表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/25

無黒



 さてと、どうしようか。

 そういえばあの変な男を殴り飛ばした時異様に力があったな、魔力を纏うと身体能力が上がるのか?

 そう思って自分の体を魔力で纏う。

 わかんねー動いて見ないとでも今動くわけには、お姉さんが視線を外してくれたらなぁ


「…………」


「ん……?」


 無言でお姉さんの後ろを真剣な顔で見つめて見た。

 お姉さんも何かあるのかと、釣られて後ろを見る。

 チャンス今しかない!

 思いっきり一歩踏み出すと、ギルドの外の壁にぶつかりそうになり、慌てて方向転換なんとか助かった。


「一瞬でここまでくるのか! そんなことより急いで行かないと、空腹でヤバイ」


 門に警備がいたが出て行く分には検査など無いようだ。

 そのまま南を真っ直ぐ進むと、あっという間にセンラ村についた。


「はっや!」


 魔力で強化したとはいえ5分くらいか、結構な森だったけど自分で引くほどの速さでついてしまった。

 ってか足の裏全然痛くないしもっと早く気付くべきだった。


「スミマセーン!!」


 ボロボロの家がいくつも建ち並んでるけど、まったく反応がない。


「すっみまっせーん、冒険者ギルドからきたものなんですけどーーーー」


 こんな大声だしてもダメか……なんだよ、とりあえず人探すか。

 村を散策しているが人っ子一人見当たらない。


「所々生活感あるのになぁ」


 人が住んでいる後はあるが、人が見当たらない。


「どうなっ「バケモノがこっちにくるでない!!」お?」


 人の声、しかも襲われてるっぽいぞ。

 さっそくゴブリン登場か?

 魔力強化をして声がした方に飛んでいく。


 飛ばし過ぎた……


 10人ほどの人と、多分ゴブリンであろう影が向かい合っているとこを砂塵を巻き上げて、通り過ぎた。


「な、なんじゃ」


 10人ぐらいの人が口々に狼狽えてる。

 恥ずかしくて戻りにくい。

 今度は失敗しないように割とゆっくり戻る。


「あのー……初めましてギルドから来ました。

 キリガヤです」


「ギルド?もしかして依頼を受けて下さったのか?た、助けて下さいじゃ」


 一番先頭にいたおじいちゃんに挨拶したが、最初は何のことか分からず首を傾げていた。

 おじいいちゃんは、依頼で来たと気づいた瞬間、藁にもすがるように助けを求めてきた。

 とりあえず頷いてゴブリンの方を向き、少しづつ砂塵が晴れて姿が見えてきた。


「え、えー……」


 俺の知ってるゴブリンの3倍くらいデカイんですが……

 ビックリし過ぎて、思わず両手で握っていたローブを離してしまった程だ。


「グッフォ」


 3メートルはあろうかというゴブリンが、5匹とも俺の股間を見つめてる。

 緑の身体にきったない腰布、性欲旺盛、身体の大きさ以外想像どうりかよ。

 5匹のゴブリンの腰布が反り返る。



 ヤバイ……殺られる(性的な意味で)



