第82話 怪物たちがふわふわ流れていく
「あっ、なんか流れていった」
「なんだなんだ」
ポタルが指さした先を見ると、俺たちが掘り進んだカタマリマグマの穴から、ふわーっと怪物が流されていくところだった。
水の流れに乗っている。
白目を剥いてるので、もう死んでるっぽい。
赤くて大きなタツノオトシゴみたいなやつだな。
マグマに生息してたけど、突然海水で冷やされて死んだみたいだ。
俺は駆け寄ると、虫取り網でゲットした。
「名前は……ファイヤーシーホース? シーホースなのに海水にやられたのか」
『新しいレシピが生まれた!』
▶DIYレシピ
※バーナー
素材:ファイヤーシーホース+鉱石
「水中では使え無さそうなのが生まれたな。だが、ファイヤーシーホースは有効活用してやろう」
『タマル様の作るアイテムなら、水の中でも使えるのではないですかな?』
「そうかな? そうかも」
ラムザーに言われてその気になった。
カンカン作業を開始すると、できました、バーナー。
炙ったりするのに使うのだろうが、どういう用途になるだろう。
肉に焼き色をつけたりする?
だとすると、DIYお料理レシピに頼らないスローライフへと歩みだした、俺たちにピッタリのアイテムだ。
「どーれ」
バーナーを脇に抱え、射出口をマグマに向ける。
スイッチを押したら、水中なのに炎が吹き出した。
おお、固まっていたマグマが柔らかくなる。
これをラムザーが、斧でちょいっとかき分ける。
俺がまたバーナーでマグマを柔らかくし、ラムザーがかき分ける。
こりゃあいいや。
混ざっている岩石はドリルで壊す。
こんな感じで突き進むのだ。
『オー! ワークのプロシージャを見てるとスロウリーな気がするのですが、実際にはとってもファストでーす!』
「なあにそれ」
『プロシージャは手順のことでーす』
ほうほう。
また一つ賢くなった。
ちなみに、ドリルでも広範囲のマグマを粉砕できる。
バーナーはマグマを貫通し、長距離を柔らかくできる。
ラムザーがかき分けると、一気に10mくらい俺たちは進める。
なので、これらの作業は異常に効率よく進んでいるのだ。
さすが、スローライフ用の不思議な道具たちである。
『あっ、なんかまた流れていくんだけど! うわわ、いっぱいくる!』
キャロルが慌てて、スポットライトを振り回している。
光がチラチラしていかん。
「ファイヤーシーホースの群れだな。俺たちが入ってきた穴の方に流れてるってことは、もう迷宮は水で埋め尽くされたのかもしれない」
そう思ったら、後ろから魚がすいすい泳いでくるではないか。
『さ、魚……!』
キャロルがよだれを垂らさんばかりの表情でこれを見送っている。
お腹すいちゃったかー。
迷宮とは名ばかりで、冷やされたマグマの爆発っぽいもので瓦礫の山になった通路を、ひたすら掘り進んでる感じだからなあ。
俺たちもお腹がすいたと言えばすいた。
「この辺りで飯にしよう。水を避けられるところを探さないとな!」
『オー! ミーにいいアイディアがありまーす!』
「ほう、フランクリンくんやってくれたまえ」
『オーケー!』
『おや、フランクリンが天井を掘り始めましたな。おお、瓦礫が降ってきますぞ』
『オーノー』
『埋もれましたな』
「後先考えない雪だるまだな。助けてやろう」
俺とラムザーで、瓦礫を取り除いてやった。
頭上にはぽっかり穴が空いており、そこには水が入り込んでいない。
つまり空洞があったのだ。
「本当に空洞だ。よくこういうのがあるって分かったな!」
『イエス! ボルケーノにはガス溜まりがありまーす! あれはつまりそういうサムシングでーす』
「なーるほど。ガスは?」
『水にメルトしてますねー』
何より、ヘルズテーブルに酸素という概念があるのかが謎だしな。
行ってみよう。
みんなでわいわいと、ガス溜まりに入った。
シュノーケルを外して呼吸してみると、ちょっと臭いだけで息ができるではないか。
水中でバーナーが使えて、シュノーケルするだけで水中呼吸できる世界だもんな。
真面目に考えるだけおバカであった。
「ここで食事とする!!」
『うおおー! やったわー!!』
キャロルがスポットライトを放り投げて快哉を上げた。
そんなにお腹すいてたの。
キャロルがくれた果物と、それからあと一品用意しようということになった。
ファイヤーシーホースは、中身がマグマだらけだったし、岩みたいに硬くて食えない。
『どれどれ……。ほう、これは薄く切って食べるものみたいですな』
「なんだって」
斧でファイヤーシーホースの肉をちょっとスライスしてみる。
みっちり中身の詰まった、ジャーキーのような肉だ。
なるほど、このままだったら硬くて食えないはずだ。
薄くすると歯ごたえがあって、噛む度に味が染み出してくる。
『うっま』
「さっそく食ったなキャロル!」
「あたしも食べる! あとみんな! 果物食べる時はキャロルに見えないように食べてね! マンイーターのマナーだって!」
『はっはっは、そりゃあ守らねばなりませんな!』
『オー、ヘルズテーブルに入ってはヘルズテーブルのルールに従うでーす!』
「ここにも郷に入らば郷に従え的なことわざがあるんだな。いや、フランクリンの言うことだぞ。こいつ平気で地獄に仏とか言うからな……」
みんなで背を向けて果物を食うのだった。
美味い!
甘酸っぱくて汁気が多く、それでいて胃にドッシリ来る満足感。
振り返ると、キャロルがドヤ顔をしていた。
どうだ、美味かろうという顔である。
『これはね、普段ならたくさん人を食ったあとに実る果実なんだけど、最近は栄養がめちゃくちゃ多いじゃない? だから豊作だったのよー』
「ははあ、本来なら人体の栄養素を凝縮した果実……! マンイーターみが強い」
こうして、英気を養う俺たちなのだった。
▶DIYレシピ
バーナー
第三部からは、一日一回更新になります。
よろしくお願いしますー。
そして隙間を作って新作を構想します。
この話もまだまだちょっとだけ続くんじゃ。




