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呪われ王子と祝福の魔女

作者: さや


とある国、とある森に、1人の魔女が住んでいました。

黒い花の咲く森に住む魔女は街の人たちに、「悪い事をした罰で人と話す事が出来ない悪い魔女」として恐れられていました。

しかし本当はそんな事はありません。



魔女は普通の女の子でした。



女の子はとある村で生まれ、生まれた時にすぐに死んでしまいそうだったのを、その国の王子が生まれたお祝いにやって来た魔女が「王子のついでにこの子にも祝福を」と助けてくれたのです。

しかし魔女は言いました。


「この祝福は人と口を利くと消えてしまい、死んでしまう。親であるお前たちもこの子と話してはいけないよ。話し掛けるだけならいいが会話はだめだ。声は聞いても良いが、この子の『言葉』を聞かれてはいけないよ」


両親は話せないだけなら死んでしまうよりずっといいと、それを受け入れました。

しかし村に居ては人と話してしまいそうになります。村には同じ年頃の子供たちが沢山居たのです。

女の子は声が出せない訳でも、言葉を口に出来ない訳でもないのです。

両親は困って、森の奥にある小屋に女の子と暮らし始めました。畑を作って、時々街に野菜を売りに行くのです。

ここなら村の人と話してしまいそうになる事もない。

両親は安心していました。



そうして女の子は大きくなりましたが、両親は暮らしていく為に街へ野菜を売りに行った際、事故にあって死んでしまいました。

女の子は1人で暮らす事になりました。

時々街へ野菜を売りに行きますが、話す事が出来ない彼女は魔女と呼ばれるようになってしまったのです。




そんなある日の事でした。

森へ1人の青年が迷い込んで来ました。とてもひどい怪我をしています。

大きくなった女の子は、その青年の看病をしました。

彼は死にそうな程ひどい怪我でしたが、女の子の看病のおかげで少しずつ元気になっていきました。


「ここはどこだい?自分の事は覚えているが、逃げるのに必死でここがどこかまでは分からないんだ。目も見えていないから」


女の子はここは森だと説明しようとしましたが、彼に伝える術がありませんでした。

彼は目が見えないらしく、目を開く事も出来ないのです。

青年は「話せない理由があるんだね」と納得してくれました。

2人は話す事は出来ませんでしたが、彼は沢山の話をしてくれました。

自分は生まれた時に悪い魔女に呪われたから目が見えない事、けれど魔女が真に愛する人と結ばれればその呪いが解ける祝福をくれた事などを話してくれました。


「僕は目が見えないし君が誰か分からない。けれど、きっと女の子だという事だけは分かるんだ。花の良い香りのする女の子」


そう言うと、青年は手探りで女の子の手を取りました。


「僕は君を好きなんだと思う。君がどんな女の子かは分からないけれど、それでも君と幸せになりたい。ずっと一緒にいたい。初めて人を好きになったんだ」


女の子も青年の事が好きでした。だからその言葉がとても嬉しかったのです。



それから少しして、青年のお迎えがやって来ました。

お迎えの人は、彼は王子様だと言いました。

悪い貴族と弟に殺されそうになり、逃げて来たそうです。けれど悪い貴族と弟はもう居なくなったからお城に連れて帰ると言いました。


「助けてくれた礼は必ずしよう」


そう言って、お迎えの人は王子様を連れて帰りました。

女の子はとても寂しくて、泣いてしまいました。

王子様ならもう会えないかもしれないと。好きだったけれど、もう会えないと。

ずっと一緒にいたかったと。




しばらくしてから女の子は街へ野菜を売りに行きました。

そこで王子様が宰相の娘と結婚するという事を知りました。


「何でも怪我をした王子を助けたのが宰相の娘だったらしい」

「あのお嬢様なら助けるだろうな」

「国中が幸せになる話だ」


街の人々は幸せそうでした。

女の子は、「きっとお嬢様は知らない所で王子様を助けたんだ」と、自分にそう言い聞かせました。

自分を好きと言ってくれた人が他の人と結婚するのが悲しかったのです。



女の子は知らない事ですが、王子様は「自分を助けてくれた彼女と結婚を」と宰相に伝えていました。

けれど宰相は、「身分も無く口の利けない魔女が王家に入るなど」と、自分の娘に女の子と同じ匂いをまとわせ、「娘は病気で口が利けなかったのです」と、王子様と結婚させる事にしました。念の為に結婚式の日が終わるまで、娘に一言も発さないように言い含めて。

目が見えない王子様は、その言葉を信じてしまったのです。



結婚式の日は、王子様と花嫁さんの姿が街でも見れるようになっていました。

結婚式の後に2人は街中を周ってくれるのです。

女の子はせめて最後に男の子の姿を見て諦めようと思い、街で2人がやって来るのを待っていました。

2人の姿はとても綺麗で、女の子は泣きそうになりましたがその時、人混みの中から1人の男が剣を持って飛び出しました。


「危ない!」


女の子は思わず叫び、飛び出しました。

王子様は女の子の声に反応して、何とか男を避けました。

男は護衛の人たちに捕えられます。

王子様は女の子の元へやって来ました。


「君は…」


発した言葉を人に聞かれてしまった女の子の体は、指先から、髪から、森に咲く花へとなっていきます。

女の子は笑って。


「あなたのことがすきです」


どんどん花になっていく体を動かし、王子様の体を棘で傷付けてしまうと思いながらも王子様へ口付けました。

王子様は女の子を抱き締めます。

花になり、崩れていく女の子。

王子様の目が少しずつ開きました。


「同じ、花の匂い…」


はらり、はらりと。

王子様が初めて見たものは、初めて好きになった人だと気付いた女の子が黒い花となり崩れ去る光景でした。



自分の愚かさに気付いた王子様は、心が壊れてしまいました。

女の子の花を国中に植えるように命令して、国中その花で埋め尽くされました。

その花はやがて、国のあちらこちらで大きく成長し、沢山の人々を困らせました。

けれど王子様はその花が咲く中で、幸せそうに笑うのです。

国の人たちは怒って皆で王子様を殺しました。

すると黒い花は王子様の体へと蔦を伸ばし、王子様を包み込みました。

怖くなった人達は黒い花を燃やそうとしましたが、花は燃えずに建物にばかり火は移っていきました。



建物は燃え、黒い花で埋め尽くされた国から人は居なくなりました。

人が居なくなった国は、永遠に棘のある花に埋め尽くされて、誰も近寄る事の出来ない場所になりました。



こうして王子様と女の子は、永遠に一緒に過ごす事が出来るようになりましたとさ。



めでたしめでたし

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