バートンの優しさ
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その後も順調にホーンラビットを狩り、気づけば空は赤く染まっていた。
10体を討伐し終えると、それらをひもでくくって村へと運び込んだ。
角だけ持って行っても良かったのだが、解体の仕方がわからなかったためそのままにしたのだ。
「おー! 随分早かったじゃねぇか! 夜くらいになると思ってたんだがな」
「ホーンラビットは弱いですから」
「そうかそうか。あんまり筋肉がないように見えたから、もっと弱いかと思ってたぜ。人を見かけで判断しちゃだめだな!」
「・・・そうですね」
リョウマはリッチであるため、筋肉などない。
今は大きい布で身体を覆っているだけなので、バートンに正体を見破られたのかと少しヒヤッとした。
「明日中には出来ると思うから、今日は泊っていけ!」
「それは悪いです。近くに拠点があるので心配いりません」
「いいからいいから!」
「で、では甘えさせてもらいます」
「おうよ!」
「・・・」
いくら人から裏切られ世界を支配しようとしているリョウマであっても、純粋な善意からの誘いを無下にすることは出来ない。
人とのつながりに未練があると自覚し、覚悟が足りていない自分に嫌気がしていた。
一緒にご飯を食べる事をバートンに誘われたリョウマだったが、流石に口元を見せるわけにはいかない。
だから一人で食べられるように、個室を用意してもらった。
バートンさんには、シャイな青年と思われている。
「めしは美味かったか?」
「はい、とても。感動しました・・・」
「そんなにか! うれしいね!」
リョウマの言葉は嘘ではない。
前世の最後の食事は地下牢で出された、ゴミのようなもの。
生き返ってからは食べることをしていなかった。
だからこそちゃんとした料理に感動をおぼえたのだ。
ちなみに魔物が食事をする必要はない。
エネルギーとなるマナは、他の魔物などを倒したときや空気中から摂取することが出来るからだ。
食事は娯楽と言っていい。
それに対して睡眠は必要だ。
睡眠をとることで身体を休めることができる。
布団も用意してもらい、二人とも眠りにつくこととなった。
バートンとは違う部屋だが、扉を一枚隔てた隣の部屋だ。
声を出せば聞こえる。
「リョウマはどうして旅をしているんだ?」
「・・・力をつけるため、ですかね」
実際には旅をしているわけではないが、力をつけるというのは嘘ではない。
「そうか・・・。じゃあすぐに他へ行っちまうのか・・・」
「まあ、そうですね」
「うーん」
「どうかしたんですか?」
「いやー寂しいと思ってな」
「寂しい? 村にはまだネル村長もいるじゃないですか」
「今はな。だが俺らはもう年寄りだ。いついなくなってもおかしくねぇ」
「・・・」
「どういう形であれ、別れっていうのは辛いもんなんだよ」
「・・・なら、初めから一人で生きていた方がいいんじゃないですか?」
「ガハハハ! 面白いこと言うな!」
リョウマは真面目に答えたつもりだったが、予想外に笑われたことに驚いた。
「面白いですか?」
「そりゃそうだ。人っていうのは、一人じゃ生きていけない。一人で生きていくなんて、阿保らしいことを言ったから笑ったのさ」
「・・・」
「まあ俺と違って、リョウマの人生はまだまだこれからだ。そのうち、きっと俺の言った意味が分かるときが来るさ」
リョウマには理解できなかった。
前世では18歳にして大魔導士と言われ、一人でなんでもこなすことが出来た。
むしろ人と関わったことで、酷い目に遭ってきたのだ。
リョウマは誰かと関わることの何が良いのか分からないまま、眠りについた。
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