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あかないキミの、異能世界  作者: 竜世界
ProgressⅢ-THIRTEEN-
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第15話 暗闇の奥で(前編)

 緑色の培養層の中には割れるものがあって、中から出て来たエネミーは襲って来る。強さ込みで結構種類があるけど、注意したいのは暗視性能を持ってるエネミーで私のいる周辺は隣に誰かいても気付けるか怪しい暗さ。


 培養層の緑色の輝きが割と光源になってるけど長居はしたく無い……事前情報によればこの施設の照明は急に点いたり暫くの間だけ点滅するようになったりと本当に不安定。


 暗いと思って彷徨(さまよ)ってるといきなり灯りが一斉に点いて、出現してたエネミーが団体さんでこんにちわ……何て事も大いに有り得る。


 とりあえずこの部屋から離れようかな……マップの所々には明るい小部屋が隠されてて、この部屋の壁の何処かにもあるかもしれないけど……探す余裕無い。


 小部屋には薬品の入った瓶や書類が入ってて、そういうのが今回集める得点アイテム。各扉に対応したカードキーもあるから手に入れたい事情はある。


 やや離れた場所にある培養層の傍に扉っぽいのが見えたので亀裂が入る音の有無を確認しながら、そこを目指す……よし、到着。


 近付けば開くタイプだけど、この時にランプが灯った場合はその色と同じカードキーを扉横部分に通す必要がある……今回は難なく開いた。


 この通路は明るい状態を保ってるっぽい。まぁ無いとは思うけど壁を探ってみるか……そう思ってたら色は同じだけど、よくよく見れば違う材質の部分が。


 いい加減な例えでいいなら、大理石の壁の一部が白いコンクリートみたいな……そんな感じ。四角く浮き出た部分を押すと縦回転して、手をかざす感じのパネルがあったけど……既に右手を当てた位置関係だからパネルは静かに反応。


 左右に開いた扉の先には小部屋があって、正面の壁中央には小物一つくらいは入りそうな立方体の穴……その中に無色透明のカードを確認。緑色のラインがそこそこ施されてて、その緑部分は透明度無し。


 これが緑のカードキー……幸先いいなぁ。


 複数のカードキー欲しさに参加者を殺して回る輩は普通に出そう……余りにもトラップ見つからなかったら生き延びる事を優先しようかな。


「どうもカードキーの色に優劣は無いみたいだなー」

「カードキーどれか一色あれば扉一つは開けられると考えてもいいかも」


 それから暫く経ち、私は顔も知らない参加者二人の会話を物陰から聞いていた。


 二人が去ってから()()があった場所に移動して……トラップ解除。


 順調だけど、例えば双六ゲームで最初は高い目が出まくって、その反動かとばかりに低い目が続いたり悪いイベントマスに何度も止まったり……そんな事態にならないか不安だったりもする。


「あ、あの……交換すると言う話だったのでは……?」

「うっは、ウケる。こんなん先に渡されたら持ち逃げするに決まってるっしょ」


 緑の培養層の群れで部屋の景色が構成されるような場所まで来ると、そんな男女の会話が……そもそも相手がそのカードキーを持ってるかすら怪しいのに。


「いやー、見た目通りの女で助かっ……お?」


 男性がそう続ける中、緑の培養層が多少の灯りになってた部屋が急に明るくなり部屋の中が隅々まで確認出来るように……とりあえず女の子は眼鏡掛けてるね。


「こんな所に扉がありやがったか……てめぇの水色のカードキーが早速役立つといいなぁ!」


 男性は「お、普通に開くじゃーん」という言葉を残し、扉の向こうに……ところで私がこの部屋に来たのって、この辺りからトラップ反応が――


 次の瞬間、凄い爆発音と共に炎と思われる束が最初に男性が入った扉から吐き出され、そのまま反対側の壁を直撃……開いた穴の周囲が赤熱してるから、やっぱり炎だったのかな。


 男性が持ってたアイテムが全部私のものになって……その中には青のカードキーもあった。


「な、なに……?」


 眼鏡の女の子が呆然としてるけど、そんな暇は無いよ……ほら、培養層にヒビが入る音が段々大きく……。


「走るよ!」


 この子なら思わず一緒に走ってくれるでしょ……さて、湿った重たい何かが着地する音が聞こえたから、折角開いた穴に向かってダッシュと行こう。


 最初は眼鏡の子と一緒に走ってたけど……手持ちの緑、水色、青のカードキーを駆使して扉を開け続けたから、再び施設全体の照明が殆ど落ちてる状態に戻った頃には、はぐれちゃってたなぁ。


