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第9話 進撃のスローライフ

 奴らは忘れていたのだろう。

 自分たちばかりが、相手を襲う立場では無いということを。


 殺戮機械が何やら展開し、鋼鉄の処女みたいな姿になった。

 この中に泣き叫ぶ人間を放り込もうと、ブラッディアンたちは大盛り上がり。


 なので、殺戮機械の後ろにこっそりと忍び足で近づく俺に気付かなかったのだ。

 当然、虫網を構えている。


「そりゃ!」


 ピョインッと音がした。

 今にも人間を飲み込んで、ジューサーのように血を搾り取ろうとしていた殺戮機械は、アイコンになって俺のアイテムボックスにいる。


『!?』


 一瞬、ブラッディアン全員が固まった。

 何が起こったのか全く理解できていない。


 俺はすぐにホネノサンダーにまたがった。


「はいよー!」


『カタカター!』


 パカポコと走り出すホネノサンダー。

 ここで、ブラッディアンは正気に返ったようだ。


『ウグワーッ! 初めての人助けをしました! 200ptゲットです!』


「おっ! 人助けしてもポイント得られるじゃん! ウィンウィンじゃん!」


 俺のテンションが上がった。

 ブラッディアンは俺を追いかけて駆け出すのだが、その頭上を通過したポタルが骨のベルを鳴らす。


 空から降り立つ、骨三郎、骨四郎、骨五郎。

 彼らはブラッディアンに横から組み付くと、次々にフロントスープレックスで投げ倒す。


『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』


 ブラッディアンが慌てた。

 まさか真横から襲われるとは思っていなかったのだろう。

 奴らは我らが骨軍団に標的を定める……。


『こっちがお留守ですぞーっ!!』


 ラムザーが来た!

 四本の腕に装備した槍や剣や斧で、ブラッディアン一人をたちまちのうちに血祭りに上げた。

 あっ、ちょっともったいない!


 完全にブラッディアンがパニックになったので、ホネノサンダーから降りた。

 これからはフィーバータイムである。


『カタカター!』

『カタカタ』『カタカタ』『カタカタ』


 骨次郎が、骨六郎と骨七郎と骨八郎を率いて殺戮機械と戦っている。

 壺みたいなのをみんなで囲んで、棒で叩いているようだ。

 おお、割れていく割れていく。


 ちょっと……ちょっともったいない……!!


『もがーっ!!』


 そんな俺の気持ちを汲んでくれたのか、怒りで目を吊り上げたブラッディアンが、殺戮機械を呼び寄せてくれた。

 俺はそーっと忍び寄り、起動した壺型の殺戮機械に向かって虫取り網を振り上げる。


「ゲットだぜ!!」


 ピョインッと壺型をアイコンに変える。


『もがーっ!?』


 驚愕するブラッディアン。

 殺戮機械がいきなり消えたのだから、まあ気持ちは分かる。


「囲めーっ! 一匹も逃がすなー! みんなポイントに換金してやるからなーっ!!」


 俺が叫ぶと、骨軍団が残るブラッディアンを追い立て始めた。

 ラムザーはちょっと手加減して!

 ブラッディアン減るでしょ!


「おお……何が……何が起きておるのですじゃ……!」


 驚愕しながら、囚われていた老人が呟く。


「わしらの命はもう終わったものだと思っていたのに、あのブラッディアンたちが為す術なく逃げ惑っている……」


 電撃作戦だからな。

 本領を発揮できないうちに全部アイコンに変えて売り払うのだ。


『もがーっ! もがーっ!!』


 骨次郎たちに押さえつけられたブラッディアンを、ピョインッと回収する。

 ラムザーに押されてたじたじなブラッディアンを、背後から回収する。

 自動的に動き出した殺戮機械は、スケルトンたちに棒で押さえてもらって回収した。


「おお、もうアイコンがいっぱいだ!」


「タマルー! このあたりのブラッディアンも殺戮機械も、全部いなくなったみたい!」


 空から偵察していたポタルが告げたので、ここで作戦は終了なのだ。


「撤収! 撤収ー!!」


 俺が声を掛けたら、ラムザーと骨たちがわらわらと集まってきた。

 全員で、「いえーい」とハイタッチする。


「あなた様は一体……!? まるで、我々と同じ人間に見える……」


 人々が俺をじっと見つめている。


「うむ……俺は」


『この方は新たなる魔人侯、タマル様だぞ。世界の全てをポイント換算してスローライフなるものをしようと画策なさる恐ろしいお方よ……』


「ひええ」


 人間たちが震え上がった。

 ラムザー余計なことをー!


『タマル様、こやつらに感情移入してもあれですぞ。ただの足手まといですし、しかも慈悲に縋ってくる可能性すらあるので足を引っ張ってきますぞ』


「ああ、そういう……。なるほどね」


 ラムザー頭いいな。

 俺は咳払いすると、それっぽい感じで口を開いた。


「いかにも……。俺は魔人侯タマル。流血男爵を捕まえて売り払いに来た」


「流血男爵を売り払う!?」


「と、とんでもない事を仰るお方だ」


「恐ろしい恐ろしい」


 人間たちの顔が畏怖に染まる。

 うんうん、恐れてくれ。


「お前たちは売るとなんか寝覚めが悪いので、適当に散るがいい。生活基盤とかある? 大丈夫? あ、狩りとかはできるのね? じゃあ俺は流血男爵をちょっぱやで片付けるので、お前たちはそれまで隠れているように……」


「なんだかんだでタマルってお人好しよね?」


『うむ。ポタルを連れてきたのも、その辺りの理由でしょうな』


「うるさいよ!?」


『カタカタカタ』


 骨も七人と一頭で揃って笑うな!


『ウグワーッ! 捕獲数が一定量に達しました! 300ptゲット!』

『ウグワーッ! 評判・解放者レベル1を得ました! 200ptゲット!』


 一度にポイントゲットが来たな。


『さて、これで遠からず流血男爵がこちらに目をつけると思われますが、領内でうかうかしていると狩られますぞ』


「うむ。うかうかせずにさっさと男爵をゲットせねばならないな。行くぞ!」


 タマル一味は、即座に荷馬車へ戻るのである。

 次なる標的は、男爵の城だ。


 UGWポイント

 570pt


 評判

 ※解放者レベル1


本日ラストの更新。

こうして魔人侯タマルの名は響き渡ったり響き渡らなかったり


お気にいっていただけましたら、下にある星を増やしますと作者が喜びます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 普通にぬっころすのと捕まえて売り払うの、どっちがマシなんだろうか…答えは景品を買い取る神のみぞ知る
[一言] スローライフ力が強すぎる…逃げて男爵…!
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