第49話 虚ろな白は有を描く
雌雄の定義が生物の為にしか無いのならば統合四日目にマインゴーレムと対峙したエルドーラのリーダーが放った『アレックス』という能力より出でたものは男性でも無ければ女性でも無いのだろう。
彫像や人形のように象ったものの概念に倣って性別を主張する手立てはあれど、このアレックスからは「二本の腕を持つ白い何か」を越える有力な情報が無い……マインゴーレムと比べれば見劣りするものの人間の背丈を凌駕する体躯ではある。
質感を読み取ろうにも色が単一である以前に、物心も付かぬ頃の子供に筆を持たせて油絵を描かせたようなタッチで構成されたその白は塗りムラが激しく、触感を確認しようにも物体は軒並みすり抜けてしまう。
そんなアレックスは使用者である金髪の女性が受けるダメージを自身の色に赤が加わる形で引き受け、その赤味が完全に抜けて純白に戻るまではアレックスを呼び出す事が出来ない。
アレックスが真っ赤に染まった状態で使用者が更なる攻撃を受ければそのダメージは使用者に反映される……人体にとっては深手となるダメージでもアレックスには軽傷程度である。
アレックスに蓄積されたダメージの回復速度は緩やかだが受けるダメージの上限は心許無いと言うには多めか。
そんなアレックスが今や呼び出され、マインゴーレムを撃破すべく行動を開始する事になりそうだが……能力体系を説明する上で、こんな話をしよう。
洞窟の中を彷徨う少女が綺麗な石を見掛け近付くと……石の能力が発動し少女は眠りに落ちた。この時、相手を眠らせる能力は少女の能力と言えるのか?
それが否定されるならば、金髪の女性には一切の能力が無い事になる。
ここまで白い二本腕を便宜上「アレックス」と呼んではいたが、白い二本腕が有する能力体系こそがアレックスである……そう考える方が的確かもしれない。
アレックスという能力名なのは金髪の女性が当時眺めていたランキングでの各グループのリーダーらしき登録名に男性と思われる名称が目立つと感じ、その中に紛れるべくリネームした結果。
金髪の女性はアレックスに指示を出せるのだが、どのように指示するかを説明する上で、更に語るべき事項がある。
頭部に瞳らしきものは一切無く、頭部という解釈さえ的確か怪しい部分が描く輪の内側には虚ろな空間……そんなアレックスが視ている世界は全てが抽象的な油絵のように捉えられ、具象性が大幅に損なわれている。
例えば赤い丸の上部が何らかの色で滲んでおり、その部分がヘタだったとして、リンゴとトマトのどちらなのか判断する為の情報が欠落している。
アレックス出現時の金髪の女性は常に前述の油絵視界を確認出来るが……それはアレックスが金髪の女性に視界情報を渡しているからに過ぎない。
自らが視る景色に対しアレックスは限られた絵の具で絵を描く事が出来、金髪の女性はその内容を指定出来るのだが……アレックスの知性と知識はデタラメで「これが出来るなら、これも出来る」がまるで通用しない。
その動作指定が単純か複雑か、必要となる知識が基礎的か応用的か……それらの理解度の分布が段階を踏まずに所々にある、といった具合。
今の金髪の女性を眺めればアレックスにマインゴーレムの腹部目掛けて一筋の白い線を引くよう指示……描画後にそれが何であるかを伝えた。
次の瞬間、マインゴーレムの腹部に白く眩い一筋の光が走り……巨大なスプーンでひと掬いしたのかと思える程の球面気味の形状で腹部の大半が深く穿たれた。
大きく空いた部分が赤熱し溶融している事から熱を受けた結果だと判るが……アイアン相当段階のマインゴーレムには硬度に加え融点や沸点も設けられ、その数値は地球上にある金属を手本にしていると類推可能か。
摂氏において鉄の融点は千五百三十六度で沸点は二千八百六十三度、最も沸点の高い金属タングステンでも融点三千四百七度で沸点は五千五百五十五度……触れた瞬間蒸発したのならば必要な温度を大幅に上回っていると考えられる。
金髪の女性は同じ線をマインゴーレムのボディの至る所目掛けて引くよう指示した為、各々の白い線がマインゴーレムに触れた先はまもなく先程と同じ事態に陥るのだろう。