 いい加減、エネミーを自力で倒せない問題、どうにかしたい……にしても、ここ通路なのにやけに暗い。向こう側にある灯りのおかげでエネミー込みで人影が無いのは確認出来てる。


 通路の出口まで辿り着くと部屋全体の照明が生きてる広い場所に出た。


 部屋には扉が幾つもあるけど……大型トレーラーでも車高込みで余裕で通れるくらいの通路が扉も無しに口を開けてる。


 絶対この先に何かある……というかボスとかいそう。


 そう思いながら高得点アイテム期待で通路を進んでると……奥の方から歩いて来た人型エネミーに遭遇。


 人間の人体比率から外れた長さで伸びた二本の腕とアンバランスに大きな手……何メートルにも及ぶ長い尻尾が特徴だけど漂白されたように不自然な赤味が残った白い皮膚の所々は破れてて、歯茎のような質感を放つ赤い肉部分を見せてる。


 今回出現するエネミーの下位範囲の中で一番強い、暗視持ち……目が何処にも無いのはご愛嬌かな。


 本来ならさっき見た扉のどれかに駆け込むけど、腕の片方が根元ごと無くて、ある筈の尻尾が正面からは確認出来ないくらい短くなってる。


 もしも手元に銃でもあれば簡単にトドメを刺せそうな状態。


 ニーナ以外にも連絡の取れるIGC社員はいるんだから本格的な火器を購入する事は出来るんだよね……IGCテクノロジーは初期の頃から見ても軍事産業のマーケットシェア上位常連だし。


 社名に使われてるイグナイトは火薬を使う火器を表すには打って付けの言葉。


 ゲーム参加時の手荷物を自分の部屋に送って、部屋の中にある武器を一つくらいなら送ってもらう形で持ち込む事は出来る。


 でも銃とか爆弾とか……そういうのをゲームに持ち込めたとしても弾切れになると役に立たないし毎回購入する羽目になる。


 だから私は弱ってる漂泊エネミーに向かって走り込み……すれ違いざまに持って来た武器を振り上げて、そこから背後を滅多刺し。


 結構すぐに撃破状態になって横取りボーナス入ったから……この奥で戦闘が起きてるね。


 持ち運び易くて不意討ちにも使えて緊急時には投げる事だって出来る……IGCテクノロジーが誇る合金によるナイフが今回私が持って来た武器。


 フィールド内に出現する下位エネミーはアイアンのソリッドでダメージを与えられる設計なのは有名。鋼鉄よりやや劣る刃物で渡り合える相手なら鋼鉄よりずっと硬いこのナイフは存分に突き立てられる。


 さっきの眼鏡っ娘みたいな子と会った際にナイフを隠し持ってる状態で話すの何か嫌だったから武器の持ち込みはこれが初めても同然なんだよね。


 あと皆が武器を生成する能力を振るう中で、普通の刃物を振り回すのって敗北感ヤバイ気がしてさ……。


 この大きな通路の先も全然明るい……出来るだけ身を潜めるように向かいはするけど……黒猫パーカーつまり黒い全身服って明るい場所ではかなり目立つ。


 これまた広い場所だなって思った瞬間だった。


 私のすぐ横の壁際まで吹き飛ばされて来た女性がいて、淡い水色で長く伸びたポニーテールの所々には青い部分があり、前髪の中には一房全部がその色。


 壁に打ち付けられた際にまだ瞳は閉じてるけど凄く鮮やかなウルトラマリンだって私は知ってる……欠損どころか目立った怪我も無いって情報を読み取った辺りで私は冷静さを失って叫んだ。


「ルビー!」


 そんな中、私の耳元に可愛い声が流れ込んで来た。多分、ルビーを吹き飛ばした相手。


「やっと……か」


 ルビーは一目で水色が多いって判るけど、この女の子は白と緑のどちらが多いか判断に苦しむ分量で、結論を出すなら……きれいな長い髪だね、って事態に。


 髪も所々がハネててそれが更に可愛い……目の色を確認しようにも金属的な光沢を放つ鬼モチーフっぽい紫色兜が邪魔でよく見えない。


 そんな可愛い女の子の目の前に光り輝くカードみたいなのが降りて来て……次の瞬間、そのカードは透明度が急速に上がったかのように消え失せた。

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