八話
続くほのぼの回(捕虜)
降り下ろされた剣と鞘が激しくぶつかり火花を散らした
間髪入れずに放たれる二撃目を後ろに跳んでかわし、すぐに肉薄。槍のように構えた鞘を連続で突き出す。
しかしそれは容易に打ち払われ再びぶつかり合う。
純粋な力比べ。全力で剣を抑え込みながら骸骨さんの虚ろな眼孔を睨んだ。
さて、現在俺は砦の広間で骸骨さんたちと訓練中。
捕虜生活というのはやることがなく情報収集するにもミューゼさんが出掛けている間はできない。騎士さんたちからも話は聞けるだけ聞いた。
一言で言うと暇をもて余していたら骸骨さんたちが訓練しようと誘ってくれたのだ。
それからというもの一日に一時間ぐらいこうやって戦闘訓練と称して戦ってみたり骸骨さん同士が戦っているのを見たりしている。
しかし骸骨さんたちって骨しか残ってないのにどこからこんなパワーを出してるのやら。筋肉不要説爆誕である。
「カンガエゴトスルヨユウアンノカヨッ、ト」
「あ」
そんなことを考えてたのが悪かったのだろう。刃先に滑らすように鞘を流されてバランスが崩れる。そこに尻に蹴りを入れられて床に転がった。
「マダマダダナボウズ。 ナッチャイナイナ」
「ぐむ・・・」
決着が着いたのを見てギャラリーとなっていた他の骸骨さんたちが騒がしくなった。
「ヨッシャ! ツギハオレガキタエテヤロウ!」
「ごめん、そろそろ疲れた」
「ソウカ・・・」
「ジャアオレトモギセンデモスルカ」
骸骨さんたちは基本的には陽気な性格で生前はよくこうやってわいわい騒いでいたという。
しかし慣れてはきたけど骸骨さんたちの声って聞き取りづらい。いやそもそも声帯ないのにどうやって喋ってんだって話だけども。まさにファンタジー。
ここ数日はこんな感じわいわいやっている。
捕虜のくせに何やってんだって感じだが。
そんな俺たちの様子をミューゼさんと騎士さんは近くで見ていることが多い。
監視なのかと思ったが合間合間にちょくちょくアドバイスくれるので暇潰ししているだけかもしれない。
というか今更だけど俺敵として見られてないんじゃないか。
情報収集だってミューゼさんは聞けば大体答えてくれる。
なんだよ魔界六魔将って。そういう情報ってもう少し緊張感ある雰囲気でさ・・・それこそ強大な敵を倒した時に初めて明かされるタイプの情報だろうに。
間違ってもお茶してる時の雑談で明かされることではない。
「おつかれさまだね。 でも欲を言えばもう少し早く早く動けるようになって欲しいかな」
「武器を振る速度は遅く軌道も大雑把。 素人よりはマシだがまだまだ基礎が出来ていないな」
「評価が厳しくて泣きそう」
こちらとら一ヶ月ほど前までは素人だったのだが。いや勝手に単独行動して捕まった身としては言い訳できないけどね?
「ふふ、なら今度はボクたちが稽古をつけてあげようか?」
「それはありがたいけど、大丈夫なの? 人間鍛えたりして」
同僚に「ウラギリモノダー」とか言われない?
「そんなことを気にする奴なんていないさ。 ボクらは基本お互いに不干渉だからね」
「そうなの?」
「魔王様の命令には従う。 協力しろと命じられたら協力だってする。 だけど普段から関わったりしない。 ま、繋がりなんてそんなものさ」
騎士さんも頷いている。
ということは完全に仕事だけの付き合いなのか。ビジネススタイル過ぎる。
いやみんなでわいわいやってるよりそういうの魔王軍っぽいけども。
となるとあれか。人間が持ちこたえてるのって敵が連携とかしてこないからか。この先大丈夫か人類。
「そういえば、ひとつ聞いてもいいかい?」
「いいよ、いろいろ質問に答えてもらってるわけだし」
「夜に魔力なんて空に飛ばして何をしてたんだい?」
おおう、バレてた。まあわりかし堂々とやってたし隠す方法も知らなかったので残念ながら当然である。
だけどそれよりも、そんなことよりもずっと驚いたことがある。
「・・・あれって魔力なの?」
初耳である。
「・・・呆れた。 まさか知らないで使っていたのかい?」
「ファ、ファンタジー的なパワーだとは予想はしてたし・・・」
イメージとしては電波飛ばしてたけど。
というかそれよりも、だ。
「それって変じゃない? 俺、魔力って人間には扱えないものだって教わったよ?」
まさか俺には魔族の血が流れているとか!?なにそれちょっとわくわくする!
「うーん、見たところボクたちとお仲間ってわけでもなさそうだ」
あ、違うんですね。純人間なんですね。知ってた。
・・・ちょっとがっかり。いやヒューマンでいいんだけども。ほら、男の子としてはね?
