4.じゃあ証拠だしてみろよできないんなら俺の勝ち
何回も同じ話を別の口からしゃべる話だから大した内容はそもそもなかった
「まずはお前らが俺の罪とかいうありもしない絵の餅を書いて口を開くべき
イキナリ言われた時はショックの麻痺で言葉がでなかったが
実はつまらない自演告発だから簡単に論破できる」
「いいだろう!」
俺が正正堂堂とにげずに挑むとここからは論破バトルなのだがディークはまず第一の罪を滔々と俺のまぼろしの罪をオペラばりの熱声で言い出した。
なにごとかと思ったが普通にしゃべってるつもりらしい。
吟遊詩人張りの熱唱だから歌に込められた感情がすごく俺をわるもの扱いの念が強いんだがそこから単純に事実だけを抜き出すとこうなる。
ある場所にニーシャが一人で歩いている。
そこへ後ろ近づいた俺が不意打ちでニーシャに耳元に悪口を言う(バリエーション多数)
ニーシャは深く傷ついた。
俺はサッとどっかいったから誰も目撃者はいないし悪口を聞いたものもいない。
物理的に証拠はない。
あるのはニーシャの訴えだけ
以上
バカか?
めのまえに出現する勝手に決めつける馬鹿がウザイ
俺は言った。
「バカが移るもういいからバカは黙ってろ。
その意見について俺はやってなどいないというだけ」
「ならば無実を証明して見せろ!」
「じゃあそういうお前は罪の証拠を提出できるのかよ?
みろ。見事なカウンターで返した」
だれかを告発するばあい実は疑わしいだけではあまり裁きにならないのがこの国の法律。
もちろん不敬罪とか、貴族にナメた態度とかは現場で即座に裁かれる罪もあるが
それは正式な場の話だからこういった口先だけの晒し行為だと極論、言ったもの勝ちになる。
本来「ひどいことされた」発言と「そんなことはしてない」発言は同列に信頼度しかない。
が、だいたいのばあい声が大きくていかにも真に迫ったとまわりが思う意見、おもに「ひどいことされた勢」の声が噂と化して優先される。
そのほうがおもしろいからな。
噂話は話半分に聞いておけという名台詞もあるが半分は確実に聞いていることになるから貴族の地位ともなるとその噂話は致命的な致命傷になる。
だから第三者的な立場から見た冷静な意見が必要というにそれがないときた。
「この事件に対して有罪の意見と無罪の意見が出てどちらにも証拠の証明ができない。
よって事件の真相は理論的に誰にも判断不可能!
これ以上はなしてても時間の無駄だし感情論だからこの論争は無効になって俺の勝ち」
「なにっ! なぜそうなる!」
熱血に傾きすぎて頭が悪いのかディークは理解できてなさそうっぽいのが顔に表れていた。
「川流れの理論、ですか」
一歩引いた立ち位置で見ていたラヴァンスは俺の言いたいことが気づいてくれたのか口を開いた。
「私としたことが、なぜこんな単純な理論が頭から抜けていたのか……」
「つまりどういうことだ! わかりやすく説明せよラヴァンス!」
「ディーク様、良いですか。
ニーシャはサファエアから嫌がらせを受けたといっています。
サファエアはニーシャには嫌がらせをしていないといっています。
嫌がらせをした現場をみたものはいません。
嫌がらせが形として残るものはありません。
つまり客観性がないのです」
「客観性とは」
おい、王位継承権もち。
おまえ家に帰って勉強しろ
「だれもがそうだと納得できるものです。
今挙げた話だけを聞けば、人によってはニーシャが正しいと思うものとサファエアが正しいと思うものと意見がわかれることでしょう」
「むむむ。不本意だがそういう意見もあるかもしれないな」
「だれもがそうだと納得できない場合。
二人の意見のどちらかが正しいか納得できる別のものが必要です。
先ほどディーク様が述べたように、何らかの証明があればよいのです。
そしてどちらからもその証明もなければ」
「なければ?」
「これ以上はまともな話し合いにならず、根拠なき罵り合いにしかなりませんので
いったんその件について争わず、別の事柄で双方が納得できるようにしましょう
という風に一旦保留することが川流れの理論です」
「ならば嫌がらせを受けたニーシャは泣き寝入りしろというのか!」
「ディーク様。
ほんの少し前、私もまた加担していたことではありますが」
声が大きいものの意見が常に正しいとは限らない。
だからたくさんの小さな声も集めることこそ人の上に立つものではないのか。
ラヴァンスがそういうとなんかいいこと言った空気になったっぽい雰囲気でわずかに緊張がそげたのだがラヴァンスが言いたいことはちゃんとディークに伝わったみたいで納得したのか
「だがサファエア! お前の罪はこれだけではないぞ!
いくぞ! お前の罪を数え上げる!」
とやるき出してるから当然すべて叩き落として撃墜可能なんだが気合を込めてこう返した。
「俺に罪とかないから
ゼロを何回数えてもゼロだから数えても無駄」
2016/9/8加筆修正。