第5話 プロローグの終わりに
ここまでか――
その強いオレンジ系の髪の印象を和らげるべく白いカチューシャをした少女は今にも自らのビリジアンの瞳を閉じて観念でもするかのような様子だった。
少女が参加してるゲームのマップは高層ビルの立ち並ぶ光景に基く荒廃した市街地……暴走した警備ロボットが至る所で徘徊。
撃破によりポイントが取得出来るエネミーは警備ロボットに寄生した有機生命体で警備ロボットを撃破すると滲み出た末に本来の姿で襲い掛かって来る。
弱そうな警備ロボットを撃破してみれば強力なエネミーが潜んでいた事実に直面した少女――野坂雪乃は己の軽率さを悔いていた。
考えてみれば、ここは自分の能力とは相性が悪過ぎる……参加しなくてもよかったのに。
目の前のエネミーは六本脚の獣の頭部が人型の上半身に置き換わったかのような形状……全体はドロドロとした赤紫色で歪な形状を為し、所々にある眼球の瞳部分はやけに鮮やかな緑色を放つ。
凶悪な形状の手からは鋭い鉤爪が伸びており、自分はこの爪に裂かれて死ぬのだと野坂雪乃は感じていた。
赤紫エネミーが腕を大きく振り被り……今、まさに少女の体ごと薙ぎ払おうとした瞬間。野坂雪乃の目の前で大規模な爆発が巻き起こった。
前述の通り、周囲は高層ビルなどの建造物に恵まれている……この規模の爆発が起これば、こうして野坂雪乃が瓦礫に埋もれるのも不思議ではない。
辛うじて開いた隙間から、野坂雪乃は目撃する。
一人の剣士がこの場に降り立ち、赤紫エネミーに立ちはだかる様を。
赤紫エネミーはシルエットだけ見れば人型だが形状自体はヒトと主張出来る要素に乏しい……そんな頭部で開かれた口から血の色を彷彿とさせる紅いビームが吐き出される。
背中に剣を背負った剣士は他の剣を手にしており、その剣を突き出すと剣先にバリアでも張られたかのように紅いビームを防ぎ切る。
鉤爪による攻撃も周囲にバリアがあるかのように防ぎ、隙を見て赤紫エネミーに斬撃を浴びせ……やがて周囲の地形を利用して上空へ跳び上がった。
野坂雪乃の角度からは見えなかったが、この時、剣士の目の前では光るオブジェクトが横回転しながら降りて来て……その形状といい大きさといい、誰もが「カード」と形容するだろう。
そんなカードを包んでいた光が弾けてから程なくして……剣士の手には槍が握られていた。
目で追うのが困難な程の速さで赤紫エネミーを次々と突く剣士は時折、電撃を放ち赤紫エネミーの動作を許さない。
再び剣士の前にカードが現れ、野坂雪乃の視界でも武器が槍から剣に変わるのが確認出来た……最初に見た剣とは形状が違う事も。
赤紫エネミーは弱っており、暫くは反撃して来ない様子さえ漂わせる。
剣士が新たに手にした剣に光が集まって行き……剣士が距離を取った位置から力強い斬撃を繰り出すやその軌跡がそのまま光の刃となったかの如く紫にエネミー目掛けて飛んで行く。
未だ満足に身動き出来ない赤紫エネミーはその斬撃を直に受け……全体から見て斜めに両断され、溶けて蒸発するかのような撃破エフェクトが始まった。
なん、だったの……?
既に剣士は視界から消え去り、野坂雪乃は自分が生き延びたという事実に気付くのも忘れ、呆然としていた。
ProgressⅠ読了ありがとうございます。
4話と5話の文字数合わせても3000文字無いので一括すると言う選択肢もありましたが、それは本作で採用した書き方「1つの話数内で一人称と三人称が複合する事は無い」に反します。
その上で2話と3話のような前後編構成内では話数単位では違う人称で書くケースもある事を示せたのはよかったです。
出来れば前書きも後書きも作品への没入感を損なう為、多用は避けたいのですが一章の区切りという状況に甘えて今回ばかりは更に後書きを連ねて行きたいと思います。
Vや資料動画漁ってると「ご視聴ありがとうございました! よければチャンネル登録、高評価よろしくお願いします!」みたいな発言をしていますので、ちょっと倣ってみます。
ProgressⅠを最後までお読み頂きありがとうございました! よければブックマーク、相応と思った評価ポイント、感想の検討、お願い致します! ……こんな感じになるのかなぁ。
とりあえず2話のようなラストでこういった後書きがあったら懸念事項の通りになりますので、こういう趣向の後書きはこれが最後同然にするのも手となりそう。