第4話 クラウンの間
強制転移された場所はさっきまでいた森林マップに基いた構成の外観。
もう少し言えば、森林を抜けて開けた場所の中央に草木にやや覆われた石板がある感じ。
私が石板と言うかそうデザインされた端末に触れると、特殊なウインドウが浮かび上がった……そこには私の能力情報の詳細が記載されてて、能力名に使われてる色とかで、自分の能力のディスタンスが判る。
噂によると基底がウィンドウ内と同じフォントで、一般がその上でなんかメタリックで、突出が赤味掛かった金色で、高位がアメトリンを思わせるような金と紫の色合い。そして――
「アダマス……だったね」
他のガーデンにいて尚、その名を轟かせるディスタンス最上位――『驚異』の能力を持つ参加者の名を私は口にしていた。アメイザーのフォントはこのウインドウ上では虹色に輝くらしい。
私のいるガーデンは数あるガーデンの一つに過ぎなくて、ゾーンの中では各ガーデンの出身者と合同でより難しいゲームを行うのだとか。
さて、私のプロパティーは最初に来た時に熟読して、今もざっと眺めた……元の能力名に戻したり更に違う名前にリネームするのもここで出来るけど、本命があるんだよね。
さっきから頭上で金色の光が集まってる……手を伸ばせば光が集合し、ある形状となったオブジェクトが現れる仕様。
今回に至っても使わないから、さっさと受け取るかな……程なく金色の光が集合し、豪華な装飾の施された金色の王冠の形状になった。
この『クラウン』がゲームの目玉、ゲームの参加者たちが命の危険を顧みずに身を投じる理由。
私の場合は通算四個目になるけど、一個あるだけで凄い事が出来る代物。
具体的には「クラウンを受け取るまでに構築した願いを叶える」だね。
どんな願いも叶えられるかって言うとこれが厄介で、クラウンを複数消費する事も可能だけど、もしも願った内容がクラウンによる総量で叶えられない内容だった場合、願った者は死亡する。
しかも願いはクラウンを新しく受け取った瞬間にだけ込める事が出来て、キャンセルは出来ない……内容自体の事前入力みたいな事は出来るけど。
自分の願いがクラウン何個必要なのか……どうにかして事前に調査しておく必要があって、ある程度の報告なら上がってる。
地味で手堅いのは毎月自分の口座に一年以上お金が振り込まれると言うのがあるけど……死んだ者を生き返らせるとなるとその能力者のディスタンスに応じて必要となるクラウンの数が変わるらしい。
地球上で死んだ能力の無い普通の人ならクラウン一個分さえ必要無い事は判明してるけど……願いを叶えて使わなかった分を保持するにはクラウンが余分に必要。
だから私は今まで手に入れたクラウンを溜め込んでるけど……どうもクラウン五つ揃えれば次のクラウンに昇格するらしい。
三度目のクラウンを手にしたあの時が最後だと思ってたけど……いざあと一個になってみれば、やる気が出て来ちゃう。
必要なだけクラウンを集めればガーデンから脱出して地球というか元いた場所に戻る事も出来るのかもしれないけど……私の関心は外側よりも内側。
フィールド内に発生するゾーン内で、更にフィールドみたいなのが発生する事があるって話なんだよね……。
それを確かめる為にはもっとゾーンに通えるようになる必要があって……そういう人たちは「ダイバー」と呼ばれてたりする。
とりあえず、次のクラウンは少しは積極的に狙ってみるかな。それまでにクラウン五個分で何を願うのか……よく、考えておこう。
この瞬間、私ことネル子もとい音流小唯花は、結構大きな決断をしたような気分になっていた。