 男もイケるとは聞いてない……



「ググッホ」


 謎のかけ声と、緑の頬を少し赤らめながら襲ってくる。


「イヤァァァーーー」


 か弱い叫び声を出しながら反射的に魔力の塊をぶつける。


「ギャッ?」


 気持ち悪い叫び声とともに、5匹とも後ろにぶっ倒れる。

 いけんじゃね? そう思って魔力でギロチンのような形を5個急いで生成する。

 それを思いっきりゴブリンに落とした。


「やったのか……?」


 思わずフラグを建ててしまったが、叫び声も無くビックんと一度はね動かなくなった。

 ゴブリンの息子は反り返ったままだが……ギリギリ腰布で隠れてるのが幸いか。


「あの? 終わったんですよね?」


 ローブを戻し振り返って聞いて見るが、返事がない。

 全員呆然とゴブリンの死骸を見つめている。


「あのー?」


「えっ?あ、ありがとうございますじゃ」


 俺の問いかけにおじいちゃんがハッとして、感謝を述べるが目線はまだ死骸の方を向いている。 

 振り返ってみて見るが、やっぱりちゃんと死んでいる。

 まぁ、アレが反り返ったままなのが珍しいのかもしれない


「後始末お願いしてもいいですか?」


「もちろんじゃ、お礼もしたいじゃて、是非村に来て欲しいのじゃ」


 そういうおじいちゃんの後ろでは、男達が泣きながら抱きしめあっている。

 そうだろう、あのまま捕まってたら犯されてもおかしくなかったし。



 ゴブリンは男もイケる……絶対覚えとこう。


 その後おじいちゃんについて行って、一軒の家で待たされている。

 雨風しのげる家というのが久しぶりで、存分に寛いでいると、扉が開きさっきのおじいちゃんが入ってきた。

 慌てて開いたローブを戻し向き合うように座る。



「この度は、本当にありがとうございますじゃて」


「いえいえ、どういたしまして」


 なんか気持ちいいな。

 ついつい調子に乗ってしまう。


「あっ、改めまして魔法使いやってますキリガヤです」


「マホウツカイ? 私はこの村の村長のセンラ・ルファムじゃて、もう一度言わせてもらうじゃ、本当にありがとうじゃて」


「やっぱり村長ですか、ここら辺はテンプレなんだよな……」


「てん……ぷれい??」


「ああ、こちらの話です。

 そういえばこの村には人がいないみたいですけど、さっきいた人達で全員なんですか?」


 この家に来る時も人とは合わなかったが、明らかに建物は多くの人が住めるほど建っていて、少し不思議に思っていた。


「いえ本来はもっといますじゃ、今は戦えるもの以外隣村に避難して貰ってるじゃ」


「そうなんですか、でも隣村合わせて戦える人が10人ほどって、少なくないですか?」


「隣村からは来てないのじゃ……」


「なんで? 結構危なかったんでしょ?」


「それは村々で決めた掟だからじゃ」


「掟??」


 何だ? 村が危機に陥っても守らないといけない掟って。


「私達の村はみての通り無黒村じゃて」


「骸村??」


 見ての通りって、生きてるように見えるんですが……

 村長をじっくり見るが黒髪、黒い瞳、曲がった腰大体歳は70くらいだろうか、少しボロい服を着ていて、これといって見て分かることは無いんだが……


「無黒を知らなんじゃて??」


 驚いたように聞いてくるが、骸ぐらい知ってるわっ! っと言いたいが意味が違うかもしれないし。


「俺の知ってる骸違うみたいですね」


「無黒と言うのは私のように黒髪、黒い瞳のことを言うんじゃて」


 そういえば、最初に会った変な男にも骸って言われたな。


「髪と目の色は魔術の特性なんじゃて」


「なるほどそれで黒髪、黒い瞳は特性が無いと?」


 そう予測を口にするが、村長が首を横に振りながら答える。


「特性が無いんじゃないんじゃ、使えんのじゃて、無黒以外は特性じゃ無くても努力次第でいろんな魔術が使えるのじゃ、無黒はその魔術の源の魔力が使えんのじゃて、それを揶揄して何も無い、死人と同じ骸と同じ価値、無黒と呼ばれているじゃて」


 なるほど、なるほど、ん? 俺使えてるけど、まぁそれは異世界人だしこっちの人とは違うのかも、と一人で結論付けて話を進める。


「それと掟はどんな関係が?」


「無黒の殆どはまともな生活が送れんじゃて、そんな人達の最後に行き着く先が奴隷、もしくは私達のような無黒村じゃて」


 奴隷……そんなに魔術が使えないというのは大きいハンデなのか。


「だから無黒村を無くすわけにはいかないじゃて、無くなればもっと多くの仲間が困るじゃて」


「だったらなおさら、助けて貰った方がいいんじゃ無いんですか?」



「私達は弱いのじゃ、残念ながら助けて貰って共倒れ、何て容易く想像できるじゃて、だから掟を作ったじゃて、村人の避難などは協力するが、村の脅威には不可侵と言う絶対の掟じゃて」


「なるほどね、その無黒村っていうのを全滅させないが為の掟か」


「そうじゃ、人がいれば村は作れる、村があれば救われる人がいるじゃて、1つの村を見捨ててでも守らなきゃいけないものがあるじゃて」


「ならなんでこのセンラ村を捨てずに戦ってたんですか?」


「どの村に行ってもみんなギリギリの生活じゃて、避難したはいいが食う物が無く、また違う村に避難、また違う村にの繰り返しじゃて、私達は村を丸ごと移動させる為にいただけじゃ、食べ物や生活に必要なもん全部集めて、また違うところでセンラ村を作る予定だったじゃて」


「じゃあなんで依頼を?」


「村を移動させても住めるようになるには何年もかかるじゃて、正直どうしようもないギリギリ毎日を生きて来たんじゃて、あなたが来なかったら食う物も無く、多くの犠牲をはらう覚悟で村を新しくするしかなかったじゃ、本当にありがとう……じゃ」


 涙ながらに言う村長を見て、違うことを思い出していた。

 このローブをくれた子も無黒だった、そういうことか、もしかして彼女も何処かの村にいるのか。

 探そう、村長の話を聞いて分かった彼女も無黒で裕福では無いだろう、それなのに俺に食べ物とローブを……


 お礼しなきゃ命の恩人に。


「些細な物ですが食事を用意いていますじゃ、私達に出来ることなら何でもしますじゃ、お礼をさせて下さい」


 なんでも? 今なんでもと言ったな、フハハハ、じゃあお礼して貰おうか。


「服を下さい」



 これで一歩、人に近づいたぞ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