「それならなんで俺は魔力なんて使えるの?」
「さあ?」
原因不明とかなにそれこわい。
「ほんと、何なんだろうね君は。 見てて退屈しないよ」
「こっちは割と謎生物認定されてるんだけど」
「ま、大昔の人間は魔力を扱えたって話もある。 もしかしたら一種の先祖返りなんじゃないかな」
「それはそれでなんか良い」
ロマンがあるよね、そういうの。
「それで、何をしていたんだい?」
あ、その話まだ終わってなかったの?
うーん、女神さまのことを知らせるのはなぁ・・・電波な人だと思われないだろうか。
いやまあ夜空に向かって魔力飛ばしてた時点でアレな人だろうけども。
「えーと、あれだよ・・・救難信号、的な?」
「救難・・・なんだって?」
「簡単に言えば自分はここにいるって合図的なものができればなー、と。 もしわかるなら俺が無事だってことも伝わるし」
「なるほどね。 でも人間で魔力を感じ取れる奴なんているのかい?」
「その辺はほら、ダメ元で」
女神さま以外にはエルザも気づきそうだけど。勇者なんだから魔力とかもわかるでしょ。
「とはいえミューゼさんみんなに取り返したければ助けにこいって言ってたしここの場所も伝えてあるだろうから無駄といえば無駄なんだよね」
「・・・あ」
「え?」
なにその反応。え?もしかして伝えてない?待ちぼうけ?
「ミューゼさん?」
「ははは、うっかりしてたよ。いやはやボクも存外浮かれていたらしい 」
ええー。そのうっかりのせいで完全なる孤立無援になるとこだったんですがそれは。昔から魔王だって姫拐うときは魔王城まで取りに来てねって言うのに。
ぶつぶつ文句を言っていたらそっと顔に手を添えられて見つめられ・・・って、近い近い近い。
「君が悪いんだよ? そんなに面白そうなんだもの。 ついボクが興味を持ってもしかたないじゃないか」
ええ・・・やめてください責任転嫁とか。あと面白そうとかなに?どういうことなの。
「・・・というかこれって俺、口説かれてる?」
「そのつもりなんだけどね。 もう少し慌ててくれてもいいんじゃないかい?」
「残念だけどもっとドギツイのやられたことあるからね」
なにせ昔に熱烈な求愛されたことあるので。
「主よ、そこまでにしておけ」
「なんだい、良いところなのに」
「このあとは街に揺さぶりをかけに行くのだろう。 街の奴らにここの位置も伝えなくてはならない」
「しかたないなぁ。 それじゃイニャス、また後で」
「はいはい、いってらっしゃい。 騎士さんもね」
「ああ。 そうだ、ロドールが訓練が終わった来るように言っていた」
「ロドールさんが? わかった、行ってみるよ」
えーと、たしかロドールさんは見張り台にいることが多かったな。
そんなわけで見張り台やってきた。
そこにはローブに身を包んだスケルトンが椅子に腰掛け古ぼけたボロボロの本を読んでいた。
「ロドールさん」
「オオ、来オッタカ」
ロドールさんはスケルトンキャスターという魔法が使えるスケルトンだ。
生前は癒術師だったらしいけどスケルトンになってからは魔法も使えるようになったとか。比較的流暢に喋れてるのもそのおかげなんだろうか。
「なんの用?」
「良イモノヲクレテヤロウト思ッテナ。 ホレ」
そう言ってロドールさんが取り出したのは鎖帷子だった。
「鎖帷子? 俺、あんまり重いのは着れないんだけど」
「ソンナコト知ットルワイ。 マア持ッテミロ」
ふむ、どれどれ・・・って!
「なにこれ軽っ!」
「コイツハ『風羽ノ鎖帷子』。 魔法ノ防具ッテヤツダ。 最モ伝説ニ詠ワレルヨウナモノジャナイガナ。 カカッテル魔法モ軽量化ダケダ」
「なるほど、不思議アイテム」
防御力は鎖帷子の本来のままだけど俺にとっては軽いだけでもありがたい代物だ。なにせ今まで布防具しか身につけてなかったからな!紙装甲すぎる。
「でもいいの? こんなもの貰って。 ロドールさん一応ミューゼさんの部下でしょ? それともミューゼさん公認?」
「タシカニ儂ラハアノ魔人二恩ガアル。 形ハドウアレ二度目ノ生ヲクレタノダカラナ。ダカラアイツラニハ従ウツモリダ。
ダガソレデモ儂ラハ人間ダ。 少ナクトモ儂ラハソノツモリダ。 ダカラ少シハ人間ノタメニナルコトヲシヨウトオモッテナ」
「そっか。 うん、ありがと。 大事に使わせてもらうね」
『風羽の鎖帷子』を手に入れた!
って感じかね。なんにせよ良さげな防具だやったー!たぶんレア物!
とりあえず女神さまに自慢しよう!なんか良いの貰ったって!
今忙しくて書く時間がとれねえ・・・。
うん、大まかな設定とかまとめておこう。忘れてもいいように。
あと書いといてなんだけど骸骨さんたちのセリフめっちゃ読みづらい。