表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
発狂  作者: 羽夢屋敷
4/44

第四話: 氏家 仁 ②

◆まえがき◆


2/2発表予定でしたが、早めに整形できたのでそのままUPしちゃいました!

(つまり逆パタンもあるかと…ご了承ください(笑))


いや~。株は本当におっかないですね~。

今やお国が率先して、「やれNISAだ」「主婦も投資を」などと軽々しく国民に対してこれを勧めてきますが、いかがなものかと思います。

本来、お金は働いて手にするもの。

働かず楽をしてお金だけ得ようとうれば、必ずどこかで落とし穴に堕ちます。

悪い人達は今、絶賛「回収モード」に入っています。

皆さんもくれぐれもご注意を。


では第四話、はじまりはじまり~。



  挿絵(By みてみん)




      ********



「でも先輩…そろそろ株、止めませんか。そもそも性に合ってないんですよ。楽して稼ごうっての自体。…またゲームを作ったらイイじゃないですか、ゲームを」


 最近、頻繁に連絡をしてくる受話器の向こうの相澤の声は、アドバイスという体をとりながら半分あきれ返っているその心情を分かりやすく伝えていた。

「大体、原発で大騒ぎになってる東電の株で底値のサーフィンって…ヤバ過ぎますってホントに。いつただの紙切れになてもおかしくない所でしょ、あそこは」

「とはいっても、この3ヶ月で100万近く持ち返したぞ…」


 相澤は7年前に関わった某ゲーム会社の社員で、私が出向でその会社に通い始めた翌年に新人として同じチームに配属された「もと眼鏡売り場のTOPセールスマン」という異色の経歴を持つ、気の良い男だ。電話は例によって私の荒んだ現状を諭す、彼なりの心配の念からのそれであった。


「100万ってアナタ…毎日毎日朝から晩まで数字とにらめっこしてやっとその額なんですよね?……きちんと働いて稼いだ方が絶対イイですって。堅実だし…」

「じゃぁ、お前の所で雇ってくれるか?…そっちもオリジナルゲームは暫くやらないって言ってたよなぁ」

「それはそうなんですが…」

 相澤は言葉を濁す。


「近頃の中小のゲーム会社はどこもそんな感じなんだって。漫画の版権ものかIPしかやらないんだよ。……わかってるだろお前も」

「まぁその通りなんですけど、とはいえですよ。あ!…インディーズとかどうですかね?先輩向きじゃないですか」

「インディーズねぇ~。確かにこれから伸びそうではあるけどなぁ…ていうかお前、この俺の最後の100万をそこに突っ込んで自分でゲーム作れってか?…それこそまるで堅実じゃないだろ!」

 冗談交じりになお本題から眼を背ける私の言葉に対し、被せ気味に相澤は続ける。

「とにかく、今の生活はないですよ。体に良くないし、このままだと精神的にもやられますって。俺も知り合いの会社あたってみますから。悪い事は言いませんから先輩も少し株から遠のいた方がイイですよ」

