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親愛なる貴婦人へ

作者: 日向七帆

「親愛なる貴婦人へ」と名づけたブーケが、私の手元にある。

渡したかった相手「親愛なる貴婦人」が亡き人だから。


彼女は、亡き人である叔母は、厳しい人だったが、良き理解者だった。この人がいなかったら、私は、大学受験はおろか、高校の卒業すら放棄していただろう。


厳しいことをたくさん言われ、私の生意気盛りもあって、叔母を避けた時期もあったが、それでも、気にかけてくれた。私が避けていたのを気付いてた時には、離れて見守ってくれていた。


家に居場所がないと感じて家出した時も、叔母は、しっかり抱きしめてくれた。母との関係に悩む私に、どれだけ救いになっただろう。


時は流れて、私がクレイ講師および作家になった時、小さな個展会場に、笑顔でに駆けつけてくれた叔母。



そんな叔母が、ある冬、倒れた。意識不明ーー。


「きっと悪口言ったら、怒って、戻ってくるよ。」

来る日も来る日も、心にもない悪口を言い続けた。悪口を言いながら、クレイのブーケを作っていた。


半月後、ブーケが出来上がると同時に連絡があった。悪口の甲斐もなく、帰らぬ人となった。次の個展も、来てくれると思っていたのに。元気になったらこのブーケを渡そうと思っていたのに。何一つ、恩返ししてないのに。


渡せないまま、そのブーケは、思い出の品として、私の手元に置いてある。個展にも毎回、お供して、お客様を引きつけている、すごいヤツになった。


渡せなかったけど、叔母が「親愛なる貴婦人」がこうして見守ってくれている気がしている。


叔母さん、たくさんの思いやりをありがとう。

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