七話
話をどこで切るか迷ったのとFGOが楽しすぎた。
あとタイトル変えました。
魔人さん(ミューゼという名前だと教えてもらった)に拐われてきた俺は現在放棄された砦の一室に軟禁されていた。
拐われてしまいどうなることやらと不安に思っていたが牢屋に入れられなかったし監視も緩いしでわりかしのんびりできている。昨日はしゃいだ反動が来てぐったり気味なのでちょうど良いといえばちょうど良い。
しかも抵抗しない、無闇に暴れないことを条件に拘束も解いてもらった。てっきり助けがくるまで囚われヒロイン的な生活かと思っていたのでこれは良い誤算だ。
もっとも暴れても大したこと出来んけどな!子供の癇癪のようにあっさり鎮圧されるのが目に浮かぶ。
不自由なのは外に出れないくらいなので・・・おや?家で暮らしてた頃とあんまり変わらんぞ?
とはいえ逃げ出すことも出来そうにない。この廃砦には至るところに骸骨、スケルトンが徘徊してるし騎士さんが常に近くにいる。今も部屋の外にいるはずだ。
なによりここがどこかわからないから逃げてもどこ行けばいいのかわからない。
なので大人しく救出を待つのが利口というやつだろう。
とはいえ暇っちゃ暇なので女神さまに現状報告を兼ねて連絡しておこう。
『なんで無茶したんですかぁ! 心配したんですからね!?』
めっちゃ怒られた。
『怒りますよ! いつまでに待っても連絡がありませんしイニャスさんの近くに強い魔力を感じますしで。 しかもいざ連絡が来てみれば拐われただなんて・・・!』
ご、ごめんなさい。心配かけました・・・。
『・・・とにかく無事でよかったです。 酷い目にあったりなんかもないんですよね?』
うん、まだ捕まったばかりだからなんとも言えないけど乱暴はされてない。むしろ部屋を貰ったあたり扱いは破格ではないかと。
しかし、外には出してもらえないから脱出は難しいんだよね。そもそもここがどの辺かわからないし。部屋に古い地図あったけど意味ねえ。
『おそらくですが港町から少し離れた所にある森、その中にある古い砦ではないかと』
・・・女神さまが役にたった、だと・・・!?
『そ、そんな信じられないって感じで言わなくてもいいじゃないですか! 私だっていろいろとできることがないか探してるんですよ!?』
ほら、今までが今までだからね。
『もう! ・・・と、言いましてもまだイニャスさんの大まかな位置がわかるようになっただけなんですけどね・・・』
マップが使えるだけでもありがたいけどねえ。今までは勇者の位置しかわからなかったんだし。
しかし思ってたよりは町に近い所にいるのか。
でも町まで行くのは俺一人じゃ無理かな。町まで三日はかかりそうだし森とか抜ける必要もあるし。
『そうですね・・・ですがイニャスさんのことを助けに来いと言った以上魔人はその砦の位置を明かしているでしょう。 近いうちに助けが来るはずです』
そうでなくてもライナードたちは来てくれるだろう。あんまり無茶はしてほしくないけど。
『それから私が勇者にこの事を伝えましょう。 そうすれば彼女はきっとイニャスさんを助けに行くに違いありません』
ああ、うん。それは来るね、絶対に。ああ、大丈夫かな・・・生態系とか。また血みどろケチャップ祭とか嫌だよ俺。
・・・しかし真っ赤な未来は置いといてそれまでどうしようか。
『でしたらそれまでイニャスさんはそこで情報収集をしてくれませんか?』
情報収集とな?
『はい。 私もですがイニャスさんも魔族のことほとんど何も知りませんよね?』
うん、正直ミューゼさんみたいな魔人って初めて見た。てっきり魔族とか「ジンルイ、コロス!」な感じかと思ってたけど案外普通に話せたし。
『ですからこれを機に彼らについて何か知れればと思うんです。 何故人間と敵対するのか、何が目的なのか。 それがわからなければ和解することもできませんから』
なるほど。そういうことなら任せてほしい。戦闘力的に役に立たない分サポートとしては活躍してみせよう。
『ふふ、期待してますね。 それではまた後で。 イニャスさん、私が頼んだことですが、くれぐれも無理しないでくださいね』
通信終了、っと。
これで救出の目処が立って一安心だ。別の不安が産まれたわけだけど今は全力で目をそらしておこう。
しかし如何に勇者といえどすぐこの場に来ることはできない。いやめっちゃ早くは来そうだけどそれでも半月はかかるだろう。
それだけ時間があるなら情報収集も急ぐ必要はない。というか急いてもそもそもやれること少ないからのんびりやろう。
これだけ情報がないなら普通にお喋りするだけでもわかることあるだろうから
なので居住スペースの掃除をするよ!
いや、だってしばらく暮らすのに埃っぽいままとかマジ勘弁ですし。拠点整備の一環ですし。
そういうわけでちまちま掃除してたらなんと騎士さんと骸骨さんたちが手伝ってくれることになった。わぁい、優しい世界!
