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リレー小説・★(かわかみ・間咲・しいたけ・砂臥)  作者: かわかみれい・間咲 正樹・しいたけ・砂臥 環
4/4

『結』(砂臥担当)

※新たな使用ワード

『まわる』『星』『柿の種』


※スペシャルワード

『手の描写』『色(赤)』

 必要以上に溜まった熱を逃そうと、バスローブのままでいた私の身体はすっかり冷えてしまっていた。


 勝手な事を言うだけ言って消えてしまった、謎の偉そうなオジサマ(※アレを信長とは認めたくない)は、もういない。


「……変な夢を見たものね」


 そう呟くも、私の下には自らが撒いた大量の塩。

 そして洗った顔は涙でグチャグチャになっている。


 私は自称信長(※あくまで認めない姿勢)の言葉を心の中で反芻した。


(——『答えは貴様の中にしかない』、か……)


 なんだか喉が渇いている……様な気がする。

 なんであの幽霊はあんなにも自信に満ち溢れていたのだろう。幽霊の癖に生き生きとしやがって。

 ……私の方がよっぽど死んでいるみたいだ。




 ————朱夏が好きだった。


 自信家で、名前の通り朱く燃え上がる夏の陽の様な、あの子はもう……いない。


 細くしなやかな体躯に小麦色に、日にやけた肌。

「触れられるのが嫌い」と、伸ばしっぱなしにしていた赤味を帯びた髪を結くのは、私だけの特権だった。



「ただいまー……うわっ、なに?この塩……」

「あなた……」


 スーツを着た彼が、私を見て驚いた顔を向ける。

 長い脚で私に近寄り、骨ばった大きな手で私の頬に触れた。


 これが現実。


(私はこの人の事をどう思っているの?)


「どうしたの……泣いた?」


 彼は、優しい。まるで、違う。あの頃の朱夏とは、まるで。

 培ってきた二人の日々がぐるぐると回る。

 この人の事をどう思っているか?……そんなの決まっている。


「——なんでもないの」


 意味のわからない体液を頬に這わせたまま、私は笑って首を振った。


「なんでもないのよ……()()


 久し振りに口にする彼の名前。



 彼はまだ少し戸惑っていたけれど、それ以上なにも聞かなかった。



 夕飯の準備もまだしていなかった私に「星が綺麗だから」とロマンティックな言葉をさらりと言った彼は、冷蔵庫から缶ビールを取り出した。

 バルコニーに出て二人で晩酌をする。柿の種ぐらいしかツマミはないけれど。


 郊外の一軒家。

 何不自由のない生活。


 それらを手に入れる為、彼は大人になってしまった。


「——で、どうして泣いてたの?」


 何気ない口調で彼は尋ねる。

 あの頃の朱夏だったらきっと、もっと、違う。

 そんなことを思いながらビールを一口呑んだ。

 苦味を口に残しながら、ふふ、と笑う。


「とても滑稽な夢を見たの。ただ、それだけ」


 この朱夏は知らなくていい。

 私の膝に残る棘の事も、なにも。


 何不自由のない生活。優しい旦那様(今の朱夏)

 決まっているでしょう?私はこの人を愛している。



「……人生五十年、夢幻の如くなり」

「敦盛?」


 今の世は人生百年、二倍は苦くて当然だ、とあの人は言っていた。


 でも————




『貴様は貴様であれば良い』




 欲してもいいのだろうか。二倍の甘みをも。




「なに、急に」と笑う朱夏に口付けをした。


「ねぇ朱夏……私ね?」



 ————子供が欲しいの。貴方ソックリな。




 ☆★☆★☆★☆



【信長様の魔王ゲージが10上がりました】



「殿、お帰りなさいませ!」

「おう光秀、なんだ?ご機嫌だな」

「ええ、殿は流石第六天魔王にございますね! 殿がちょっと構った女子、闇落ち致しましたよ。 ……殿の現世復活に、また一歩近づきましたね!」

「ふーん」

「あれ? 興味なさそうですね」


 そう、信長は別に現世復活の為に動いた訳ではない。

 ちょっと若い子に己の美学を説いてやっただけである。


「そーんーなーこーとーよーりー……光秀ッ! 覚悟!!」


「うわあぁぁぁぁぁぁッ?! ちょっ、やめっ」

「こちょこちょこちょ〜」



 現世の若い子をからかうよりも、光秀をからかう方が面白いなーと思う信長は、今日もまたあの世で光秀にメチャクチャ怒られるのであった。



 ————信長現世復活の時は、遠い。


砂臥

スペシャルワードをクリアしました。


★グループ

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