第41話 午後はデートだね
〖現在、生徒会の汐崎副会長が行方不明になっております。なので緊急ではありますが臨時イベントとさせて頂きます。今日の午後17時までに汐崎副会長を探し出し生徒会に連れて来た生徒には、雨宮生徒会長から黎明高校の食券5万分が贈呈されます。+女子生徒には、汐崎副会長のブロマイドとデート優先権与えられます……ピンポンパンポン〗
「うおぉぉ! 探せ!探せ! ビックイベントだぞ! 汐崎を探し回れ!」
「汐崎副会長とデートできるのですか! 探しましょう!」
「フハハハ! 流石、我が親友。まさか自分を文化祭の商品にしてしまうとはな」
秋月部長に連れて行かれて、行方不明になった汐崎先輩を探す為の捜索ゲームが雨宮会長の案より決まったらしい。
そして、学校中は大騒ぎになり。午後から出し物がある生徒以外が捜索ゲームに参加するとか。
まぁ、絶対に見つからないだろうな。連れて行かれた場所が無敵のアイドルの事務所なんて誰も思うましい。
完全に雨宮会長は…雫姉ちゃんは遊びでこのイベントを起こしたに決まっている。
「あ、汐崎先輩から連絡来てる……助けろ。建宮……」
俺はソッと自分のスマホをポケットにしまった。俺は秋月部長を敵に回したくないしな。
汐崎先輩。モテモテなんだし。身体も頑丈そうだから少しくらい何かされても平気だろう。
「……それで七宮と白鳥さんは汐崎先輩の捜索ゲームに参加しに行ったってわけか?」
「う、うん。汐崎副会長はどうでもいいけど。食券は欲しいんだって、後は面白そうかイベントだから、とりあえず参加するって」
文化祭の午後の部が始まった瞬間にさっきの放送が始まり。
皆、驚いていた。そして、直ぐ動いたのはトラブル大好き七宮だった。
「アイツは本当に火中の栗を拾うのが大好きだよな。汐崎先輩は今頃、ハーレムだっていうのにな」
「ハーレム? なあにそれ?」
◇
《有栖川第十七棟ビル》
「お前等。後でやり返すからな」
「……光君。しゅきです!」
「何を言っているのかしら? これもイベントよ。それと朝から、色々な女の子達とイチャイチャし過ぎじゃないかしら? 光」
ガンガンガンガン!!
「ここを開けなさい!! お馬鹿共~! 私の光になにをする気なのよ!!」
「誰が貴女のですか! 誰が! 光くん~! 大丈夫ですか?!」
「はぁ……はぁ……走ったせいでウチもうダメやわぁ……です」
◇
「……5人とか凄いよな。汐崎先輩」
「汐崎副会長?……う~ん。どっち勝手いうと気苦労の方が多いかな。女性関係で」
「……だろうな」
あの容姿に、相方が金髪カリスマギャルの織姫先輩。そりゃあ、嫌でも目立ち……地獄を見ているのか。
可哀想にな。まぁ、俺は汐崎先輩みたいな風な完璧超人でもないし顔も普通くらいだから。安心安心。
「しかし。周りは慌ただしけど。射的とかクイズとかの出店は生徒の客が少なくなって、一般のお客も並びやすくなったな」
「そうだね。雨宮会長の…お姉ちゃんの狙いはそこにあるから。汐崎副会長はまんまと嵌められたんだろうね」
「嵌められた? 何を?」
「……生徒会の秘密です。知りたいならゆー君も生徒会入る? 楽しいよ。ブラック環境だけど」
……藍の目が笑ってない。これは拒否ろう。
「いや、遠慮しとくは、それよりも。出店のお客さんも減ったし、何かやろうぜ」
「やるの? ここで?……そ、それは夜まで待ってほしいかな。ゆー君」
藍のヤツは何をやる気なんだろうか?
「いや、やるのは出店のゲームなんだが。何を勘違いしてんだ? ムッツリ藍さんや?」
「ふ、ふぇ?! 出店のゲームだったの? そ、それならそうと言ってほしかったかも。ゆー君」
「いや、最初からそう言っとるんだけどさ」
流石、藍さん。考え方が1人よりも独特過ぎるぜ。
こうして、俺と藍は空いている出店の方へと移動して。文化祭の出し物を楽しむ事にした。
先ずは射的からか?
「的屋へ、いらっしゃいませ~! 男女カップルさんですね。10発で500円になります」
マフィア映画でよく見る帽子とサングラスをかけた売り子さんが、玩具用のモデルガンと玉が入った入れ物を持って話しかけて来た。
「そんなお似合いの熟練カップルなんて……照れちゃうね。ゆー君」
「あ~そうだな。前世で幸せにしてあげるよ~藍さん」
顔を赤く染めながら恥ずかがる藍に対して、周囲の目を気にする俺は冷たい対応を取る。
藍さんよ。自分の立場を考えてくれ。貴女は、あの凄腕生徒会長の妹で、最初は目立ってなかったけど。最近注目され始めた優等生だぞ。言動に気をつけてほしいもんだが……
藍の上着のブレザーのポケットから見えている内ポケットのハンカチ。俺が数日前に捨てたトランクスと柄が酷似してんだよな。
……藍のヤツ。俺の部屋に開けた秘密の抜け穴から俺の部屋に侵入して奪取したな。後で、尻を叩いてやる!