アレックスからすれば白い絵の具で少し線を引いただけに過ぎず、白い線は「アレックスが認識する雷」から成っている。
金髪の女性が先程、白い絵の具を雷では無く石灰の塊などを指定していれば、この線の全てが石灰の柱となっていた事だろう。
一度指定すると上書き出来ない上に、その色に定まったものを他の色で指定する事は出来無いという制限がアレックスの能力にはある。
アレックスが自らの視界内で使用した絵の具から形成された具象性に欠ける絵によって生じたものは「実際に存在するものとなる」……それだけでディスタンスが高位となるには充分だった。
アレックスが描いて出現したものは次にアレックスを呼び出すか使用者が眠るまでその世界に存在し続け、絵の具に割り当てた内容はアレックスが戻った時点でリセットされる。
アレックスを呼び出す直前まで金髪の女性が使っていた何十本ものナイフはゲーム開始時に金髪の女性がアレックスを呼び出し、一本だけ持ち込めたIGC社製の合金ナイフが元となった。
アレックス出現前まで周囲にあった合金ナイフの群れは全て無くなったが、見本となった一振りは今も金髪の女性が所持したまま。
アレックスが合金ナイフを見ながら描いたものはアレックスにとっての合金ナイフ……それを幾つも描けば同じ合金ナイフがその数だけ現れる。
そして「アレックスが描いて出現したものは金髪の女性が自在に動かせるもの」という性質が備わっている為、念動力などの能力を持たない彼女でも思うがままに操る様を実現……そういう存在がこの世に現れたのである。
アレックスの知性及び知識はデタラメの為、見本無しで指定すれば実際のものと大幅に異なるものになる場合はあれど雷に関してはなかなか忠実に認識していた。
基底の能力の中には雷魔法もあるが、それは注いだエネルギーを雷のような挙動で放つ、言わば能力の生成物によるハリボテのようなもの……そんな中、アレックスが認識する雷は以下の通りも同然だった。
――温度は摂氏三万度。電圧は一億ボルト。電流は二十万アンペア。直径十センチメートル。それらが発生時に一秒間、維持される。
電力の単位はW……電力が維持された秒数を乗算すれば熱量の単位Jが求まりWは電圧と電流を乗算するだけで導き出せる。
今回の雷は一秒間発生したので電圧と電流の乗算結果そのままの値である二に十の十三乗を掛けた二十テラJとなる。
電気抵抗を踏まえればこの値そのままでは無いが、一トンの弾丸を発射して二十テラJのエネルギーを得る場合、必要な速度は秒速二百キロメートルにも及ぶ。
大きく抉られたマインゴーレムの腹部が赤紫クリスタルで再生されるのも待たずアレックスが更なる白い線を六本引く事となり、上述の雷がマインゴーレム目掛けた六箇所で生じる光景が繰り広げられた。
六発の雷の命中により更に体が抉れたマインゴーレムを確認した金髪の女性はアレックスに更に白い線を引かせ、雷が命中する度に二本か三本で指示して行く。
次第に冷めて行くはずの摂氏三万度が絶えず更新され続け、マインゴーレムの体は常に沸点を越える熱が加わった状態に。
アレックスの視る景色は常に一枚の油絵のような平面的なもの……対象を正面から捉えていれば背面に線を引くような事は出来ず、側面からならば引いた線は一番手前の箇所に適用される。
故にマインゴーレム裏側はまだ金属部分が多く、それを予期していた金髪の女性は自分の近くに黒と緑を混ぜた四角形をアレックスに塗らせ、それを「ビリジアンの分厚い石板」と指定。
以降、アレックスが黒と緑で描いたものは混色比率を問わずにビリジアンの石で生成される。ビリジアンの色相自体は青緑だが、アレックスは色味の判断が曖昧で描く絵自体も具象性を損っている。
その結果、暗い緑はビリジアンから青味という情報が欠落して描かれたもの……砕けた形容ならば「暗い緑ってビリジアンっぽいから」。程なくベッド二つを横に並べて幾らか拡大したようなサイズの足場を持つビリジアンの板が出現。
