身に覚えのない容疑をかけられた俺を助けてくれたのは学校一の美少女でした。
初めまして!抹茶風レモンティーです!
処女作ですので拙い部分もあるかと思いますが楽しんで頂けたら幸いです。
「おい葛木っ!これお前の仕業だろ!」
俺、葛木秀は至って普通の人間だ。特にクラスでウェイウェイ言わせている陽キャでもなければ、友人が一人も居なくていじめられているような陰キャでもない。
強いて言うなら大家族の長男であり、まだ小学生にも上がっていない弟や妹の世話で遊ぶ時間がなかなか取れないだけのただの人畜無害な一般人。
だから目の前の陽キャ代表みたいな真城正人の言っている事には心当たりが全くないのである。
「どうしたの真城?何かあった?」
「しらばっくれるなよ!この惨状はお前が作ったんだろ!」
そう言われて教室を見てみると…中はかなり酷い有り様だった。
机が片っ端から倒れていて黒板も落書きだらけ…なんか無駄に絵が上手いな。
それに教室全体がびしょ濡れで廊下まで少し水が流れてきている。
幸いにもゴミ箱は無事なようだ…よかった、もし倒れていたら例の黒い奴が現れるところだったからな。夏場のゴミ箱は本当に危険地帯だ。
「確かにこれは酷いね。でも俺は何もやってないし無関係だよ。今来たところだし。」
これは本当で俺はこの事件に関わっていないし、犯人に心当たりもない。
「嘘をつくな!昨日の放課後、お前が教室でバタバタ音を立てていたのを見た奴が居るんだよ!!」
そんな筈はない。昨日、俺はすぐ帰って幼稚園にいる弟妹たちのお迎えに言っていたのだ。
「昨日はすぐ帰ったし本当に何もやってないよ。見間違いなんじゃない?それに水が乾いてないんだし今朝荒らされた可能性もあるんじゃないかな?」
「っ今日俺が朝一番に来た時には既に荒らされていたし、何より証拠の写真があるんだよ!」
そう言って真城が見せてきたのは俺が机を倒してる瞬間の写真だった…っっは!?
「えっ、どうして!?違うっ!俺はやってない!」
何で俺が写った写真があるんだ!?
確かに昨日はすぐ帰ったし、机を倒すような行為もしていない筈だ。
「あの写真どこからどう見ても葛木君だよね。」
「まじか葛木、良い奴だと思ってたのに。」
「葛木っ、てめぇが俺の置き勉した教科書ぶちまけたのか!!おかげでびしょ濡れじゃねーか!!!」
「ほら見ろ、葛木!お前が犯人なんだろ!」
最悪だ…
クラスの連中も俺を疑い始めてるし、もし備品が壊れてたら家族に迷惑がかかるかも知れない…
家はそもそも裕福な方じゃないし、弟妹たちもいる。
家計に負担をかけたら本当に申し訳ないし、皆に合わせる顔がない。
「待ってくれ!俺は本当に心当たりがないんだ!信じてくれ!!」
「ごちゃごちゃと見苦しいぞ葛木っ!動かぬ証拠があるん…
「おはようございます。なにやら騒がしいようですがどうかされましたか?」
この言い争い真っ只中に堂々と入ってきたのは学校一の美少女と名高い如月麗香だった。
如月さんはその美貌に加えて、定期試験では常にトップで、運動神経も抜群、おまけに実家が日本屈指の財閥であり、告白された回数は3桁に届くらしい。
それでも今まで誰とも付き合った事が無いのだとか。
…ここまで堂々と割り込まれると少し落ち着いて来たな。
「如月さんっ!?そ、それが葛木のやろうが教室をめちゃくちゃにしやがったんだよ!」
だからさっきから俺はやってないって言ってるのに。
真城も如月さんの事が好きなようだからここで正義感があるところを見せつけたいらしい。
「そうなんですか…確かに荒らされてますね。ですが葛木君がやったという証拠はあるんですか?」
「ほら見てよ、この写真!葛木が教室を荒らしたんだよ」
これが本当に謎なんだよなぁ。俺はやってないのにあたかも犯人みたいに見える。
「確かに葛木君が写ってますね。葛木君、本当に貴方がやったのですか?」
「違うよ。俺はやってない、無実だ!」
本当にやってないんだ!信じてくれ!
「葛木君は否定しているようですよ」
「それは葛木が嘘をついてるんだ!この期に及んで嘘をつくなんて見損なったぞ、葛木!」
「だからまじで本当なんだっ…
「まぁ、葛木君嘘をつくなんていけませんよ、ねぇ真城君」
「そうだよね、如月さん!
葛木、嘘をつくなんて"自分が犯人です"って自白しているようなものだぞ!!」
「何かの間違いなんだって!俺は何もやってない!」
だから俺はやってないんだ!
「?………あら、何か違和感があると思ったら、よく見たらこの写真には葛木君の影がありませんね。まるで合成写真のようです。」
?そう言えば俺の影がないな。っと言うことはもしかして俺への疑いは晴れるかも?
っていうかさすが如月さん、細かいところまでよく気がつくなぁ。
「ちょっと知り合いに警察の方がいますので調べて貰いましょうか。」
「っけ、警察っ!流石にそこまではしなくてもいいんじゃないかな如月さん!」
…真城がやけに慌てているな。もしかして真城が犯人で俺を嵌めようとしたのか?でも何で?
「どうしてですか?真城君、
なにやら慌てているようですが、もしかして何かやましいことでもあるんでしょうか?
そもそも良く考えたら、これはどなたが撮ったのでしょうか?机を倒してる現場に居合わせてわざわざ止めに入るのではなくて写真を撮るなんて、変わった人のようですね。
まるで葛木君に濡れ衣を着せたくて用意したみたいに思えてしまいます。
真城君、この写真を撮ったのは誰なんでしょうか?」
…なんか如月さんの圧が強い…
「そっ、それは………俺の下駄箱に匿名で手紙が入ってたんだ!
