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発狂  作者: 羽夢屋敷
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第十一話: 氏家 仁  ⑨

◆まえがき◆


病院からの配信も今回が最後となります。

一日も早く退院を…と体にムチ打って執筆しておりましたが、いざ退院となるとこの異常な環境から離れるのが少し寂しいような、なんとも不思議な気分です。。


さて小説の方ですが、

舞台は、氏家がK社を辞めた翌年、

〝2000年春〟のワンシーンから始まります。


大手ゲームメーカー退社後に氏家がとった行動とは?


第十一話のはじまりはじまり~!


  挿絵(By みてみん)





      ********



 ――ガタターーン、ガタターーン、ガタターーーン、ガタターーン……――


 すぐ近くで列車の走る音が聞こえる。

 中央線の線路横に並ぶ古いアパート群、家賃の安い高円寺エリアに我々二人は6畳一間の木造アパート物件を借りた。

 田舎の方でゲーム開発をやっていたとあるゲーム会社から安価に譲ってもらったWindowsNT版の「SOFTIMAGE」は、襖を外した押入れをテーブル代わりにしてそこに設置した。強い風で部屋全体がガタガタと肩をすぼめる。そんな小さくて貧相な空間が我々の最初の城だった。


「で、はじめはどんな手でいくつもり?」

「ネットの中に巨大な架空の世界を作ります…」


 我々は、城の規模から考えれば「冗談でしょ」と一蹴されそうな大きな目論見を胸に抱き、この辺鄙な場所に拠点を構えた。

 二人の頭の中にあったのはただ一つ、それは『業界の最先端に躍り出る事』。


 時は2000年の春。


 輝かしき世紀の変わり目に合わせ、前年末に彗星の如く発表された携帯電話があった。その商品はドコモの新機種「F502i」。F502iは、当時モノクロ画面だった無数の携帯電話機種の中で唯一、256色もの色が表示可能なSTN液晶を採用する業界初のカラー液晶搭載機種で、それまで殺風景だった白と黒の世界から一転、画面に文字や画像をカラフルに表現できるという、まさに次世代ケータイの名に相応しい優れものであった。

 しかしながら、その発表にローンチで主力ゲームを合わせてきた大手ゲーム会社の数は、なんと「0」。

 2000年代当初、この夢のケータイで展開された「本格的な新規タイトルゲーム」はサービス全体を通して見ても皆無に等しく、変わりどころで言っても、現在、独自の〝動画配信サービス〟で注目を集めるドンゴン社が現主力事業とはほど遠い「小麦のキャラクターとお喋りを楽しむ〝コムギちゃん〟」なるゲームを出していた程度で、その状況は非常に寒々としたものだった。


 今では考え難い事だが、そこから1年以上その状態は維持された。それほどに「携帯電話とゲームとのマッチングは時期尚早」と業界全体が逃げ腰の姿勢を続けていた時代だったのだ。

 だがそんな中我々は、世の主流とは全く真逆の考えを持っていた。


「ここは時代の分かれ目。何としても打って出る局面」

 それが我々が掲げたスローガンでもあった。


 無鉄砲な私の計画に手放しで乗ってくれたのはK社の1年上の先輩、川井氏であった。

 川井は、私がピクチャーノチームから外れた直後に突如湧きあがった自社ハード立ち上げプロジェクト「ETpjt」で同チームであった事がきっかけで縁ができた京大出身の敏腕プログラマーで、頭の回転が速く、行動も速い男だった。私が〝会社を辞めて実行したい計画がある〟と相談した時も

「その話乗るよ。で、いつ辞めるの?早いほうがイイよね」

 と、辞める時期さえ確定していなかった私を差し置いて、さっさと先に会社を辞めて、準備にとりかかってしまう。そんな男であった。


 彼が先に会社を辞めてしまった事で私の方も尻に火が付き、数か月先には二人で高円寺に戦いの拠点を構える訳だが、そんな走り出しであったからこの無謀なプロジェクトのリソースはといえば、我々2人の頭脳とわずかな機材、そして雀の涙ほどの資金だけ。やれる事は本当に限られていた。


「まずはドコモに自分達の企画を通すこと」


 それが我々の直近の目標であった。

 そして、そこをクリアしてしまえば後は何とかなるだろう。というのが我々の見立てであった。何の根拠も確証もない、リソースも僅かしかない、そうした状況下でなぜそのような楽観的な見通しを立てられたのか?そこには一つの勝算があった。


 我々には、実現さえしてしまえば


『携帯電話のコンテンツに何かを求めているユーザー+ゲーム好きなユーザーをマッチングさせてそれらを根こそぎかっさらえる』


 という夢のような策略があったのだ。



         (つづく)

◆あとがき◆


小さいながらも、なんとか手に入れた『自分たちの城』。

激動の時代に叩きつける氏家らの次なる一手とは?


次回は、高円寺の小さな「ぼろアパート」で2人が練り上げる〝渾身の計画〟のお話となります。

発表タイミングをお伝えできない所が心苦しい限りですが、プロットレベルでは最終話まで完成しているこの小説…

必ずや完結まで持っていく所存なので、何卒お見守りください。。。



※ご報告※

次回発表タイミングを含め、今後の動向は個人HPにてお伝えしようと思っています。

ご興味あります方は是非そちらのチェックをお願いします。

ではまた!次の機会に! (^^)/


(↓羽夢屋敷HP↓)

http://0803ugax.yukimizake.net/


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