似た者
江藤のおすすめのお店は、
路地裏の隠れ家的なおしゃれな居酒屋だった。
まだ出来て3ヵ月の綺麗で私好みなお店だった。
私たちは明日がお休みということで、
時間を気にすること無く飲んでいた。
「俺さ前から川崎さんとご飯行きたいと思ってたんだよ。
だって川崎さんって誰にも心を開かないような、
ミステリアスなとこがあるから!」
「えっ?そうですか?」
「俺はそんな川崎さんが気になってたんだ。」
江藤はビール2杯で酔っていた。
色々な話しをするうちに、
私たちは趣味が似ていることに気が付いた。
写真が好きなところから、
海外ドラマやK‐POPが好きなところ、
考え方、捉え方まですべて似ていた。
2年も同じ会社にいたのに、
私たちはお互いのことを何も知らなかった。
江藤は最近奥さんと上手く行っていないと、
愚痴を言っていた。
私も今はすべてが上手く行っていないと、
江藤に愚痴をこぼした。
私たちは仕事も私生活も満たされていない、
虚しい思いをしていたのだ。
私たちの話しは盛り上がり、
気が付くと11時を過ぎ終電の時間が迫っていた。
「私帰らないと。」
私がそう言うと、江藤は私の手を握り、
「今夜は川崎さんと一緒にいたい。」と言って、
私の手を離そうとしなかった。
その時の私の心は枯渇していて、
誰でもいいから人の温もりを感じたいと思っていた。
それほど私の心は弱っていたのだ。
そして私と江藤はホテルに向かった。
つづく