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カエル

オリオン

作者: KazekaHun

22歳の年末に考える。

あたしはちゃんと大人になれているんだろうか、なんて。

なれてなんかいやしないんじゃないだろうかなんて。

思えば中学に上がるとき全く実感していなかった。

何か小学生とは違いがあるのだと思っていたのに何も変わらなかった。

もっと分かりやすい進化があると思っていたのに現実はズルズルと居場所と着る服が変わっただけだった。

内面的な変化を期待していたんだ。

だけども今なら分かるが、それはおかしな話なんだろう。

入学式を迎えた瞬間にそれまでとは違う人間になってしまうなんて、本当にあったらホラーでしかない。

それなのに何にも知らない馬鹿だった当時のあたしは、そうなんだと勝手に期待して、そうでないと知って拍子抜けした。

そして、何も変わらないのだと勘違いして、成長することを怠ってしまった。ように思う。

間違ってしまったんだ。

劇的な進化はないけれど、日々の成長はある。少しずつ大きくなっていくのだろうし、別に中学生だろうと小学生だろうと人間が成長していくことは変わらない。それが分からなかったんだ。

内面的な変化なんてないけれど、居場所と着る服は変わっている。小学生の中身のまま中学生になったあたしはその制服が似合うように、そうなるように少しずつ成長していかなければいけなかったんだ。

ああ、当時のあたしは人は勝手に成長するものだと思っていた。自分が何もしなくても、歳をとればそれ相応になるものだとばかり。体は大きくなるのだけれど。

いやだね。

「ほんとにいやだ……」

みんなもがいていたんだ。年相応に、現実をみつめて、それを掴もうとして。

あたしはそれをしなかった。

それまでと同じように遊びたいように遊んでいただけだった。

子供のように遊んでいた。どうしてみんなも自分と同じようにできないのか疑問に感じながら遊んでいた。彼らの目から見れば本当に馬鹿に見えていただろう。

恥ずかしいね。

高校に入るときも、大学に入るときも何も感じなかったあたしは背伸びして大人を気取るようなこともせずに、体格に精神を擦り合わせることもせずに、理想の姿を模倣して型にはまることもせずに、そういったダサい行為を何一つ、成長するのに必要な刺激としてのカッコ悪さを何一つやらかさずに来てしまった。

子供の精神のまま、ここまで。

タバコの一つでも吸えばよかったんだ。

理想の大人に近づくための方法として。


子供のあたしが背伸びをする。

腕の長さを、あたしの背の高さを確認する。

決して大きいほうではないけれどタバコを買って年齢確認されような見た目ではない。

「子供が大人のふりをするより大変だぞ」

大人が大人になるだなんて意味がわからない。

「手遅れでなければいいのだけれど」あたしは言った。

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