"葛木が教室を荒らしてるのを見てしまったけど告発したら仕返しに何されるかわからないから代わりに葛木を問い詰めてほしい"
って内容の手紙が!だから俺はその人の思いに答えようとして葛木を…
「じゃあ貴方はそんな信憑性の薄い証拠で葛木君を責めていたんですね。随分と歪んだ正義感をお持ちのようですね。
そう言えば昨日、私は先生にお願いして普段よりも遅くまで教室で自習をしていて、自習が終わった時に帰ろうとしたら8時を回っていたんですよね。この学校の最終下校時刻はとっくに過ぎていましたし、見回りの先生にも少し叱られてしまったんですよ。もちろんその時は教室は普段通りでしたよ。
そうなると昨日の内にこれだけ荒らすのは不可能だったんでよねぇ。つまり今日の朝一番で荒らされたって考えるのが自然なんですよ。
さて今日、一番早く来ていたのは誰でしたっけ?真城君」
「っいや、俺は皆が来た後にここに来たから知らないんだ。ごめんね如月さん」
あれ、確かさっき真城が朝一番で来たって言ってた筈だ。
あれだけ大声だったし皆聞こえてると思うが。
「さっき真城君、自分で"朝一番に来た"って言ってなかったっけ?」
「まじか真城、良い奴だと思ってたのに」
「じゃあ真城!!てめぇが俺の教科書を!!!」
「…どうやら今日一番早かったのは貴方のようですね、真城君。しかもさっき貴方が言ってましたよね"嘘をつくなんて自分が犯人ですって自白しているようなものだぞ"って。と言うことは貴方は自分が犯人だと自白しているんですかね。どうなんでしょうか?真城君」
凄い…まるで探偵みたい。
…
…
…
「なんだーこの騒ぎは。ってなんだこの教室!あー、取り敢えず言い争いが廊下まで聞こえてるぞ。少し静かにしろよー。それから真城っ、ちょっと生活指導室まで来い。」
どうやら生活指導の先生が近くを通ったらしくそのまま真城は生活指導に連行されていった…なんか急展開だったけど俺への容疑は晴れたみたいでよかった。
それにしても如月さんが来てから一瞬で解決したな。
「ありがとう如月さん、危うく犯人にされるところだったよ。それにしても凄いね、なんだかかっこよかったよ!」
「っいえ、お礼には及びませんよ。当然の事をしたまでですし。またいつでも頼って下さい。
…
…
っそ、それでですね、もしまた何かあった時のために、れっ連絡先を交換しませんか?」
まじか、如月さんの連絡先とか貴重すぎて国宝レベルだぞ。
…周りの視線がまるで親の仇を見ているかのように痛い。
っく、ここは非常に残念だけど諦めるべきか…
「ぜひお願いします!!!」
ん?周りの嫉妬?そんなもの連絡先の前には無力なのだよ。
「……った!…」
「っん?何か言った?」
「っい、いえ何も。それよりもこの惨状をなんとかしましょう。皆さんも手伝って下さい!」
―如月麗香視点―
「やりました!ついに葛木君の連絡先をゲットしました!!しかもかっこいいと言われてしまいました!!!」
あれから人気のない場所に移動した私は一人で舞い上がっていました。
きっと今の私の顔はこの上なく緩んでいることでしょう。っといけません、もしこんなところを葛木君に見られたらせっかく良いところを見せれたのに台無しです。気を引き締めないと。
それにしても、今日も葛木君はかっこよかったですね。そしてそんな葛木君に褒められたなんて最高です。
「お嬢様」
そうだ、今日を記念日にしましょう。連絡先ゲット記念です。
「お嬢様」
帰ったらお赤飯を炊きましょう。
そして部屋で葛木君の連絡先を見ながら一人でベットに潜り込むんです。
ナニがとは言いませんが今日はとても捗りそうです。
「お嬢様、そろそろ無視するのはやめていただけませんか?」
「何ですか真城、せっかく人が良い気分なのに」
「はあ、今回の葛木君に良いところを見せて連絡先ゲット大作戦の最大の功労者である私にその態度ですか…」
「あら、あなた随分と偉くなったものですね。
最初に水が乾いてない事に気づかれて、動揺しまくって最終手段だった筈の合成写真をすぐに使ってしまった人が。
それに演技が棒読みすぎませんか?陰から盗み聞きしていて、とても分かりやすかったのですが。
私の世話係としてあれはどうなんでしょうか?
もっと普段から落ち着いて行動しないからこのような大事な場面で…
「大変申し訳ございませんでした!!!」
「…まぁ、今は気分が良いのでこのくらいで勘弁してあげましょう。葛木君に感謝しなさい。」
そう、実は真城はお父様が学校生活を心配して私につけた世話係である。
今回の騒動も私が葛木君の連絡先をゲットするために真城に命令して起こさせた自作自演で私の計画だったのです。
「ところでお嬢様、あの後先生方に凄まじいお叱りを受けたのですが、報告はしないという話ではなかったのですか?」
「あぁ、それなら仕方なかったのです。よりにもよって生活指導の先生が通りすぎるとは思いませんでしたから。あの状況で犯人について言及しなかったら怪しまれますからね」
「はぁ、そうですか。まあ今回は壊れた備品もなかったのでそこまで重い処罰は下りませんでしたが、もうこんな損な役割は勘弁して下さい」
「ふふっ、それは保証出来ませんね。葛木君に私を好きになって貰うまでは止められませんから」
さて、次はデートに誘う為の作戦を考えましょうか。