「えっと……はい。500円」
「はい! ありがとうございます。では、玉を込めたら。欲しい商品に向けて撃って下さい。その商品が落ちたら。お客様の物になります」
「分かりました」
「頑張ってね! ゆー君。私、あの大きな羊さんのぬいぐるみが良いかな~!」
藍が目を輝かせて。特賞のメーメー羊を指差している……デ、デカイ。大きさはだいたいフナッジーの着ぐるみ位あるな。
「……当たっても落ちて取れるわけないと思うが。頑張ってみるわ」
「うん! 絶対に取ってね。ゆー君」
あのニコニコ笑顔は〖取ってくれないと。今夜、ゆー君がお風呂に入ってる時に侵入しちゃうから覚悟したね〗の笑顔じゃねえか。
「いや、取れんだろう。あんなフナッジーみたいな大きさのぬいぐるみ。それに……」
商品を支えている後ろの重り。明らかに大きいし、なんかつっかえ棒みたいなので固定されてるんだよな。
あれは金は払ってもらうけど。絶対に商品は渡しませんの祭りとかでよく見る的屋のやり方そのものだろうこれは。
「ムフフ!!」
店員も取れるわけありませんって顔で笑ってるしな。
「まぁ、どんな場所にも穴がある……ツボ押しと一緒だ……な!と」
ポンッ!という発射音と共に、放たれた玉は商品が並べられた段差へと当たり、商品を支える後ろの重りへと当たる。
「あわ……外れちゃった」
「あらあら~! まぁ、1発目なら仕方ありませんね」
「まぁ、射的なんて日常で普通はやらないからな」
1発目は大きく外した。そして、2発目、3発目……なんなら9発目までを同じ段差の場所に射ってわざと外しまくった。
「……ゆー君。最後の1発しかなくなちゃったよ~!」
「アハハ!! 彼氏さん。射的そのものが苦手だったんですね。よくあります。よくあります」
藍は心配そうな顔をし、店員はアホな笑い声で俺を嘲笑している。
俺は最後の1発に全神経を集中させる……フナッジーの尻尾の一点に角度を計算し当たるようにする為に。そして、最後の体感の微調整が終わったと後に息を整えて射的用のトリガーを引いた。
パンッ!
放った弾はフナッジーが飾られた棚の上に当たり、下へと急降下し始めた。
「フヒッ! 最後の1発も不発でしたね。どうですか? また500円を払って最初から……」
満面の笑みを浮かべた店員が射的用のモデルガンと玉を持って俺に進めて来る。
「いや、もうやらないから良いな。落ちるし」
「へ? 落ちる? 何がです……」
店員が喋ろうとした瞬間。フナッジーのぬいぐるみが置かれていた棚が崩れ始め。フナッジーぬいぐるみが、ポフっと下へと落ちた。
「は、はあぁ?! い、1番重い筈のフナッジーのぬいぐるみが落ちた?! あれは30回当たったら軽くする筈だったのに?!」
「す、凄い! 凄いよ! ゆー君。どうやって、あんな重くて大きなぬいぐるみを落とせたの?」
店員はポカーンと口を開けて、藍はそのどさくさに抱き付いて来た。皆が見てるから離れてほしいんだが。
「なんだよ。やっぱりクレーンゲームと同じで、難易度調整してたのかよ。店員さん。ズルは駄目だぜ。ズルは」
いや、ズルではないのか。今、店員から手渡されているフナッジーのぬいぐるみ。結構なお値段するヤツだこれ。質感が凄い。
「ううぅ……負けました。それと今度からは気をつけます。ズル」
……店員本人がズルと認めちゃマズいだろうに。それだけ、特賞のフナッジーを取られたのが痛いんだろうな。
「どうも。ホレ! 藍が欲しがってた。フナッジー」
俺は藍にフナッジーを手渡してやった。
「ふぁ~! あ、ありがとう。ゆー君。でもでも、なんで最後の1発で取れたの? あんなに最初は外してたのに?」
「あ~、あれか?……あれは、フナッジーの後ろにあった重り位置を少しズラして、後はフナッジーの尻尾の部分に最後の弾で命中させたんだ。そんで、その弾かせた尻尾を重りにぶつけて、重りが棚から落ちる様にした」
「……なんか分からないけど。ゆー君が凄い事をやったのは、なんとなく分かったよ~! 私の為にフナッジーを取ってくれてありがとう! ゆー君!」
藍はフナッジーのぬいぐるみを抱き締めると。俺に抱き付いて来た。
「お、おう! 藍の為に取れて良かったわ」
普段の藍の変人ぷりからは考えられない可愛いさで、俺は少し頬を赤らめた。




