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牢獄


「そいつはなかなか腕の立つ魔術師らしいからな、しっかり口を封じておけ!」


「なんだよおまングッ………!!」


いきなり襲われて文句の一つでも言おうと思っていたが、騎士風の一人がぶつぶつと何かを唱えたかと思ったらいきなり口に、紙が張り付いて喋れなくなってしまう。


腕も足も縛られ、たぶん口の紙は魔術を封印するためのものだろう。


クソッっと心の中で悪態をつくが、顔面が腫れ上がっているユウを見つめて少し溜飲が下がるのを自分で感じていた


「よし運ぶぞ!集いし力よかの者たちを夢へといざなえ」


その言葉が聞こえてきた瞬間意識が遠のいていく。


やばい、状態異常みたいな奴か!心ではそう焦っているが自分の意志とは関係なく瞼が重く閉じていく。

どうする!やばい本当に何されるかわからねぇ!!


何かないかと辺りを見回すと、睡魔に勝てなかったのかユウが完全に瞼を閉じて眠っていた。


フッ…勝った…!


何に勝ったのかは分からないがそう思った瞬間に意識を手放した。









「知らない天井だ…」


自分には言える場面は来ないだろう憧れのセルフ第3位を口に出しながらゆっくりと体を起こして目を覚ます。


「ここは…牢屋??」


辺りを見回して確認すると、地下なのか窓もなく牢屋の外にある小さな光で確認する。

自分が結構危険な立場なのは分かっているつもりなのだが、日本では入ることのないだろうと思っていた牢屋に少し興奮を覚えていた。



「起きたのか…」


急に声が聞こえてビクッと体を奮わせるが、薄暗い中目を凝らすと正面の牢にユウが入っていた。


「ぶっ!ユウお前日頃の行いが悪いからこんなとこに入れられちゃうんだぞー」


イケメンが牢屋に入っているというメシウマ状態に思わず吹き出してしまう。


「その理屈だと、お前も日頃の行いが悪いことにならないか?」


「……………そんなことはどうでもいいだろ、何故俺がこんな目にあわなきゃいかん」


現実感の無さに、自分が牢屋に入ってる事を忘れてユウを煽っていたら盛大に自分に帰ってきて無理やり話を変えよとする。

見ていて滑稽な姿がそこにはあった。


「何でかは分からないが、こんな横暴が出来るのは一人だろう…それか俺達の日頃の行いが悪いかだな」


「ングッ………!!」


自分があった時の眉間に皺を寄せて不機嫌そうな顔のユウではなく、ニヤニヤと友達に悪戯をするような顔を浮かべていた。


「クソイケメンが…まあいい、それでその一人ってのは?ゼネルのことか?」


「多分な、どこかの魔術師が俺のかわいいかわいい妹を助けてくれたからな、そのせいだろうなまぁ思ったより早く向こうが動き出したわけだがな」


「なるほど、なるほどじゃあその妹と魔術師は結婚させるべきだろ、うん」


腕を組んで何度も頷きながらそうのたまうと、反対側の牢屋からガシャンと音がすると、ユウが牢屋の柵を掴みながらこっちを睨みつけていた。


「どこの馬の骨とも分からねぇ奴に俺の妹をやれるわけないだろう!!俺の妹はな白馬に乗った金持で優しくて純情な奴と結婚するんだ!!お前みたいな汚ならしい奴は、妹との会議の結果落選だ!」


「何が妹との会議の結果だ!クソシスコンが!その会議はお前しか参加してねぇだろが!貴族らしい態度はどうした坊ちゃん!」


そう言うとユウはゆっくりと掴んでいた柵を放して背中を壁につけて座り込んだ


「そうだな…そうだこういう日の為に俺はずっと貴族らしく振舞ってきたんだったな…」


薄暗くて表情は見えないが、さっきまで口論していた相手とは思えないほどの声色をしていた。


「えぇ…そんな急に悟られてもついていけないんですが…」


ユウの態度の急変に喧嘩していた熱も冷める。


「そういえば、カヤはどこに隠れているんだ?」


「どこって?」


言ってる意味が分からず首を傾げる


「いやだから、カヤ俺の妹をどこかに逃がして隠れさせているんだろう?」


そう言われて連れ去られる前までの記憶をどうにか呼び戻す。


「ああカヤは家の前に待機してたと思う「なんだと!!」なんだよ」


ユウがまた柵の方に体を向けるとさっきより大きな音で柵が揺れるのが響く。


「いや、あの状態だったしとりあえず俺だけでお前んとこに行ってそのまま捕まったから、隠れてる場所なんて俺はしらねぇぞ」


「俺はてっきりどこかにお前が逃がしたとばっかり…」


「逆に何で俺がそんなこと出来たと思ったんだよ」


確かにカヤの事は心配だがそれが俺が逃がした理由にならず不機嫌に聞き返す。


「お前が、知らない天井だ…とか起きてそうそうふざけだしたからてっきり…」


聞かれてたのかよと顔を赤くするが薄暗いこの状況では分からないだろうと少し安心する。


「流石に、俺も兄さんも捕まった状態でそのままいることは考えられないし逃げてると思うけどな」


「そうだといいんだが…後さらっと兄さんと呼ぶな」


ユウは急に不安になったのかソワソワと落ち着きなく動きまわる。

そんなユウをめんどくさいと思い牢屋の冷たい床に横になる。


「お前なんでそんなに余裕なんだ」


「お前じゃねぇ、キリガヤ様もしくは弟と呼べ!」


寝そべったまま適当に答えると姿も見えないのに相手が不機嫌になったことがわかる。


「おい!兄である私に認めてほしいなら私に対する態度を改めろ!」


急に貴族口調になるユウになんだか笑いそうになる。


「はは、こんな状態になるまで分からなかったけど兄さんその口調は無理があるぞ」


「いい加減ふざけるのは辞めろ!何か策があるから余裕なのか?」


いつまで経ってもふざけている相手にしびれを切らして大声で叫ぶ。


「おいおい、そんな大声出して看守でもきたらどうするんだ」


そうカッコつけて言ったが、さっきから大きな声で話しているのに看守が来ないことに少し疑問に思いながらそう口にする。


「看守?いるわけないだろう」


心底不思議そうな声が向かいの牢獄から聞こえてくる


「え!?いないの?」


「いないだろう…」


そのセリフは何言ってんだと憐れむような言い方だった。


「俺の二つ名は黒風の魔術師!俺の魔術でこんな牢獄いちころよ」


「……………まさかお前…この牢獄魔術使えないの知らないのか?」


「……マジで?」


「ああマジだな」


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