5.ということはサファエアは最初から関係なかったのか
「ニーシャは魔法園芸の授業中、サファエアに水をかけられた!」
「馬鹿か? そんな事実はないしウソなのでいいがかりはやめろよって無効!」
「ある日ニーシャが鞄を開けるとヘビの抜け殻が! 俺も入っているのを見たぞ! サファエアのしわざだろう!」
「俺が入れるわけがないしそれは自分でいれてウソをついているだけしょ?
いれた瞬間とかいうのがあるわけがないからその犯罪は告発できなかった! 無効!」
「魔法でいやがらせをされた!
ある日庭園を歩いていると突然の大雨が!」
「ただの通り雨だろ自意識過剰。
なんでも俺の魔法のせいにしないでください。無効!」
悲しみにのしかかった水崖論は聞くだけでまともな議郎が遠ざかる
高等学校の卒業パーティにあるまじきお子様レベルのいいがかりわるぐち合戦はつづく。
このわるぐち合戦にはギャラリー観戦者多数なので公共の場の多人数の目があるから有罪扱いだろうが無罪扱いだろうが噂にされて恥ずかしい思いをすることになるのは火を煮るより明らか。
だケド合戦をやめると俺がわるものの扱いのままだからやめるわけにはいかなかった。
むしろディークは恥ずかしくないのだろうか?
まさか今日まで恥というものを全く知らないで生きてきたわけでもなかろうに。
ディークは必死にやってくるがその発言はどれも「ってニーシャが言ってた」
と語尾につけても違和感ないくらい無責任だから
全然ノーダメージでそのたびに迎撃するのだが
次の発言の反論は難しかった。
「ある日ニーシャがサファエアにお茶会に誘われていくと複数の貴族に平民と馬鹿にされた!
これなら同席者がいるから誰も知らないということはないだろう!」
「確かに入学のはじめのころに一回だけお茶会には誘ってやったが
それはニーシャがクラスで孤立しているアワレな貧弱一般人だったからで
馬鹿にされたというのはニーシャの被害妄想でしょう?」
「だがサファエアにどのような意図だろうとニーシャはこのお茶会で傷ついたといっている!」
「そうだな悪口というものは言った側より言われた側の気持ちが大事かもしれない
お前が気づいてるかしらん今まさに俺が悪口を言われてる事実にいい加減気づけよ」
ディークは俺のイヤミを無視してようやく一矢報いれそうだぞと熱血の笑顔がある。
俺は無視しかえしてニーシャを見るとなんか最初は余裕ぶってたのにここまで面倒になるとは思ってなかったというより単純に飽きたのかウンザリ顔だった。
まさかとは思うが騒ぎになるだけで十分でここまでする気はなかったのか?
「おいニーシャ。
お前が傷ついたとかいう発言はなんですか?
ものによっては謝罪してやっていいぞ」
「…えー、そう、たしか、平民の分際で、と」
「嘘つくなよ前歯へし折られたいのかお前
今からたった二年と十か月と十一日と三時間まえのことも覚えてないのかよ?」
「そ、そんな昔のこと覚えてるわけないじゃない」
「俺は覚えている。
俺はお茶会のホストなのだがみんなが退屈しないように話題を振りまいているとお前に見慣れない庶民のアクセサリ装備見えたから『素敵なネックレスですね』と社交辞令でほめるとはにかみなから『母の形見でして』と言ったでしょう?」
まさかそんな昔の話題を掘り返されるとは思ってないニーシャはすっとぼけた返事をするのだが俺はサファエアの記憶が忘れていく先、心の奥底にいたがわの存在だからつまり昔のことほどよく覚えていた。
ヒトは忘れたことほど心の奥世界でひっそり舞台裏にいるだよ。
「その話題に便乗してほかの者が『流行のものではないのですね』『今の流行は小さめのホーリーストーンでして』と進みそれ以降お前が口を開く機会はあいずちとかだけでお茶会は終わった。
そして話の流れでニーシャはみんなに流行の香と化粧をめぐんでもらっていた。
お前にはそれほど発言権はまったくなかったが
つまらなそうでなくむしろ貴族の話題に楽しそうな顔が見えたんだがな。
平民の分際で、だと?
俺のホストのお茶会ではそんな無礼者は完全にシャッタアウトされていた。
もう一度言うが嘘つくなよお前前歯へし折られたいのか?
俺はいま具体的な嘘聞いて猛烈な怒りに襲われているぞ」
「そ、そんなの出鱈目よ!
ひどいわサファエア!」
そこでわっとうそなきするニーシャを見てディークは正義の怒りの形相で俺をにらんできた。
「貴様! よくもニーシャをなかせたな!」
「ニーシャはいま『そんなの出鱈目』といった!
これはお茶会で馬鹿にされたというのは出鱈目という意味だからやはり無実だった!」
「いや違うだろ!」
「お前ほど言葉の意味の文脈の読み取れない馬鹿をみたことがない
ここはそういう意味にとれうるでしょ?」
「むむむ、くそっ、言われてみれば確かにそうかも……」
「ということはサファエアは最初から関係なかったのか。
よって無効!」
俺はじょじょに活動のタイムリミットが近づいてる感覚になりながらも自信満々にへりくつ論破していった。
9/9加筆修正。