願いが叶うというのは一緒なんだな、」
「そのようだね、因みにその対象がボスを倒した際に戦闘に参加した4名ってとこも」
「何故そのような事までわかるのです?」
「まぁ、こっちも4人で、そっちも4人だったからね、推論にもならない、当てずっぽうだけどさ」
春人は明るく言ったが
まだまたま神妙な空気の中、
春人はまたも空気を読まずに切り出す
「でも、まだ肝心なことが抜けてるよ、
過去の確執については分かったけど、何故今ここでソウルイーターを持った少女が霊魂なんかくっつけてきたかって事だよ」
「それは間違いなく美夜の仕業ですわ
ソウルイーターはその名の通り魂を喰らう鎌
刺された人間は傷の深さや攻撃を受けた位置によって魂を喰われその部分は2度と動く事はありません、そしてその特性は使用する側にも、悪影響を起こします、
使用する度に少しづつ魂を喰われるのですわ。」
そこで話を寧庵が受け継ぐと
「しかし、一部に例外もおります、
それが、呪いの専門家である夜魅殿、呪術師、
1度にたくさんの霊魂、つまり魂をその身に宿せる降霊術師の聡殿、
この2方だけはソウルイーターを扱うことが出来るのです。」
それに疑問を覚えた不知火が間に入る
「ちょ、ちょっと待て、じゃあこの子がその呪術師か降霊術師のどっちかってことか?」
「そうではありませぬ、
少女ではなく、この霊魂が
死霊使いの美夜に操られた聡殿なのです。」
春人と不知火はここでようやく納得する
この少女やソウルイーター、そして少女に結合している霊魂
それがどんな物語なのかを、
ようやく理解した
理解した上で覚悟した、
恐らく今回2人に出番は無いだろう、
それでも、黒川が真実を話したのは、
贖罪、
彼女は妹が犯した罪が自分のせいだと思っているのであろう、
「だから、あえて俺は言うよ!
黒川さんは悪くない!!」
「ふふっ、春人くんは優しいのね、でも美夜をあんな風にしてしまったのは私の…」
春人はその言葉を遮るように
「それは違う!
俺達はあの異世界を生き残ってきた
日本でのうのうと暮らしてきた俺達には地獄だったよ
実際俺も何度も仲間の死を見てきた、
だけど、どんなに後悔したってもう後には戻れないんだよ!
苦しくても、悲しくても進むしか無いんだよ!
でも彼女は黒川さんの妹は前に進めなかったね。
苦しかったろう、悲しかったろう、
貴女の、妹の罪を否定しようとする行為は
彼女の苦しみも悲しみも否定するのと同じだ!!」
前に進めなかった者、悲しみや苦しみを誰かへ当たることしか出来なかった者、
そんな風に己の心に負けてしまったものは、果たして弱者なのだろうか?
彼ら、彼女らも精一杯悩み苦しみそして最後に挫けてしまっただけ、
生き残ってきた春人達と道すがらは同じなのだ、
それを負けたからといって、罪を犯したからといって否定するのは果たして正しいのだろうか?
春人の言葉に肩を震わせ、涙を隠さない、黒川の後ろからそっと迫る人影、
そこには目覚めることの無いはずの少女の姿があった。