表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

chapter.5

「貴方は─────」振り向くと、そこにはリベルドが立っていた。


「クロックフォード様に、手紙が届いております。侍女が見当たらなかったので、直接お渡しに来ました」


「ありがとう」


シルフィアはリベルドから手紙を受け取ると、自室へ戻った。






ソファに座り、手紙の封蝋を見る。


この封蝋、確かオベール帝国の伯爵家の封蝋印である。


「名前は────」


モニーク伯爵。こちらに来てから公爵家の外に出ていないので顔は分からないが、モニーク伯爵は一人娘であるフレンダを可愛がっている、とよく聞く。


「モニーク伯爵が何の用かしら」


エマも気になるのか、背後から顔を出し見ている。




════════════════════════




親愛なるシルフィア様




一週間後、こちらのモニーク伯爵邸でお茶会を催したく存じます。シルフィア様は、オベール帝国に着いて間も無いので、ぜひフレンダが力になれたらと思っております。ドレスコードなどはございませんので、ご出席賜りますようご案内申し上げます。






フレンダ・モニーク




════════════════════════




「お茶会のお誘いですか?」


「えぇ。そうみたいね」


どうやら、フレンダ・モニークからのお茶会の誘いだったみたいだ。人脈を広げるのにも、やはりお茶会が一番手っ取り早いだろう。


お茶会は、女の社交場でもあり情報を得る場でもある。シルフィアは、エマに紙とペンを用意してもらいすぐに返事を書いた。










そして、結婚式当日。教会では、シルフィアとラファエロ。それから公爵家の侍女頭や執事長、使用人も何人かではあるが会衆席に座っていた。


入場前、シルフィアは自分のドレスを見る。人気なだけあって、ミス・エドワールがつくるドレスはとても魅力的だった。そんな魅力的なシルフィアを隣で見てもなお、ラファエロは一言も言わず、ただただ目の前の扉を見ていた。


呆れてため息を漏らすと、入場の合図がなった。扉がゆっくりと左右に開く。シルフィアはラファエロと腕を組み、バージンロードを歩いた。


牧師が誓いの言葉の問いかけを口にする。


「─────妻として愛し 敬い 慈しむことを誓いますか?」


ラファエロは少し間をあけてから、「誓います」とだけ放った。


誓いの言葉が終えたらキスをするのだが、シルフィアはハッと息を呑んだ。生まれて初めてのキスが、愛してもいない男とのキスなんて、思いもしなかった。


シルフィアは目を瞑り覚悟を決めたが、いつまで経っても唇には何の感触もない。


そっと瞼を開くと、ラファエロは周りの皆からは分からない程度に唇を離していた。


─────キスしているフリをしていたのだ。




誓いのキスが終わり、牧師は指輪がのったトレーを差し出す。本来ならば、妻が夫に。そして夫が妻に、お互いの薬指に指輪をはめるのだが、ラファエロは自分で指輪を取り薬指にはめた。会衆席からは、クスクスと笑い声が聞こえた。




─────「私はお前と馴れ合うつもりはない」




公爵邸に着いて、最初の一言。


そっちがその気なら、こっちだって勝手にしてやる。


シルフィアはそう思い、自分で指輪をはめた。








結婚式が終わり、公爵家に帰ってきた。


「これでもう、私はシルフィア・ヴァンキルシュね」


「嫌ですぅぅぅ゛」


シルフィアが自分ではめた指を見ながらそう言うと、エマは膝に顔を埋め泣きじゃくっていた。


「なんでお嬢様が、あんなヤツなんかと…」


「泣いても仕方ないわ。もう私はヴァンキルシュの人間だもの。まずは六日後のお茶会ね」


シルフィアは、トパーズが埋め込まれた指輪を見つめた。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