この石の強度はそれほど高くは無いが、建築材料を担う上で充分な頑丈さを有する事を金髪の女性は把握している為、「アレックスが認識する石」で良しとした。
アレックスが描いて出現したものは金髪の女性が好きに動かせるが……自由自在とまでは行かず、その自由度は対象の形状に依存する。
例えば一冊の本とそれと同じ大きさの板がアレックスにより出現した場合、手を使わずに本のページをめくる事は出来るが、板をそのような形状に変形させる事は出来ない。
そんなビリジアンの石板に乗って浮き上がらせた金髪の女性がマインゴーレムの背後を目指して蛇行を交えて移動する中、アレックスは周囲の建物を素通りし金髪の女性の傍をゆったりと漂うように付いて行く。
アレックスの視界にマインゴーレムの背後がある事を確認した金髪の女性は先程の数本の白い線による時間差雷撃を再開。
またもボディの至る所が赤熱状態となったマインゴーレム……赤紫部分も大分増えて来てはいるが、そのダメージを肩代わりする金属部分がまだある為、赤紫色の結晶部分は無傷のまま。
外側全てが結晶部分だろうと内側では金属部分が残っている場合もあるが、目を凝らす必要はあるものの透明度のある結晶部分越しに不透明な金属部分を確認する事自体は可能。
そんなマインゴーレムも遂に全体が赤紫色の結晶状態となり、残量の減って来た白い絵の具による雷を尚も三発受ける。
マインゴーレムの比重は金属段階が八に相当し、赤紫段階が二十と言えるが……融点と沸点どのようになっているのか。
金属部分はソリッドのアイアン……鉄と鋼鉄の中間に該当する為、それよりも高い数値という予想は可能だが、水晶即ちサファイアなどの鋼玉などに変化したならば酸化アルミニウム……金属のままという事に。
摂氏三万度の熱量に触れたのが金属ならば蒸発しているのだが……結果から言えば、赤紫色のクリスタル部分はアレックスの雷が直撃しても蒸発は疎か溶融にさえ至っていなかった。
ソリッドのクリスタルの強度に該当する赤紫色部分はより頑強な金属になったのでは無く、結晶体という要素を高めたもの……エネルギーか何かの構造体である事を前面に出した物理法則の影響を顕著には受け無い代物と化していた。
摂氏三万度に触れた周辺箇所の蒸発が起こらなくなった為、前述の二十テラJに減衰要素を引いたエネルギー量を変換したダメージが直径十センチメートルの範囲で一秒間掠めた程度で威力が反映される。
纏まった規模の亀裂を与える事は出来ている為、やっと攻撃箇所を集中させる事が有効となる段階まで来れたと判断した金髪の女性はマインゴーレムの右肩付近に雷撃を集中させる事を決意。
自身が乗るビリジアンの足場による空中移動でアレックスの位置を何度も誘導してはマインゴーレム右腕根元部分を横になぞるかの如く雷撃を浴びせ続け……順調に亀裂が広がった事で攻撃を一箇所に集中させ始めた。
そんな最中にマインゴーレムが生成した塊はアイアン相当の部分が一切無い赤紫クリスタルから成り、強度が最大である事を意味していた。
それを確認した金髪の女性は常に塊による射撃を警戒しながら行動し、時折攻撃しない左肩側への移動も織り交ぜ、マインゴーレムの生成物が放たれる場面が訪れる度に生成物は金髪の女性とは見当違いの方向へ。
時間も白い絵の具も費やしたが、マインゴーレムの右肩の下部分に雷撃し続けた結果、右腕部分は連結を保てなくなるほど破壊され、落下。この調子が保たれればマインゴーレムが一方的に雷撃を受け続けるだけの展開が維持される事に。
そんな攻撃ペースが継続し……暫くしてマインゴーレムの左腕部分も落下させる事に成功。右腕を落下させてから左腕が落ちるまで結構な時間が経過した上で未だに右腕が再生されていない事から、これで最終段階なのだろう。
ここは雷を温存すべきか。
そう考えた金髪の女性は落下したマインゴーレムの両腕を紫の絵の具で描くようアレックスに指示……やがてマインゴーレムの肩から下部分の左右の腕が出現。
これによりマインゴーレムと完全に同じ構造体と形状から成る二本の腕が金髪の女性が好きに動かせる存在として、この場に加わった。腕にヒビが入っていればそれも再現されていたが両方ともまだ無傷の段階で落とされた為、万全の状態。
