魂の救済 前編
翌日
段々と強くなってきた日差しの下で、
春人は占いの館月明かりの前に立っていた
「暑い、ホントに5月かよ、しかもこの日差しの下で、月明かりの前に立つってなんの冗談なんだろうね。」
そう1人でぼやいていると、
占いの館月明かりの扉が内側から開けられ
不知火が顔を出した。
「よう、立花来たか」
「不知火さん随分早いね、
俺も早く来たつもりなんだけど」
「いやな、家にいてもなんだか落ち着かなくてソワソワしてたら、女房にうっとおしいつって叩き出されちまったのさ」
と白髪混じりの頭をボリボリと掻きながら照れくさそうに話した
すると
「そんなところで立ち話なさらないで中へどうぞ。」
と奥から黒川の声が聞こえてきた
その声に導かれるまま扉をくぐると
まず部屋の奥に水晶玉の乗った小さな机が見え、
その周りに背の高い棚が並べてあり、
占いの本だと思われる書籍や小さな瓶に入った香水のようなものが並べられていた
が、そこに黒川の姿は見えない
すると不知火が手招きしながら
「立花、こっちだ」
と水晶の乗った机の後ろにある暗幕の奥へと進んでいく
春人は招かれるまま暗幕の奥へと進んだ
するとさっきまでのthe占い師といったような内装からうってかわり
床一面に描かれた幾学模様や背の高い棚に並べられた、髑髏を模した置物、とても香水のようには見えないドロドロとした液体の入った不思議な形の瓶などそれはまるで
「黒魔術師のようですか?」
心を呼んだかのように黒川が薄く笑いながら問いかけ、続いて
「悪趣味な部屋でごめんなさいね、
一時期こういうものに凝っていた時期がありましたので、今でこそ色々と役にたっているのですけどね」
「異世界に行く前から黒川さんは黒川さんだったんだね」
と苦笑いをしながら告げるも、
少し皮肉めいた事を言ってしまったと後悔した
なんとなく黒川と目を合わせにくかった春人は黒川より更に奥に目をやると
そこにはシンプルなベットに寝かされた例の少女と
その近くで何やら唱えている大柄な坊主頭の男の姿が目に入った
「あの人は?」
と問いかけると、黒川は艶かしくも見える所作でゆっくりと口元に人差し指をつけると
「後で紹介するわ、でも今は彼が集中してるから少し静かにしていただけるかしら?」
「お2人がこんなに早くみえると思ってなかったものですから、まだ準備が出来てないのよ」
とまた薄く上品に笑った
春人はさっきのお返しかなとまた苦笑いを浮かべた
10分程待って、坊主頭の男が何やら唱えるのをやめると、黒川の近くに歩み寄り
「やはり、かなり強く結びついておりますゆえ、丁寧に事を運ばねば2人とも壊れてしまいまする」
と黒川に伝えた
黒川は小さく、そう。と呟くと、
春人と不知火の方に向き、
「お待たせして申し訳ないわ、
さて、どこから説明すれば良いのかしら」
とまたしても艶やかに首を傾げる
「とりあえずそちらの方を紹介して貰えませんかね?」
と不知火が坊主頭の方を見やると
黒川は少し頷き
「こちらはお寺の住職様で、寧庵さんよ、
異世界に居る時は祓士として共に戦って頂いた方なの」
と寧庵と呼ばれた男に視線を送る
「拙僧の名は寧庵と申す、
普段は仏門にて修行しておるが、あちらの世界では祓士として未熟ながら魂の浄化等を体得しておった」
と自らを名乗った、
その男を見ると、歳は30前後、
けして低くない春人や不知火が見上げるほど背は高く、恐らく法衣と思われる衣装に身を包んでいた
「初めまして、俺は立花 春人、
でこっちが不知火 健三さん、
一応今回の事件の関係者って事で呼ばれたけど、」
と一度言葉を切ると
「あくまで推論だけど、相当面倒な事になってそうだね?」
と面倒だと言うわりにどこか楽し気に春人は問いかけた
寧庵 32歳 住職
転移先 洋館
ジャンル ホラーアクション
異能力 祓士
身長200cm
体重82kg
能力、魂の浄化等と本人は説明していたが詳しい能力は不明