4/25(木) <破壊の力>
今日も学校に行って勉強して帰るだけの、特に何もない普通の日だった。
昨日見たやけにリアルな夢について頭の中で考えたりもしたが、いたって普通の日だった。
夜22時、いつもどおり風呂に入ってパジャマに着替え、寝るためにベッドに入ろうとしていた。
すると――
今日もまたベッドに座ったとたん、まわりが暗くなった。
松明の明かりがあるだけのカビ臭い石造りの部屋にいた。
ひんやり冷たい石の椅子。
僕に土下座する十数人の人たちと、祈りをあげる司祭。
昨日見たやけにリアルな夢を思い出す。
今日は裸ではなく、やたら派手な服を着ていた。
「おぉ、また降りていただけた」
司祭の男がかすれた声で言った。
喉が枯れているようだ。
昨日から一日中祈祷していたのだろうか。
「まずは外へ、祈願の内容は別の者がお伝えします。お立ち願えますか?」
司祭に言われるがまま石の椅子から立ち上がると、土下座していた人たちが左右に分かれ道ができた。
僕は司祭について行き、石造りの部屋から出ていく。
階段をのぼり外に出ると、太陽がさんさんと照っていて眩しかった。
どうやらこちらは真昼のようだ。
あたりを見回す。
石器時代のような雰囲気の小さな村、といった感じ。
今までいた部屋はボロい教会の地下室だった。
石器時代らしくない石造りの教会だ。
「ここからは村の軍部の長に交代させていただきます」
「軍のリーダーをしているソルアだ。言葉が荒いのは勘弁してくれ」
司祭と交代するように、ガッシリした体格の男が現れた。
「まずあの櫓にのぼるぜ、話はそれからだ」
指をさした方には高くて大きな櫓があった。
櫓の横に付いているハシゴをのぼると、上に着く頃には息が切れた。
櫓の上には数人の見張りが居た。
「あっちを見てくれ。あの山をダモル帝国の軍が進軍しているのが見えるかい?」
指をさした方を見ると、遠くの山の木々の間を沢山の人が歩いているのが見えた。
鎧を着た馬や、ドラゴンのようなものも見える。
まだ遠いが半日もあればこの村に着きそうだ。
……あれ、僕ってこんなに視力が良かったっけ?
「オレ達は帝国から逃げてきた農夫の集まりなんだ。だから帝国はオレ達を連れ戻そうとしている。労働力だからな」
「農夫じゃ軍人に勝てないんじゃ?」
「ああ、あいつらを倒すには武器も人手も鍛錬も足りない。だが、神の御力添えがあれば! 天候を操る、有利な地形を作る、兵に豪腕を与えても構わない、どうか頼む!」
「えーっ、そんなこと言われたって……」
あんな大量の軍勢に対し、たかが一人の高校生に何が出来るというんだ。
……だがモノは試しだ。
昨日の光のように、なにか出来るかもしれない。
僕は手を前に伸ばして軍勢に向ける。
そして、地面を叩くようなイメージで空中を叩いた。
「エイッ」
すると、大地が手の形にえぐれた。
砂嵐のように地面の土が舞い上がる。
敵の軍がいた山もゴッソリと削れ、山の形が変わった。
まるで浜辺に作った小さな砂山を、上から手で叩き潰したような地形なった。
その衝撃で地震のように櫓がグラグラと揺れた。
「これが、神の御業……。皆よ、神が悪賊を葬ったぞ!」
ソルアが下に向かって叫んだ。
民衆の沸き立つ声が櫓の下から聞こえてくる。
僕が、やったのか?
こんなに喜ばれたのは初めて――
次の瞬間、またいつもの自分の部屋に戻っていた。
また夢だったのだろうか。
いくら神様だからって、あんなバカバカしい能力なんて有ってたまるか。
そう思いながらも、その力を使った実感でホクホクした気分になっていた。
僕は不思議な夢を思い出しながら、ベッドに横になり眠りについた。