被写体となった二本の腕部分は地面に横たわったまま……未だに撃破判定されずに残っている事を疑問に思いながら、金髪の女性は自らのものとなった方のアームの拳を両方とも握った状態にする。
高い所まで動かしては比較的同じ場所に当たるよう落下させる、重量を利用した殴打とも言える攻撃をマインゴレームに与えて行く。
同じ強度を持つ対象に落下速度を加えている為、マインゴーレムのボディは順調にヒビが入って行くが……それは衝突時の反作用を受けるアームも同じで、そう遠く無い内に全体に入った亀裂により使い物にならないほど砕けるだろう。
アレックスが描いた事で出現したものは、ある程度損傷が進むと金髪の女性でも動かせなくなるが、それを承知で金髪の女性は両のアームを乱暴に扱って行った。
二つのアームが大破する瞬間は早々に訪れたが、未だに地面に残る被写体アームからまた同じアームを描いて出現させ、攻撃を維持。
マインゴーレムの腕二本分を描くのに使う紫の絵の具の消費は大きく、気兼ね無く使えるものでは無いが……マインゴーレムの胴体周辺で広がって行くヒビが無駄遣いでは無い事を物語っていた。
空中を比較的素早く移動するビリジアンの足場による誘導もあり、金髪の女性に一切の窮地も無いまま……追加アームにより殴られるマインゴーレムに更なる亀裂が走って行く一方的な光景が途絶え無い。
暫くしてマインゴーレム上半身表面の至る所が大きめに欠け、ヒビだらけになっているのを見た金髪の女性は頃合いと判断。白い線を描く事による雷撃をアレックスに再開させる。
胸部一点集中の時間差雷撃を浴びせ続け、見る見る内に亀裂が拡大して行き……遂にはマインゴーレムの上半身部分が盛大に砕け散る事態まで至る事に成功。
両腕を切り落とされた後に上半身を吹き飛ばされる形となったマインゴーレムだが……その後は赤紫色の生成物を放つだけで無く、残った下半身による歩行を平然と行っていた。
まだ全体を減らす必要があるのか。
金髪の女性が未だに無傷である被写体アームをアレックスに三セット描かせると紫の絵の具が心許無い残量に。
左右のアームによる一セットを用いて転写元である左アームを先程の要領で殴らせ、自らは回避行動に専念。
やがて一セット目は大破し、二セット目のアームの損傷箇所が目立って来た頃にはマインゴーレムのオリジナルアーム両方が破壊され、残すは下半身のみ。そんな瞬間だった――
コーラルピンクがより一層鮮やかになれば上空から飛来して来たレーザーの色になるのだが……途中で湾曲してマインゴーレムの下半身に直撃した為、ビームという形容の方が適切だろう。
前述の色合いを除けば基底の能力で見られる光魔法を彷彿とさせるが、そういう意味での光の束が群れを成して次々と飛来してはマインゴーレムの下半身に降り注ぎ、その都度大きな爆発と音が辺りに響いて行く。
無数という言葉を用いたくなるような有限にして多数のコーラルピンクの光による爆撃は残っていたマインゴーレムの耐久値を削り切るには充分だった。
金髪の女性はアレックスが識る範囲での実際の雷を出現させて攻撃していたが、そもそもエネミーは受けたダメージによって耐久値が零になれば撃破出来る為、ダメージの蓄積で次の段階の部分が増加して行くマインゴーレムも理論的には一切の損傷を与える事無く撃破出来る事になる。
尤も目に見える程の変化を与えられない威力の攻撃を続けてもマインゴーレムの耐久値が満足に減る事は無いのだが……降り注ぐコーラルピンクの光の群れは残存していたマインゴーレムの耐久値に届くには充分なダメージを与えた。
横取りに成功した事で光の束を浴びせた能力者の女性にはマインゴーレムの有する横取りボーナスを乗算した上での撃破ポイントが入り、それを確認した女性はその金色の瞳を輝かせて喜ぶような仕草は見せなかったものの、これ程までの数値が一度に得られたという事実に圧倒されてはいた。
