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第33話 蘭との逃走劇


いーーーやーーー!!やだやだ!!! メイド服は嫌だ。 メイド服だけは着たくない。


あんなヒラヒラは着たくない。 つうか、なんで皆。 俺がメイド服を着ると歓喜して撮影したがるんだ?


可笑しいだろうがよう!


それに今日は家の家族が来るんだ。


心優しい母さんならともかく。 いつも俺を玩具にして遊ぶ親父にメイド服姿なんて見られた日には...... 一生ネタとしてからかわれ続ける事になる。


(ゆーちゃん。 すげえ似合ってるぜぇ! (ニタアァ!!))


それだけは駄目だ。 あの親父の前にだけはメイド服はさらすわけにはいかない。


《旧校舎 通路》


「秋月部長。 俺の手に結ばれてる縄をほどいてくれません?」


「駄目よ。 貴方、逃げ足速いもの」


「くそ~! 秋月部長もだんだん俺に容赦なくなってきましたね」


「ん〜...... それは違うは。 建宮君。 貴方の反応が面白いからいじってるだけよ」


「なんすか。 その最悪な返答は!」


「フフフ。 本当に良い反応ね。 あの七宮さんと藍さんが取り合うわけだわ」


「? 何をですか?」


「...... その反応、光と本当に似ているわね。 何でかしら?」


光? 光って。 汐崎先輩の事だよな。 汐崎先輩は今、目の前で...... 何してんだ。 あれは?



「お、おい! 葵! いくら、ここが旧校舎だからって、何で空き教室で」

「い、良いじゃない! 雪乃ゆきの彩葉いろはと華に見つかったら、また邪魔されるじゃない!」

「何を邪魔されるんだ! 俺はまだ生徒会の仕事が残ってるんだぞ」

「直ぐ終わるでしょう? 光の部屋でいつもやってあげてる時。 光、いつも早くて......」

「わー! 馬鹿。 こんな所でその話をするな」


...... 七宮のギャル師匠こと織姫葵先輩と汐崎先輩がイチャイチャと楽しげに会話してるな。


「あら? どうしたの? 建宮君。 空き教室の方なんてボーッと見つめて? 何かを怖い物でも見えたかしら? フフフ」


秋月部長が楽しげにそう告げた。 ならば、俺はカウンターでこう告げよう。


「はい。 あの空き教室の前で汐崎先輩と織姫先輩が抱き合いそうになってもますよ」


「......... え?」


お! 秋月部長が凍り付いた様に身体を硬直させたな。 手に持っていた手綱たずなもポロっと床に落として...... 逃げるチャンスだ!


「...... スゥーとエスケープだ」


俺は逃げる。 自由を求めて。 ちゃんと自分の出番の時は戻ってきますよ。 秋月部長。



「...... は?! こうしてはいられないわ。 雪乃と華さんに連絡して、少し待っててくれるかしら? 建宮君...... 建宮君?...... そんな。 建宮君が居なくなってしまったわ。 神隠しかしら?」


《Aクラス演劇会場》


 一般入場まで、残り1時間切った為か俺が所属するAクラスの皆があわただしく準備に追われている所だった。


 最初、俺も暇潰しに顔を出しただけだったんだが。蘭が行方不明になったらしい。


「は? 蘭が行方不明?」


「そうなんですよ。私のお嫁様役の蘭々がどこにも居ないんです……建宮さん。蘭々の親友ですよね? 親友ならどこに居るか。テレパシーで感じ取って下さい!」


「アホ! 感じ取れるか。アホ佐伯」


 午前の王子様役で佐伯が、王子様コスプレを着てあわてている。


 お姫様役の蘭が突如、消えて。驚いてるんだろうな。


「蘭の居場所ね……探しに行ってやるか」


「へ? 蘭々の居場所分かるんですか?」


「ん〜! まぁ、親友だしな。連れてくるわ」


「なら、私も行きますよ! 今日の午前中の蘭々の王子様は私ですからね」


「……それだから。恥ずかしがって隠れたんじゃないのか?(ボソッ)」


「へ? 今、何か言いました? 建宮さん」


「いや、なんでもない」


 佐伯が不思議そうな顔で俺を見てくる。佐伯もだいぶニブチンだよな。そろそろ、蘭の本当の気持ちに気づいてやれば良いのにさ。


 ふと。俺は以前、蘭に相談を受けた事を思い出した。


(建宮君。僕……静華ちゃんの事をもしかしたら)


「……どっちも奥手だと難儀なんぎするよな」



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