第21話 隔離迷宮はパステルカラー
参加者全員で殺し合いでもするのかと思ったら……とんだ拍子抜け。
レイヴンのリーダー『ローズハート』はそのような事を思っていた。
参加者全員強制参加の今日のゲームは様々なパステルカラーの壁で彩られた迷宮で、何処かに配置された宝箱を開ければ主にリアルマネーが手に入る。
頭上は乳白色の空が広がり、床は全て鏡のような質感だが何も映らない。
このフィールドは参加者の数だけ同じ迷宮が出現し、この迷宮内では能力が使えない代わりにエネミーも存在しない……事前情報でそう通知された。
参加者を全員参加させておきながら、全員隔離する。
今回のゲームが終了すると共に今までのランキングがリセットされる為、今回の迷宮を制限時間一杯探索してもリアルマネーが手に入るだけで終わる。
ローズハートにとっても今日のアナウンスは衝撃的だった。
――このガーデン内の参加者の規模が低下し過ぎた為、参加者の規模が低下した他のガーデンとの統合をこのガーデン内に吸収する形で行う。
参加者の補充を他のガーデンからの参加者の流入によって果たす……今後十日間はガーデン内でのバトル及び全ての敵性行為が禁じられる。
その十日間に開催されるゲームは今までとは違った趣向の難易度が施され、ゾーンの発生率はフィールド内での状況次第で増減するという話まで。
正直驚いた。
立ち止まるよりはと、拍子抜けの迷宮を探索しながらローズハートは今回のアナウンスを思い出しながら、心の中でそのように浮かべる。
メンバーと協力して、常に上位を目指すのはゾーンの参加率を上げる為だったがゾーンの発生条件はローズハートも掴んでおらず、今までのは完全にランダムだったのではという疑念を掻き立てる程の情報となった。
今後はゾーンの発生条件が確立し、今までと違って意図的に狙えるようになるかもれない。
それは紛れも無く、期待であった。
尚、制限時間が0になるまで迷宮を探索するだけの今回のゲームをクリアすると『リネームチケット』が手に入る。
最初はある程度ゲームに参加していれば貰えたチケットだが、それ以降はクラウン獲得の場にある端末でしか出来ないも同然となる自分しか使えない貴重品。
ローズハートを含め、レイヴンのメンバーにとっては必要無いが、目立ち過ぎた自分のエントリーネームを変更したい者にとっては魅力的だろう。
グループ登録に関する状態はこちらも向こうも引き継がれるので、向こうの強豪グループがこちらに越して来る事に変わりは無い。
暫くはランキングもポイントだけが表示され、参加者当人のみが自分の順位を知る事が出来る。
これにより、統合先のガーデン出身のランカーがこのガーデンのランカーを早々と知り、一方的な衝突が起きると言う事態は防がれるだろう。
そしてこの日、事前に知らされた迷宮ゲームの内容に偽りは無く、このガーデンと統合先のガーデンの参加者全員にリネームチケットが行き渡った。