今日出撃したメンバーの中で一番ポイントを稼いだのは自分で間違いないだろうと思いながら、そのツーサイドアップの銀髪と頭の両側に付けた緑色のリボンを揺らし、少女は自らの傍にあった影へと足を踏み入れる。
その影の所々では青の暗清色が蠢くような挙動が目立ったが……ナベリウス所属の少女がそんな影の上を歩いて行き、影が途切れる場所から更に進むと――
視えない壁か何かの中へと入り込むかのように、その場から消え去った。
・雷のスペックについて
今回のリアル雷の数値を決定する上で以下の情報に基づきました。
雷は摂氏で約三万度。雷1回の電力は数千万から一億ボルトで雷1回で流れる電流は千アンペア~二十万アンペア。
そして、雷が稲妻として光っている時間は千分の一秒から一秒……これが焦点でした。
・掛け算だけで求まる電力とその熱量の計算式
W=V*IとJ=W*s……電圧Vと電流Iを掛けるだけで電力Wは求まります。
そのWに秒数を掛ければ熱量Jが求まるのですが……本文で以下の計算をしました。
一億ボルトと二十万アンペアなので(1*10^8)*(2*10^5)なので2*10~13……
10^3がK、10^6がM、10^9がG、10^12がT、10^15がP……
今回は20*10^12なので電力Wは20Tとなって雷の発生が一秒間なら一掛けるだけなのですが問題は。
雷の発生時間が千分の一秒だった場合、熱量は20GJに目減りします。
雷が直撃すると大木が真っ二つになるイメージを持たれてる方は人体も同じようになる光景を描かれそうですが、千分の一秒条件だとその間に雷が人体の何処を経由するかで何処まで致命的になるかバラツキが生じると言う事でもあります。
とりあえず金属製のものを身に着けていては雷が命中した際のリスクは高まるばかり。
運動エネルギーの公式は45話後書きにある通り『K=1/2*M*V^2』で、1トンの物体が20TJを得る為に必要な秒速をMはkg、Vは秒速で計算して秒速200kmを求める事が出来ます。
・アレックスの知性と知識の分布がデタラメ、について
小難しい以下の知識を通りすがり程度で引き合いに……読みは磁性体。
「物質が磁化した場合、強磁性体・常磁性体・反磁性体の三つに分類され、強磁性体の透磁率は真空の透磁率に比べて圧倒的に大きく、常磁性体の透磁率は真空の透磁率に比べて多少大きい。反磁性体の透磁率は真空の透磁率に比べてやや小さい。永久磁石は強磁性体に分類される」
この文は「透磁率」を識っているかどうかで理解出来るかが分かれますが、知識とはそういう事です。
透磁率は「磁化のしやすさを表す量」で、単位はμという情報よりも「磁化とは物質が磁気を帯びる事である」という方が件の文の理解に繋がります。
引き合いに出した文は磁力に関する知識が要求されますが、例えば通りすがりの白いラクダは複雑な物事で無ければ理解出来るとします……理解出来る内容だけ抜き出すと以下のようになります。
「物質が~~した場合、????・~~~~・~~~~の三つに分類され、~~~~の~~率は真空の~~率に比べて圧倒的に大きく、~~~~の~~率は真空の~~率に比べて多少大きい。~~~~の~~率は真空の~~率に比べてやや小さい。永久磁石は????に分類される」
少なくとも「強磁性体は永久磁石に分類される」は理解出来る事になります。
そして隣にいた黒いラクダこそが知性がデタラメ……例えばこんな感じ。
「物質が磁化した場合、強磁性体・常磁性体・反磁性体の~~に分類され、強磁性体の透磁率は~~の透磁率に~~~圧倒的に大きく、常磁性体の透磁率は~~の透磁率に~~~多少大きい。反磁性体の透磁率は~~の透磁率に~~~~~~~~。永久~~は強磁性体に分類される」
磁力に関する大部分は理解出来るけど磁石が解らず、大きいは解っても小さいが解らず、比べる事も理解出来ず。圧倒的に、多少は理解出来るのに、ややが理解出来ない。
「知識の理解度の分布がデタラメ」という説明をアレックスにおける実例を出さずに似たような具体例を挙げようと考えた末、こうなりました……白いラクダと黒いラクダは没にした後書き案に登場したので起用した次第です。




