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NO異世界NOライフ


「ちょやめろ!」


そう言って少女の腕を押さえつける。


「すみません…卑しい音を鳴らしてしまって、どうかお許しください」


「いや腹減ったら誰でもお腹なるから」


そう言って少女の顔を見る。

少女の顔は傷一つないきれいな透き通る肌をしており、髪と瞳の薄い緑がより可愛さを引き立たせていた。


「ちょっと待ってろスープ持ってくるから!」


俺はロリコンじゃないと言い聞かせながら、ドキッとしてしまった自分を隠すように走ってスープを取りに行った。


「あの……」


少女の前にスープの入った器を置くと困ったようにこちらをうかがっていた。


「食べないの?俺はお先にいただきまーす」


そう言ってあたたかいご飯に我慢が出来なくなってスープを口に流し込む。


「うんうまい!」


そういうと隣にいた少女からゴクッという喉を鳴らす音が聞こえる。


「今食べたほうがおいしいぞ!」


少女を見たときに多分奴隷として売るためにとらえられてたんだなぁと勝手に解釈してなるべく優しく微笑みかける。


「いいの…?」


「おお食え食え!奥にお代わりも…その前に」


少女に繋がっている枷と鎖が気になり外そうと近づくと、ビクッとしたかと思うと目を力いっぱい閉じて、体を震わせていた。


正直な話少女を見たときは漫画みたいだなぁなんて軽く考えていたが、実際に震えながら怯える姿を見るとそんな軽率な考えは吹っ飛んでいった。


「大丈夫だよ、ここに住んでた悪い大人は俺が全部やっつけたから」


そう優しく頭をなでるとゆっくり少女は目開いて上目遣いでこちらを見る。


「ほんとう?」


「ああ本当だ!」


そう言って少女の鎖と枷を魔力で少女が傷つかないように外す。


「色々聞きたいけどまず飯にしようぜ、腹減ってんだろ?」


「うんたべる!!」


満面の笑みでそう言うとスープの入った器を掴んでゴクゴクとすごい勢いで飲んでいく。


「あー奥にある鍋に一杯入ってくるから足りなくなったらついで来いよ」


少女は口に大量にスープを入れたままキラキラした目で何度も頷く。

それを満足げにみて俺もまたスープを口にする。


少女は食べ終わったのか器を持ってお代わりを次に行こうとするが、少し進んではチラチラとこちらの様子を窺う姿はとてもかわいかった。

顔に本当にお代わりしていいの?と書いてあるようだった。


少女にきゅんとしてしまう犯罪心芽生えそうな自分に焦ったのか


「そういえば、舌切ったのにスープ飲んでも痛くないなぁ」


と一人で呟き何とかごまかそうとしていた。





それから数分経つが戻ってこない少女が気になりスープがおいてあるところに向かう。


「逃げたのかな?外は魔物とかいるからあぶないしそんなことはないと思うんだけど…」


何かあったのかもしれないと思い鍋が置いてある所を陰から顔だけ出して様子を見る。


「これは入れすぎかも…でも食べていいって言ってたし……でもこんなに入れたら怒られちゃうかな…でも……」


と永遠に器にスープを入れては戻し入れては戻しを繰り返していた。


「ぷっ!」


その姿が可愛くおかしかったので思わず吹き出してしまう。


「えっ?あ、ごごめんなさいほんとに少しだけ少しだけつごうとしたんです」


「はははっ飯は腹いっぱい食うもんだぞ!気にせずめいっぱい食べろ!」


そう笑って言うとキラキラした笑顔を向けて、その後すごい真剣な表情をしたかと思うと器いっぱいにスープをついで、さらに零れないように慎重にスープついでいる。


「別に何回でもおかわりにしにきたらいいんだから、そんなパンパンにしなくても…」


そう言うが、少女には聞こえて無いようで今も真剣にスープをついでいた。

つぎ終わったのか、表面張力でパンパンになった器をこぼさないようにさっきいた場所まで慎重に歩いて戻ろうとしていた。

俺はその横をそそくさとスープをついで歩いていく。


ソファーに座り少女が真剣に歩いてくる姿が見えると、スープを口に入れる。


「あーーうめぇえ!あれもう空だ…さておかわり行こうかな」


少女に見えるようにスープを飲みさらにすぐにお代わり行こうと立つ。

それを見ていた少女は、自分も早く食べたいのか少し早足になる。


それがおかしくて少女が自分がいた場所に戻るまでに3回ほど繰り返した。

そんなこともありながら、二人とも腹いっぱいになるまで食べてもスープはまだ少し残っていた。


「じゃあとりあえず自己紹介でもする?俺はキリガヤ ハヤトよろしく」


「私はミツバよろしくお願いします」


そう言ってミツバは頭を下げる。


「ミツバはこれからどうする?」


「どうする…」


ミツバは俯き今にも泣きそうな顔をする。


「ああー悪いどうするというか、もし自分が住んでるとことか覚えてるなら送っていくぞ」


「………」


何とか自分の言葉足らずをフォローしたがミツバは下を向いたま首を横に振るだけだった。


「場所覚えてないとかか?別にどこかわからなくても探すことはできるぞ?」


「私の村盗賊に壊されちゃった…だから、帰る場所……ない」


とうとう我慢できなくなったのか、下を向いてぎゅっと握っている手の甲に、零れ落ちる。


「あ、えっと、そうだな、えーーーと…」


どうしたらいいかわからず必死に頭を回転させる。

自分が今まで見てきたラノベ、漫画を細部まで頭の中でページをめくり今適切な場面を探す。


そう俺が知っているハーレム主人公なら輝く笑顔でこう言うだろう。








「じゃあ、俺のなななな」


言えねぇ!恥ずかしすぎるぞなんであいつら(主人公)は平然と言えるんだ!!

ミツバはまだ俯いて、ご飯を食べていた時の元気が嘘の様にふさぎ込んでいた。

俺は決意して勇気を振り絞る、そしてもう一度ゆっくり口を開いた。






「俺の妹にならねぇか?」


のぉおおおお!違う!仲間にって言おうとしたんだ本当だ!

決意を決めすぎて本音がチラリズムした自分に焦り慌てて訂正しようとしたが、それよりも先にミツバがキラキラと笑顔を向けて顔を上げる。


「いいの!?」


「ああ!もちろんだゼ!」


そうだ!仲間にするにしても俺がいつロリコンの道に落ちるかわからねぇから!そうこれはミツバのために言ったことなんだ!

家族だったらそんな気起きないと先輩も言ってたし、俺は間違ってないそう間違ってないんだ!



「ありがとう!お、おにいちゃん…」


「ごふっ……」


ミツバ急なおにいちゃん呼びに俺は完全にノックアウトを食らった。





お父さん、お母さんあなたの息子はこれから異世界で一生を終えます。


ミツバの言葉は俺に異世界に骨を埋める覚悟をくれる程の威力があった。









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