「う~ん……そう言われてもなぁ~…」


 曖昧な返答しか繰り返せないでいる私に対し、相澤もさすがにここまでかと話題を切り替える。

「あ。そういえば、例のチケット届きました?」

「ん?……ああ、DJオカベか。一昨日届いたよ。ちゃんと」

「気晴らしにアレ行って、たまには昼間の外の空気吸ってきなさいな。どうせ暇な時は家でTV見てるかハムスターと遊んでるか位なんでしょ?」

「お前、随分とぞんざいな…」

 確かな所を相手に付かれ、怒るどころか思わず笑ってしまう。

「じゃ、また。何かいい話きたらすぐ連絡しますから。……そうそう。外出る時はケータイちゃんと持って出てくださいね。しょっちゅう不携帯だと周りが困りますんで」

「はいはい。小姑だな。まるで」

 電話の向こうで相澤も小さく笑う。

「例の恋人ともこの一件で疎遠になっちゃった訳だし、先輩のこと気にかけてとやかく言ってくれる人だって、もう俺くらいしかいないでしょ」

「お前、……傷付いてる相手に向かってそういう言い方するか?普通?」

「普通じゃないですしねー。氏家さんは~」

「おまえ!」

 長い付き合いだけあって、相澤は私の扱いにずいぶん慣れていた。二人はそのあと〝DJオカベ〟の話を少しして電話を切った。


 ===============

『2011未来の電脳絵画展/DJ・OKABE』

 会場:銀座みずき画廊

 ===============


「こんなのが「絵画」とは、片腹痛いよなまったく…」

 相澤から送られてきたチケットに小さくプリントされた作品群をじっと眺めていた私は、無意識に溜息混じりの独り言をこぼす。


 〝DJオカベ〟は、電気配線のようなデザインが施された派手な蛍光色の衣装を身にまとい、自身に発光ダイオードをぐるぐる巻いてピカピカ光りながら皿を回すという「珍プレイヤー」で、数年前に突然、六本木のクラブ界隈に出現し、一躍時の人になったラッキーボーイだ。ラッキーといってもその実態は『ギャップ萌え』を巧みに操る計算高いエンターティナーであり、自身が奏でる音楽は「技巧派」と呼ぶに値するしっかりとしたものであった。

 その彼が、業界で勝ち取った人気の波をうまいこと利用し“次世代アート”と銘打って広げた新たな風呂敷が、この展示会『2011未来の電脳絵画展』だ。


 そんな展覧会のチケットをなぜ相澤が手にしたかと言えば、これがまた何とも不格好な流れで嘆けてくる。

 電話で聞いた話によれば〝DJオカベ〟は相澤の友人の学生時代の先輩だそうで、なんでも『チケットを大々的に捌きたいから』という身勝手な理由で、自身の息のかかった知り合いらに十数枚単位で半強制的にそれらを購入させたらしく、その友人もまんまとその餌食になってしまったとの話であった。相澤は付き合いが良い男だから、そこから数枚買ってやったのだ。

 DJオカベの本業はあくまでも「DJ」であるから、自分の絵画展をクラブイベントか何かと同じような感覚で捉えているのかもしれない。だが一時は〝絵かき〟を志した事もあった私にとってそのやり方は美術界を愚弄しているようにも映り、〝感じの悪い奴だな〟というのが、彼に対して抱いた率直な感想だった。

 ところが、そんな私の個人的見解とは裏腹に、よくわからない評論家や芸能人達が、これ見よがしにこの展覧会を褒めちぎるものだから、普段絵画の事など考えもしない大衆は、右に倣えで彼を大絶賛した。そして驚くべき事に今、DJオカベの人気は一種の〝社会現象〟と言えるほどに高まってる。

 全てがDJオカベの筋書きかどうかは分からないが、こんな3流役者らの茶番劇に多くの国民が乗っかってしまっているとは、まさに異常事態だ。


 ソファに仰向けになり右手に掲げたチケットを凝視した姿勢のまま、壁時計の秒針としばしにらめっこ状態になる…


「……明日は予定ないし…気晴らしに行ってみるか」


 時間はまだ夜の11前と早かったが、細かいことを何も考えたくなかった私は、次の日の〝ひやかし会〟に備えて、さっさとと寝てしまう事にした。




         (つづく)

◆あとがき◆


先日、自転車の試乗テストを行いました。

まだ足を曲げる過程で若干太ももに痛みは走りますが、サドルを高めに調節すれば問題なく移動は可能なカンジでした。

今後の課題は損傷した左足への体重移動ですが、無くなってしまった筋肉を元通り復元させるのはそう簡単ではなさそうです。


とはいえ、今のところ経過は至って順調とのこと。

「コツコツ努力を積み重ねれば、こんなに身体はしっかり答えてくれるんだ」

と本当に感心する今日この頃です。


第五話は2/4(日曜)に発表予定!

でわでわ~(^^)/

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