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第35話 束の間のデートだし?

《旧校舎 通路》


 ウチのクラス出し物『蘭々と輝く私の王子様』の午前の部が劇が無事に終わった。


 今、七宮と共に『蘭々と輝く私の王子様』の感想を言い合っていた。


「いや~! マジで感動したし~!」


「だな……まさか。最後の王子様とお姫様のキスシーンで、あの2人が本当にキスするとは思わなかったがな」


 俺が去った後の男子トイレの便所の密室で何があったのかは良く分からんが。


 講演最後のキスシーン……観客が見守る中、蘭と佐伯は見つめ合い迫真のキスシーンをしたんだよな。



「大好きです! 姫! この言葉に、もういつわりはありません! 僕と結婚して下さい!」

「はぁー! ちょっと! って! 静華ちゃん! どういう事?」


 ……午前中、草役だった。一ノ瀬が一瞬騒いだが。皆、一ノ瀬の叫び声なんて聞いていなかった。あの時は、佐伯が演じる迫真の演技に。皆が魅入みいっていたからだ。


(ちょ、ちょっと! 静華ちゃん! 台本と全然違う台詞セリフじゃないか! 何を考えてるんだい?)


(え〜? 何がですか? 私の蘭々。男子トイレであんなに2人っきりで今後の事を話し合ったじゃないですか?)


(そ、それは……)


(もう。お互い嘘をつかないって、耳元でささやき合ったじゃないですか。そんな態度じゃあ、来年の夏の2人っきりの旅行キャンセルしちゃいますよ)


 蘭と佐伯はお互いに顔を近付けあって、何かを話していた。観客席では全然聴こえてこない小さな声で。


(そ、それは……絶対に嫌かな)


(フフフ……ですよね。蘭々、大好きです!)


「わ! 静華ちゃん!…んん?!」


「「「キャアアアア!!」」」

「いやああああ!! 蘭の唇が上書きされちゃう!!」


 王子役の佐伯が、お姫様役の蘭に無理矢理キスをした。


 それを見た観客はスタンディングオペレーションで全員立ち上がり。


 至近距離から見ていた草役の一ノ瀬は悲鳴を上げてぶっ倒れた。


 ……まぁ、恋のライバルに至近距離からあんな熱いモノを見せられたら悲鳴も上げたくなるか。


 これは午後からの一ノ瀬の復讐劇が楽しみになってきた。



「あの後、色々とあったが。午前中の演劇が上手くいって本当に良かったな。劇終了後は、修羅場だったが……」



(静華ちゃん!! 蘭にな、何をしたの? なんで、蘭が静華ちゃんの言うことをちゃんと聞いているのかな?)


(そんなの蘭々と私が心から繋がっているからに決まってます。敗北者さんは午後の演劇に備えて精神統一でもして賢者さんモードにでもなっていて下さい)


(はいい?! 蘭は私の元カレなんだよ。ちょ、ちょっかいをかけないでほしいかも)


(ほ、ほう。まだ、そんな事で私にマウントを取るつもりなんでか? 蘭々と一緒に熱海旅行にも行ったことがない方が?)


(熱海旅行?……それになんでそんなに余裕なの静華ちゃん? 前はもっと余裕なんてなかったよね?……まさか?! 蘭! 静華ちゃんとさっきまでなにをしてたか教えなさい! これは元カノの命令だよ!)


(ちょっと! 何するのさ? 小春!! 衣装が破けるから止めてよ)


(ちょっ! 小春ちゃん。私の蘭々に飛びかかるのを止めてくれませんか? もう貴女のものではないのですよ~!)



「アイツ等。いつもいつも本当に人騒がせだよな。まぁ、そのお陰でウチのクラスは毎日お祭り騒ぎなんだけど」


「……なにを笑ってるし。建宮っち。建宮っちも大概たいがいうるさいし。蘭々《らんらん》る~! よりも毎日、修羅場だと思うんですけど?」


 蘭々る~?……ああ、ランランル~!だからか……いや、今はそんな変なあだ名について考えている場合じゃないか。


「なにが修羅場だよ? 俺はいつも自由だ。蘭や真みたいなモテる奴等と一緒にするなよ」


「かあぁ!! これだから無自覚脳筋は嫌だし! この! アホ筋肉ツボ押しオタク~! もうちょっと自覚しろし~!」


 とか言いながら。七宮のヤツ、何を俺の背中を変な玩具で叩いてんだ。


「お、おい! 止めろ。恥ずかしいお客さんやら他の生徒が見てんだろう」


「はあぁ?! だから皆に見せつけてるんだし。建宮っちはもうちょっと自分の立場を自覚してほしいんですけど」


「わ、分かったから変な鞭みたいな玩具で俺をペチペチするのを止めろ。つうか何だそれ?」


「ん〜? これ〜? 変な占いの出し物やってる呪物部から0円でいいから買ってくれって頼み込まれて、買ってあげたんし。ウチ優しいし~!」


「それって旧校舎の特級呪物じゃねえか?! しかも0円って! 押し付けられただけだろう? そんなの返して来い!」


「え〜? 面白い玩具なのに? 仕方ないし……て? あれ? さっきまでいた筈の呪物部の出し物無くなってるし。あの娘達どこにいったん?」


「……お、おい! 七宮。それって……お前! 七不思議のあれじゃないのか?」


「ん? 何がん?」


「……俺の身体……蛇のあざ?……」


 俺は自身の制服の上着を着崩し、自身の身体を確認した。


「……あの本に通りちゃんと呪われてやがる。図書準備室の本にあった"蛇の女装"に。これで俺は今日一日必ず女装しないといけなくなっちまったわけかよ。七宮~! お前~! 何しとんじゃあ!!」


「ウ、ウチは、ただ蛇の玩具で建宮っちをペチペチして遊んでただけだし~!」


 俺は七宮に"メイド服を着たいのよ呪い"にかけられてしまった。


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