異世界の謎と少女の行方
少女による警察署襲撃事件から3日後
警察署内
「さてと、とりあえず自己紹介からしときます?」
春人はまだ少し散らかっている警察署内の一室、
長テーブルを囲んだ、
白髪混じりの男性と着物姿の妖艶な女性をみた
「えぇ、そうね、まずわたくしから、
わたくしの名は黒川 夜魅
2年ほど前に行方不明になったしがない占い師よ」
黒川はそう言うと春人の方を見て自己紹介を促す
「次は俺ね、俺は立花 春人、
3年前、恐らく1番最初の行方不明者達の1人で、こんな髪してるけど元々は料理人やってたの」
そこまで言うと春人は不知火を見る
「俺もか?立花は知ってると思うが、俺の名前は不知火 健三
ここで刑事やってるもんだ
あの日、立花と黒川さんをここに呼んだのも俺だ」
そこまで言うと先日の事を思い出したのか不知火の顔に影が落ちる
「それで、あの子はどうなったの?」
春人は暗い雰囲気を打ち消すように努めて明るく話題を切り出す
それに答えたのは不知火
「本来なら俺ら警察が捕まえとくべきなんだが、なんせあの様子だからな」
不知火はくたびれたスーツも手伝い酷くやつれた様子で話した
そんな様子を気遣ってか黒川が話を引き継ぐ
「不知火さんそこからはわたくしが」
そこで黒川は持っていたカバンから紅色の名刺入れを取り出すと
「先程も申しましたが、わたくしこの街で占い師をしておりまして」
黒川は名刺入れから名刺を取り出すと春人へと渡した
「占いの館 月明かりかぁ、素敵な名前だね」
春人がそう言うと
黒川は上品に口元を隠しながら小さく笑い
「そのお店で今あの子を預かってますの」
それに同調する形で不知火が口を開くと
「本当に情けない話なんだがな、ここじゃあ奴を大人しくさせる術が無くてな、特例中の特例って事で黒川さんに預かってもらってんだ」
春人は何度か頷くと
「なるほどね、状況はわかったよ」
そこで1度言葉を切ると
「それはそれとして、黒川さんも異世界に飛ばされてたんだよね?」
そこでもう1度言葉を切ると
「黒川さんの居たところってどんなところだった?」
と春人にしては珍しく神妙な面持ちでそう訪ねた
その言葉に黒川は少し悩んだような表情を浮かべ
「わたくしが飛ばされた場所はとても大きな洋館で、所謂、幽霊や妖といった類のものたちが跋扈している、それは恐ろしいとこでしたわ」
と述べた
それを聞いた春人は考え込むような仕草を見せたため代わりに不知火が間に入った
「ちょっと待ってくれ、立花が前に言っていたのと違くねぇか?
確か立花は王の前の広間に集められ魔王を倒せと言われたんだよな?」
その問いに春人は俯き考えていた顔をあげて
「あくまで推論だけど、
飛ばされた時期で飛ばされる場所も違うんだろうね」
それに対して黒川は
「では、所謂異世界というのは一つでは無いと?」
「少なくとも俺が居た世界では黒川さんみたいな能力は見たことないしね」
そこまで話したところで不知火が一つ咳払いをすると
「まぁ、不確かな事を話し合ってもしょうがねぇ、とりあえず今抱えてる問題を解決しない事には先へ進めねぇだろ」
「わたくしもそう思いますわ、少なくとも今はやれることをやるしか無いと思いますし」
そこまでで区切ると、次は春人が問いかける
「やれることって言ってもどうするのさ?というかそもそもあの子はどういう状態な訳?」
「今はわたくしの術で眠らせて、友人に見張らせていますわ、その子もそれなりに腕が立ちますし、逃げ出したりはしないと思いますわ」
「それはひとまず安心ではあるけど、解決には繋がらないよね?」
黒川の言葉に納得しつつも、春人は先を促す
「それについても、ある程度調べはついていますし、解決の方策も目処がたっていますわ」
と黒川は長い髪を手で軽く梳きながら続ける
「それでですが、立花くんは明日お暇かしら?」
「明日も何もずっと暇だよ、昨日働いてた店に行ったら更地になってて、俺店の2階に住んでたから、現在住所不定無職だよ」
とさらりととんでもない事を言う春人
それに対して不知火は驚いた表情を浮かべ
「初めて聞いたぞ?そんなに困ってるならとりあえず家に来るか?やかましい女房と思春期の娘付きだがよ」
最終的には黒川が終わらせた戦闘ではあったが、命の恩人である春人に少なからず感謝している不知火がそう持ちかけるが
「とりあえずある程度貯蓄もあるし、今はビジネスホテルで過ごせてるから大丈夫、あんがとね、不知火さん」
そこまで会話が進むと、
「話がそれてしまいましたが、明日お時間あるということでよろしいかしら?」
と黒川が春人に問いかける
「ん、大丈夫だよ、何?デートのお誘い?」
場の空気を読まず少し身を乗り出しながら春人が軽口を叩くと
黒川はまた上品に笑いながら
「大人をからかってはいけませんわ、春人くん」
とやんわり窘めると
「では、明日わたくしの店に来ていただけるかしら?春人くんも腕が立つようですし、関係者ですもの、解決までお付き合い下さらない?」
「それは別にかまわないよ、前回の戦闘では足引っ張っちゃったしね、あの程度が本気だと思われたくないし」
と春人は少しむくれる
「そういうことなら俺も付き合わせてもらう、今回の事はそもそも警察の問題だ、構わないよな?」
「えぇ構いませんわ、では明日の午前10時に」
黒川 夜魅 32歳 占い師 呪術師
転移先 洋館
ジャンル ホラーアクション
広大な洋館にて呪われた住人達とそれを操る死霊使い(ネクロマンサー)を倒す事を目的としていた
これだけでも春人と飛ばされた世界が違うことがわかる
身長168cm
異能力
呪法
言霊や霊符又は特殊な儀式によって対象に負の効果を与える
使用するには事前の準備が必要な為前回の戦闘時も着物の中に霊符を仕込んでいた
本来呪いと呼ばれる類の術のため、強力な呪法を使う場合代償が必要となる場合も
立花 春人
元料理人だったようだが、三年経った現在以前勤めていた店が潰れたようで、しかも店の2階に住んでいた春人は現在住所不定無職。
しかしそれなりの貯えがあるようで人並みの生活は出来ている様子
しかも現在手元には無いが5千兆円という大金を手にしているため本人に危機感は全く無い