第19話 光と闇の根源
ルビーが殺された翌日。
私は悲しみに暮れもせずに今後クラウンを狙う為の対策を講じるべく相談みたいな事もした……あとはもう、その通りに出来るかどうか。
ルビーはガーデン内で一番親しかった……私を「ネル子」って呼んでくれる知人は多少いても、殺しの手伝いをしたりオフと言えるかは微妙なガーデン内で会ったりするくらい親交を深めたのは……ルビーだけ。
だからもっとショックを受けると思ってた……食事は全然喉を通るし、最近手に入った新鮮なアサリを使ったボンゴレビアンコは暫くメインになりそう……IGC社製パスタ特化の自動調理機械は何だかんだで重宝するし。
最近ずっと転送装置のモニターで酷いパスタ食べてた反動もあるかも。
能力による遠隔込みなら私も普通にたくさんの人を殺して来たって自覚があるから、今更殺された側になってもなぁって感情に紛れて、一番ってくらい親しかった人の死を悲しめなくなってる……のかなぁ。
さて、今日は余程美味しいフィールドじゃないとスルーで……もうすぐやってるFPSのメンテが明ける。二次元アバターに基く動画配信界回のバーチャルタレント『虹姫宝乃華』とのコラボイベントもこれで二回目。
一回目は初期衣装を少しゲームの世界観に寄せただけのデザインで、ゲームボイスは不慣れだけど虹姫宝乃華らしさはあった。
それが今回、虹姫宝乃華のアバターデザインを担当するイラストレーター『とむ岡マイケ郎』先生書き下ろしデザインで未だにシルエット情報のみ。ボイスは演技力が急激に伸びた最新の虹姫宝乃華で全て撮り直し。
サーバーに侵入してフラゲ記事を書こうとする輩は粗いポリゴンな虹姫宝乃華のダミーデータを掴まされてるらしい。
「ガチャで引いてもいいし、クエストこなしてポイントで交換してもいい……ここはいつも通りだね」
「初心者でも長時間遊べば届くけど、結構高度なクエストもあるね」
フレンドとそんなチャットをしてクエスト消化すること一時間半……あと三十分は掛かると思ってたら私が最難関のクエストを達成して、目標ポイントに届く。
二人でトレーニングモードの部屋に行って、ボイスやモーション確認開始。
「……流石は、とむ岡マイケ郎大先生だね」
「露出回りが凄いけどデザインとしても純粋に凄い」
今でも胸の大きいバーチャルタレントの代表格の虹姫宝乃華が圧倒的なデザインと着やせ現象を引き出す衣装で、その印象が霞む事で話題になった初期衣装が嘘のように、これでもかという腰のくびれやらヘソやら魅惑の部位を露出。
そして上乳も下乳も堪能出来て左右別々に揺れる事が可能なデザインなのが本当に……私もフレンドも女の子だけど、こんな会話になった。
「胸の動き、えっろ」
「随所に蛇腹部分のあるアーマーだから体全体の動きに重みがある」
そうは言った私だけど主な感想はフレンドと大差無い……そして胸の動きの確認だけでかれこれ三十分は経過……ボイス回収も何とかこなす。
「というか胸の動き何パターンあるの、これ」
「このプレイアブルキャラだけの為にスタッフどんだけ頑張ったのさ」
そしてフレンドも目標ポイントを達成したのでコラボイベントの度に開放される通称「コラボキャラ無双部屋」へ……文字通りその時のコラボキャラの性能が大幅に強化されてて、バランス調整がこの部屋前提になりがち。
「ぼちぼち情報集めるか……いやー、どこを見ても揺れる気合の入った可愛いボイスで溢れてる……祭りだねー」
そうフレンドが言った通りSNSやまとめサイトの情報収集を解禁。
胸のモーションの豊富さは筆頭の話題で、三十二パターンでは到底収まらないくらい毎回違うものになる乱数と物理演算のプログラミングをしたのは毎度おなじみ『黄泉月影瑠兎』……こないだ寝ぼけ声配信の切り抜きがあったと思ったら。
とむ岡マイケ郎先生のSNSでは今回の衣装で同人誌のカラー表紙クラスのその道の絵を年齢制限アップしてて、虹姫宝乃華ファンで有名な他企業や個人勢のバーチャルタレントがSNSで荒ぶってる。
当の虹姫宝乃華はあのデザインに至るまで、とむ岡マイケ郎先生とどんなやり取りをしたかの裏話を配信中。
本当に……女の子三人で何やってんのさ虹姫宝乃華、黄泉月影瑠兎、そしてとむ岡マイケ郎大先生!
とむ岡マイケ郎先生が女性だと言う事は虹姫宝乃華一周年記念での声出し出演で明るみになって、それ以来、マイケ郎をもじって「まいかママ」って呼ばれるようになったんだよね。
「もう性能検証とかどうでもいいから、この奇跡のボディを飽きるまで満喫する事にしない?」
フレンドの提案に賛同した私は、ゲームを少しプレイしてはトレーニング部屋でお互いのモーションをドアップで見ると言う時間を長い事過ごした。
翌日の昼、今回のコラボイベントに関して運営からおしらせがあって……内容は昨日実装されたコラボキャラつまり虹姫宝乃華の衣装の差し替えメンテ告知。
IGCテクノロジーはこんな感じの虹姫宝乃華たちを「タレントとリスナーとイラストレーターの間で問題視されていない行為は極力容認する」という姿勢。
実際、今回のような扱いをNGとする同じIGC所属のヴァーチャルタレントは結構いて、その子たちにはこんな事が起きないようにしてる。
後輩の翡翠柱樹々が、まいかママによる虹姫宝乃華の同人誌を完成度の高い虹姫宝乃華の声マネで朗読した配信があった話はこの際置いておこう……虹姫宝乃華はその当時SNSでその配信の感想を実況投稿してたという逸話まであるけど。
このFPSはIGCテクノロジーとは別会社が運営するゲームだから流石にそのノリは通らなかったか……ちなみに差し替え衣装はこの事態を想定してたのか程よい露出度でまた違った持ち味のデザインが盛り込まれ、いい意味でヤバかった。
Vの者のネーミングって、能力ものなどのキャラ並びに特徴や属性を盛り込んだネーミングで数も多いので、創作キャラの名前考えても既にダダ被りするというリスクがあるという認識でしたが、今回までに出した二次元アバター式バーチャルタレントのネーミングは被ってないみたいです。
ちなみに名前を平仮名にした際、被るのは諦めてます。




