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第42話 白鳥さんは案外忙しい


 藍と一緒に出店を遊び回った後、俺は自分の所属するAクラスへと戻って来ていた。


 もう少しで演劇の午後の部が始まるからなんだが……向かう途中の旧校舎の通路で修羅場に出くわしていた。


「こ、小春。これは違うんだって……静華ちゃんとは、その今日の朝から色々あってさ」


 赤面しながら、制服姿の佐伯の右手を優しく握る蘭がいた。


「蘭々。エヘヘ、色々とありすぎちゃいましたね。朝から……」


 瞳を潤ませてながら、蘭に優しい笑みを浮かべる佐伯。


「ズ、ズルいよ! 私が蘭を探している間に……あんな事やそんな事をしてたなんて」


 そして、午後からは王子様役の一ノ瀬が悔しそうな顔で蘭と佐伯を見ている。


「いや、別に静華ちゃんとは、あんな事やそんな事はなかったけどさ…むぐ?!」


「きゃああ!! 私の元カレに何してるの? 静華ちゃん!!」


 とんでもない光景に一ノ瀬は顔面蒼白になった。


「ぷはぁ……嘘は付いちゃ駄目ですよ。蘭々~! 蘭々」

「し、静華ちゃん。それは静華ちゃんが強引に……ん!」


 そして、蘭の唇にキスする佐伯。アイツ。最早もはや、無敵だな。旧校舎の人が来ない場所とはいえ学校で蘭にキスとか。


 蘭親衛隊にでも見られたら血祭りにされるぞ、佐伯のヤツ。


「うぅ!! ら、蘭のお馬鹿~! 浮気者~! 私と付き合っていた小学生の頃は、あんなに私に劣情してたくせに~!」


「あ! 待ってよ。小春~! これは違うんだって! ていうか。もうすぐ演劇始まるんだから、どっか行っちゃ駄目だよ~!」


「ら、蘭々。待ってよ下さい~! もっと小春さんの前でイチャイチャしましょう。蘭々~!」


 3人は大騒ぎしながら、Aクラスが演劇をする教室へと入っていった。


「何だったんだ? 本番前の最後の練習か?」


「ううぅ! 青春ですよ。建宮さん。皆、青春してるんです。私と違って」


「うお! 白鳥さん、居たのかよ。全然、気づかなかったわ」


「はい。建宮君の直ぐ近くにずっと居ました。今は演劇の撮影を頼まれたので、教室に戻る所だったです」


「そうか。俺の近くをずっとか。それは大変だっな」


 ……それって単なるストーカー行為だよな?


「色々と大変でした~! 旧校舎の変な雰囲気も無くなってからは、視力が良くなったり、身体もなんだか快調で背筋も、自然と真っ直ぐになるんです。私、可笑しいんでしょうか? 建宮君」


「白鳥さんが可笑しい? いや、白鳥さんに限らず。文芸部3人娘はヤバいと俺の中で評判……あれ? 白鳥さん。なんか、昼頃会った時よりも姿勢良くなったな。それになんか……美人…いや、白鳥さんは元々可愛い子だったな。悪い」


「へ? 私が可愛い子ですか?……あ、ありがとうございます。建宮君」


 お、おい! どうしたんだ? 白鳥さん。仕草しぐさまで、さっきとは別人の様に優雅だぞ。何があった?


「午後の演劇もそろそろ開演なので行きましょう。建宮君」


「お、おう。そうだな。白鳥さん。口調までなんか……良いな」


 そういえば。親父が旧校舎から何か居なくなったとか言ってたけど。


 ……俺もなんか午後から体調が良いし。白鳥さんも前より明るくなったって事は、もしかして旧校舎の何かが居なくなったのか?


〖これより。黎明高校1年Aクラスによる『蘭々と輝く私の王子様』午後の部を上映致します〗


「「「わあぁ! 蘭く〜ん!!」」」


 満席だった。しかも色々な制服を着た他校からの女生徒がびっしりと。流石、近隣高校の美少年とはやされ。


 他校からもファンクラブが創設される人気優等生美少年。四君子しくんし蘭だな。


 実は佐伯と関係を深めたなんて知ったら暴動が起きるだろう。


「おおぉ!! ジュリオーどうして貴方は……」



「始まったな。しかし、本当に人気だよな。黎明高校の王子様は……教室中、人があふれんばかりにそこら中に居る」


「後で蘭さん。限定お姫様ブロマイドを適正価格で売る予定です。蘭さんの限定お姫様ブロマイドだけで、今年の黎明祭の売り上げスコア1位になれると九条さんが喜んでました」


パシャパシャパシャパシャ!!


 クラスから支給されたカメラで演劇の様子を撮りながら喋る白鳥さん。


「ほ〜う! やっぱり凄いんだな。蘭って……」


「……それを言うなら建宮君も凄いですよ。あんなとてつもないモノをはね除けて、大丈夫なんですから」


 白鳥さんが小声で何かを言う。


「ん? なんか言ったか? 白鳥さん」


「いえ、なんでもありません。文化祭も、もうすく終わりますし。最後まで楽しみましょう。建宮君」


「ん……そうだな」


 他愛ない会話だったが。俺は少しだけ雰囲気が変わった白鳥さんの隣でクラスの演劇が無事に終わるのを見守っていた。


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