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初期練習作(短編)

君がいる

 「君がいてくれるととても嬉しいよ」

そう言って彼は手を差し出す。

わたしは無言で手をつなぎ返し、

歩き出す。

そう、彼とわたしは恋人同士。

どう見てもそんな風には見えないと思うけど。

年は30離れ、若さでいっぱいの彼は、

なかなか男前だと思う。

それでいて、わたしのことを気にかけて、

いつも一緒にいてくれる。

「そうだね、ありがとう」

そう返すと、彼はにっこりと笑う。

暑苦しいくらいに顔をくしゃくしゃにして。

わたしは自分の背丈をのろった。

だって全然背が届かないのだから。


 「響子ちゃん、幼稚園は楽しい?」

聞いてくる内容が陳腐である。

わたしのことを子ども扱いして。

本当に結婚してくれるのかしら。

それとも、遊ばれてるだけなのかしら。

「大人になったら結婚してあげるから」

それまで全部おあずけね。

わたしは遠い未来に目をそむけた。


 「親御さんにあいさつに行かなきゃね」

本当にやる気あるのかしら。

反対されるかもしれないじゃない。

そう言うと彼は、

わたしをお迎えに来てくれたママのもとへ

手をつないで歩いていく。

「先生、いつもすみません」

「いえいえ、今日も良い子でしたよ」

「それではまた明日」

「ばいばい、響子ちゃん」


 「ねえママ、先生わたしと結婚してくれるのよ」

「ああそう、良かったわねえ」

ママは意外とすんなりOKしてくれた。

正直びっくりしたけど、とっても嬉しい。

わたしは小躍りして喜んだ。

「本当にいいのよ。

生きていてくれたら……」

ママは涙ぐむ。

大丈夫よ、手術も検査もがんばって、

絶対病気を治してやるんだから。

それできっと、幸せになるんだ。


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