「骸骨さんそっちの机動かしてくれる? その下掃いちゃうから」
「アイヨー」
「ボウズ、ゴミハドウスル?」
「袋詰めにして砦の入口のあたりにまとめといて」
うーん人手、いや骨手があると捗るなぁ。このまま物量でゴミを駆逐してしまおう。
ちなみにこの骸骨さんたちはネクロマンサーでもあるミューゼさんが蘇らせた元人間だ。
港町で戦った量産型スケルトンとは違って生前の記憶があるらしくて会話もできる。
だから「それなりに人間に恨みはあるけど流石に傷つけるのはちょっとなー」とか思ってたらミューゼさんが作戦から外してくれたんだそうだ。やさしい!
「騎士さんもありがとうね。 こんな雑用手伝ってくれて」
「・・・いや、私は騎士などではない。 この身は何もない・・・何もないのだ」
なんかシリアスっぽいけど騎士さんが手に持っているのは箒だ。しかもさっき出来心で騎士さんの頭に三角巾着けちゃったから絵面がひでえ!誰か剣持ってきて!やり直して!
シリアスの無駄遣いをしつつも掃除は進み半日も経つ頃には一通りの汚れを落とすことができた。
でも細かいところを見ればまだ汚れが残っている部分はある。どうせ時間はあるので何日かかけてじわじわと駆逐していこう。
「わー・・・ボクが留守の間に見違えるくらい綺麗になってるねぇ」
「あ、ミューゼさんお帰りなさい。 さっきお風呂掃除するついでに沸かしといたから入ってきたら?」
「あ、うん、じゃあお言葉に甘えようかな。 ・・・おかしいぞ、実家よりも至れり尽くせりな気がする」
いやはやまさか倉庫に火石や水石がたんまりあるなんて。おかげでお風呂沸かすのがスッゴい楽だった。
あ、火石や水石っていうのは魔石の一種でその名の通り火や水の力が宿った石のことだ。
水石は割るとたくさんの水が出てくるのでそれで風呂を満たしそこに熱を発する火石をいくつか投げ込んだ。それだけでお風呂が沸くのだからそりゃお風呂も広まるよね。
しかも力を使い果たした魔石は消えて無くなるから石を片付ける必要もない。便利グッズかよ。
ま、それはいい。便利だし変わらないんだしどういう仕組みかは考えるだけ無駄ってもんだ。
それよかお腹すいたからミューゼさんがお風呂に入っているうちにご飯作っちゃおう。食べてるときにお喋りもできるだろうから一石二鳥になるはず。
そんなわけで砦の保存庫に入っていた食材で簡単な料理を作った。
メニューは特にグルメというわけでもないのでてきとーなお肉をてきとーに味付けして焼いたのとてきとーに盛り付けたサラダ、あとはパンだけである。どうあがいても家庭料理。
なお騎士さんと骸骨さんたちは残念ながら食べられないから作ったのは俺とミューゼさんの二人分だけだ。
普段から二人分作ってたからやり易いっちゃやり易いけどちょっと寂しかったりする。
「ええー、なんだいこの至れり尽くせりは? 帰ったらお風呂沸いてて出てきたらご飯が用意されてるとか初めての経験だぞ? これは駄目になりそうだ」
「そういえば適当に用意したけどなにか食べれないものとかあった? 魔族の人がなに食べるのか知らないから俺が食べれるもの作っちゃったけど」
「あ、ああ。 ボクらも食べるものは人間と変わらないから平気さ」
へー、その辺変わらないのか。まあそのビジュアルで虫が主食ですとか言われたらドン引きだけど。
切り分けた肉を口に運んだミューゼさんは更に続けた。
「その辺りは人間によく誤解されているんだ。 書物なんかじゃボクたちは人の悪感情を食べるだとか人間を拐って頭からかじるとか書かれることもあるけどそんなことはない。」
「それって魔王って人?も同じなの?」
「そうさ。 きっと君たち人間が思っているよりも残虐じゃないし冷血でもない。 信じられないだろうけどね」
「・・・そんな人だったらなんでこんな戦いが起こっているのかな? 」
そう言うとミューゼさんはなんとも言えない顔をした。
「それは・・・難しい話だね。 人間と魔族の昔からの因縁、とも言えるし。 正直なところボクも最近の強引な攻勢には疑問はあってね」
「そんなこと言っても大丈夫なの? ミューゼさん、偉いんでしょ? 聞かれて立場が悪くなるとかは・・・」
「大丈夫さ。 なんたって今ここにはボクと君しかいないからね」
骸骨さんたちと騎士さんは砦の警備中だ。昨日の今日でライナードたちが攻めてくるとか思えないけど念のため、だそうだ。うーん、油断がないとか手強い。ミューゼさん確実に終盤のボスでしょ。
「にしても君は変わってるね。 ボクと君は敵同士で、種族だって違うのに。 なのに心配をするなんて・・・ほんと変わってる」
「こうして話ができるなら敵じゃなくなる可能性もあるよ。 きっと。 本当に殺し合うことしかできない奴とは話すらできないから」
でも魔族とは話ができる。少なくともミューゼさんや騎士さんとは話せる。話を聞いてくれる。
なら希望はあるに違いない。
「話ができるなら俺は話したいな。 話して相手のことを知って分かり合って、友達になりたい。 そっちの方がきっと楽しいからね」
「・・・そうだね。 そんな日が来ることをボクも願うよ」
そう言って笑うミューゼさん。
その笑顔を見て俺は本当にそうだったらいいと思った。
もうちょっと捕虜(?)生活書いたら物語動かそう。