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天使と悪魔

 俺確信しました、俺は異世界に来てしまったらしい。

 こっちに来て一週間か、色々思う事はあるし、考えないといけない事もある。



でもまず……



 誰か洋服下さい。


 衣食住全て揃ってない異世界転成何て聞いたことない。

 人影に怯えながらコソコソとしていたら、体の限界が来てしまったようだ。

 空腹もそうだが水、水が欲しい。

 もっと言えば服が欲しい。


 裏路地から裏路地へ、初めのころはThe貴族のようなお屋敷ばっかで、服が捨てられて無いか探したがまずゴミなど捨ててなかった。


 隠れているうちに貧困差が浮き彫りになるように、家が小さくボロくなっていく、今スラムのようなとこで野たれ死にしそうです。


 一歩も動けん……

「あれ涙が……はは……しょっぺー」


 何故か零れ落ちてきた涙、貴重な水分を無駄に出来るわけ無い。


「ん……人が来る」


 何も口に入れず衰弱する身体とは反比例して、神経が研ぎ澄まされているのが分かる。

 取り敢えず隠れないと、重たい重たい体を起こそうとする。

 体には何も入って無いはずなんだが身体が動かない。

 無理矢理起こそうとしたのがいけなかったのか、何もない場所で躓くように倒れてしまう。


 背中に軽く衝撃が走り、それが全身を駆け巡る、もう力何て入らない……

 背中の壁の冷たさが体中の体温を奪う……


 人が来た、もう逃げれ無いし隠せない……

 責めてものと思いで、体育座りで体を隠す。


 見られてるこれで俺にはプライドもなくなった、涙もさっきので枯れ果てたのか何も出ない。


「あ、あの……」


 この女の子の声は、俺に話掛けているのだろうか?

 顔は重たくて向けれない、何とか瞳だけは向けれた。


「大丈夫ですか?」


「寒い……」


 彼女の顔はボヤけてよく見えない、黒髪、黒い瞳、こっちに来て初めて日本人のような容姿の人を見た気がする。

 影からコソコソ人を見ると、派手な色の頭の奴ばっかりで親近感が湧かなかったが、似たような容姿の彼女を見たとき、不思議と親近感が湧いた、歳が近そうなのもその要因の一つだろう。


 彼女は何で俺に話し掛けたんだろう……

 そう思っているといい匂いが空から降ってくる。

 暖かさが全身を包み視界が暗くなった。

 迎えでもきたのか……こんなことしやがった神様には、文句の一つや二つじゃすまさねぇ、全裸にひん剥いて土下座させてやる。


「よ、良かったらどうぞ」


 そう彼女の声が聞こえ、神様への復讐を考えた俺の思考が戻ってくる。

 無理矢理顔を動かすと、匂いが遠のくとともに視界が明るくなり彼女が視界に入る。


「ローブ……なんで?」


 彼女が自分で付けていたであろう、真っ黒のローブを俺に掛けてくれていたのだ。

 本当に不思議だ、自分で言うのも嫌だが、こんな全裸の変質者に優しくするなんて。


「困った時はお互い様です、何て格好いいこと言えたらいいですけどね。」


 と苦笑いを浮かべた彼女が綺麗で目が離せなくなっていた。


「この世界は私達には厳しいですから、これくらいしかできないですけど。」


 そう言って、彼女はカバンから果物らしき物を取り出し、俺の前に置く。


「じゃあ、お互い頑張りましょう。

 負けないで下さい。」


 林檎程の大きさの、緑の果物らしき物を置いて去って行ってしまった。

 俺は無意識に果物を手にして、貪っていた。

 全てを食べ終えたと同時に、虚無感と後悔が俺を襲った。


「お礼言えなかった……」


 彼女は命の恩人だろう、その彼女にお礼すら言えなかった自分が腹立たしい。

 彼女さっき私達には生きずらい世界って、容姿も日本人よりだったし、もしかしたら彼女も別の世界からきたのだろうか。


 少し力が戻ってきて、立ち上がりながらそんなことを考える。


「お礼しなきゃ……」


 でもその前にやることがある、衣食住の確保だ。

 ボロボロでお礼に行って、また助けられたんじゃいい迷惑だ。


 幸い彼女から貰った黒のローブは、前は開いているが、両端を持って閉じれば大事なとこは全部隠せるし、行動する分には問題無さそうだ。

 まずズボンに靴、そして食べ物を確保しないと。


 行き先は決まっているギルドだ。

 夜コソコソと動いていた俺は、よく目にしていた看板を思い出す。


 そこには思いっきりカタカナでギルドと書かれていて、カタカナかよって全裸で突っ込んでしまったのを思い出す。


 近くにもあったはずだ、行こう果物一個じゃそんなに体力は戻って無いし、動ける時に動いとかないと今度こそ本当に死んでしまう。


 そして目的のギルドに到着する、看板にはギルド烈火と書かれていた。


 全裸姿を見られていたかもしれないので、目一杯ローブを深く被り、前は首元のボタン一つなので両手でローブの端と端を持ち開かないようにして隠す。


 扉は開いておりキョロキョロと中を覗いてみる。

 多分アレが受付だな。

 受付を見つけ早足で一番近い受付に向かう。


「ようこそ、ギルド烈火へ、初めての方ですか?」


 ズボンを履いて無いし、靴も履いて無いので、下半身を見られると変な目で見られるかもしれない、そう思い、受付の女性が座っている机にぶつかる程近づいて下半身を隠す。


「はい……1日暮らせる1人で出来る仕事を下さい。」


 この世界ギルドが何なのかはわからないが、俺の世界の漫画で見たようなシステムだと願うしか無い。

 むしろそうじゃないと野たれ死にしてしまう。

 本当にお願いします。

 神様、全裸にするとか思ったのは嘘ですだから神様お願いします。


「はいかしこまりました。

 じゃあ登録するので、ここに名前を書いて頂いていいですか?」


 

 神は俺を見放した。



 いい営業スマイルを向けてくるが、両手塞がっています。


「ここの枠にお願いします。」


 と指を指して営業スマイル……もうねでそんな笑顔で無理難題押し付けてくる女性は、赤い瞳と相まって悪魔の様に見えた。

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