5/15(水) <遺跡>
今日は学校で佐々木さんと何度か目があった。
僕が佐々木さんのことが気になってチラチラ見てたからだ。
あの小説の主人公が僕だってことがバレているか確認したかったからだ。
目があうたびに、すぐに顔をそむけられた。
これは……バレてるの? バレてないの?
心臓がきゅぅうっと締め付けられるような感じがして、今日は真面目に授業を受けられなかった。
今日は村は静かだ。
ニャオを含め、村人は全員戦争に行ったからだ。
戦争の様子はどうか千里眼で確かめる。
第一の壁は難なく越え、第二の壁も突破できたようだ。
だが第三の壁は厚い。
壁の上からドラゴンが飛んできて炎を吐く。
それに対し水魔法で炎を消し、風魔法でドラゴンの体勢を崩す。
魔法の威力は抜群だが、帝国側の方が圧倒的に人数が多い。
だから帝国側は持久戦に持ち込もうと必死の様子だ。
でも心配する必要はなさそうだ。
ニャオや他の民達が戦いに集中できている様子を見ると、頼もしく思えた。
僕は戦いを覗き見るのをやめ、静かな村を散策することにした。
いつになく、村は静かだ。
いくつも建ち並ぶ家の間を歩く。
僕がこれを建ててからもう2週間くらいか。
家を建てた所を過ぎると、竪穴式住居が以前あったところに着いた。
今はいくつかの石の遺跡と、以前拠点にしていた教会が残るのみだ。
僕は久しぶりに、教会の地下へ降りていった。
中は真っ暗だったので、光の球を飛ばして明るくした。
相変わらず少しカビ臭い。
石の椅子が無くなった以外は、以前と同じ様子だ。
石の壁に囲まれた、祭壇のある部屋。
いろいろ見回していると、壁に何やら文字が書いてあるのを見つけた。
「召喚の椅子? 彼を異世界から呼ぶ?」
あの石の椅子の説明書だろうか。
少し好奇心が湧いた。
僕は壁に触れ、この遺跡の過去を千里眼で見通した。
僕が召喚されたのが3週間前。
1ヶ月前にはタラスがこの壁を分析していたようだ。
そして石の椅子の上には、なぜかヒトの白骨死体があった。
なんだろう、この骨は?
さらに前へと遡る。
50年、100年、200年――
400年遡ると、白骨死体に徐々に肉が付き始めた。
この白骨はオッサンの骨のようだ。
オッサンは石の椅子に縛られたうえ、呪術的な護符が貼られ拘束されていた。
たくさんの人がツバを吐いて去る様子も見えた。
よほど嫌われたオッサンなんだな。
さらに数ヶ月前を辿ってみると、とても文章にしたくない光景が広がった。
たくさんの裸の女の人に囲まれたオッサンが、あんな事やこんな事をし続けていた。
俗に言うハーレムというやつだ。
しかも女の人達はオッサンに洗脳されているみたい。
そりゃこんな事をしていたら、洗脳が解けたとき報復されて当然だ。
ざまぁ、ってやつだ。
さらに過去を読み取る。
数十年もこんなことをし続けていたようだ。
過去を覗くほどオッサンが若返っていく。
このオッサンも石の椅子で異世界から来ているようだ。
そして、なんだか見覚えのある顔だ……。
もっと過去を見てみる。
この人が初めてこの世界に来たときの顔を見て驚愕した。
その顔は、僕の顔だった。
20代くらいの僕がこの世界で女の子を作ってハーレムにしていたのだ!
嘘だろ……と思いながら、さらに数日前を覗き見る。
そこには教会と地下室と石の椅子を作ってる様子が見えた。
それも僕だった。
未来の僕が、退廃的なハーレムに浸る為に、石の椅子を作ったんだ――
自分で見たものが、僕には信じられなかった。
あのクズみたいなのが僕の未来……?
あんな死に方、あってたまるか。
あれは僕じゃなくて僕のそっくりさんとかじゃないのか?
それに、この話は佐々木さんが読んでるかもしれないんだぞ。
明日から変な目で見られたらどうしてくれるんだ。
僕はまだあんな事してないし、これからするつもりも無い!
あの未来をどうにかして避けなければ……。




